調査や行動観察・分析などを行い、利用者のことを先回りして理解し、製品やサービスとユーザーの接点に良い体験をしてもらう。
その貴重な時間を有効的に体験してもらうのは何も大人だけでなく、子どもに向けた製品・サービスにもいえます。
日々、テクノロジーとともに年々進化しているデジタルネイティブな将来の宝たちのためにも。
こんな人たちにオススメの本
- とにかくUXデザインに興味がある人
- 教育関係者
- 0〜12歳までのお子さんを持つ親
- 玩具メーカーのプロダクトデザイナー
- 子ども向けテレビ制作チームの人
「UX」「エクスペリエンスデザイン」というワードに敏感に反応してしまう人は、この本のタイトルを見ただけでも興味が湧くと思います。
本来、子ども向けのアプリやWebサイト制作に携わる人たちに特化した本ではありますが、子どものためのUXの知見は、玩具や子ども向けテレビ番組制作などにも大いに役立つのではないかと思いました。
また、僕の場合ですが、Web制作者という立場とともに、いつの間にか親の気持ちになって本書を読み進めており、我が子への考え方、教育・子育てについても感慨深い気持ちになりました。
子どもというユーザー層の正体
実際に子ども達にWebサイトやアプリを開発するとしたら、自分だったらどうデザインするのか?
子どもをターゲットにしたデザインをするには、大人向けと比べたら「恐らくこう違うだろう」といった漠然とした注意点が予測できると思います。
例えば、
- とにかくカラフルにすればいい。
- 単純な構造にすればいい。
- マウスオーバーなどフォードバックを大げさにすればいい。
以上のように、相手が子どもだからといって見下した姿勢で大人版よりも手を抜く感覚で臨むと、痛い目に逢うことが読み進めていくうちに分かってきました。
第3章では心理学者のジャン・ピアジェの認知発達理論という学術をもとに、子どもの発達の段階構造が記されています。
子どもは大人よりも知的能力が”低い”のではなく、年齢ごとに”もの事の捉え方が違う”そういう段階なのだそうです。
これを理解・認識せず、大人版よりも”楽”に考えてデザインをするとうまくいかないどころか、堂々巡りの泥沼化に陥る可能性が高いと思いました。
子ども向けに限らないUXデザインの考え
数あるUX本の中でも子ども向けに特化した本なのですが、大人と共通のデザイン思想も紹介されています。
ゴール(目的)に不釣り合いだったり的外れなデザインではなく、デザインパターンに一貫性を保つ。
支払い処理後に、類似商品を表示させるのではなく確認画面に遷移させるといった、操作をしていくうえで期待に添えた動きをさせる。
このように、UIに接している時の「安心感」を大事にすることは、子どもにも大人にも共通といえるそうです。
また、観察・分析なども共通の実施項目といえますが、子どものUXデザインは大人向け以上に力を注技、注意を払うフェーズだと思いました。
子どものUXデザイン ―遊びと学びのデジタルエクスペリエンス
読み終えた感想とまとめ
注目すべきは、全12章中、5章分が、2歳おきに子ども向けのデザインパターン、原則、性質、技法、サイトやアプリの実例、リサーチ及びテストの効果的な実施方法で構成されており、各年齢ごとに考慮しなければならないUXデザインの重要な点を知ることができます。
全体的にはデザイン面だけでなく、子どもにつきもである親への対応、子どもに降りかかるネット上の脅威といった注意点も含め、子ども向けのアプリやWebサイトを作るうえで知っておいた方が良い知見が網羅されています。
しかし、著者はアメリカ人で、欧米の子どもを基準とした内容となっているため、全ての注意点が日本で通じるとは限りません。例えば、デザイナーの法的義務のことも、あくまでアメリカの場合だったりします。
また、大人と共通の知見も得られますが、タイトルの通り子ども向けのアプリやWebサイトのUXデザインに特化した本なので、UXデザインをもっとワイドレンジに学習したい人向けだと思いました。
とはいえ、自分にとって「子ども」という今まで未知だったユーザー層と、その対応の仕方を理解できたので、読んでよかったと思います。
Webサイトやアプリを利用するユーザー(人間)は、何も大人だけではない時代ですので。