パラレルキャリアという言葉を初めて聞いた時に関心を持った理由は、SF小説などに登場する、現実と並行して存在する別の世界(時空)を表すパラレルワールドという言葉を知っていたことが基づいていたのだと後から思った。
そのパラレルキャリアについては数年前から関心を寄せていて、ネット上で情報収集をしていたところ、Webディレクターの方が実際にプロボノ、シビックテックといった活動をしているのを知り、その方と同年代・同業種としてその関心はさらに高まっていきました。
パラレルキャリアの定義についてはピーター・ドラッカー著『明日を支配するもの』にて提唱されている、
「パラレルキャリア(第二の仕事)、すなわちもう一つの世界をもつことである(中略)」
それはまさに今日の日本でも重要視されつつあり、ドラッカーは見事に予言を的中しています。
後述しますが、自分でもようやく最近その「もう一つの世界」を見つけることができ、今一度パラレルキャリアについて認識しようと、下記の書籍を読んでみました。
時間と場所を選ばない パラレルキャリアを始めよう!―――「2枚目の名刺」があなたの可能性を広げる
この本では、豊富な実例と平行に、パラレルキャリアの定義、始め方、種類、方法、活動により得られること。また、対極をなすシングルキャリアの実態、リスクなど、パラレルキャリアを始めるにあたり、知っておくべき知識が全8章200ページ強にて学べます。
パラレルキャリアとは
本業と本業以外の社会活動。
社会活動と聞くと「NPO団体」「ボランティア」という敷居が高いワードが思い浮かぶけど、そこがちょっと待ったなのである。
「社会」とは、なにも「世の中」という広くて公なステージだけではなく、単に人々の共同空間でもあります。
つまり、学校のPTAや、自分が住んでいる町内会も立派な「社会」なのです。
- SNSなどで同士を集め、プログラミングの勉強会を始める。または参加する。
- 上記のように自分が住んでいる町の町内会に参加する。
こういったことも立派なパラレルキャリアに当てはまります。
シングルキャリアのリスク
といった具合に考えると、身近なところから気楽な気持ちで始めらることがわかりますが、そもそもそんなことは昔から行われていることなのでまったく目新しいことではない。
では、パラレルキャリアという横文字が、なぜ最近注目されているのか。
それはパラレルキャリアとは対極をなす、シングルキャリアにその本質が隠されています。
下記、本文中から引用抜粋。
シングルキャリアとは、「自分が本業と考える組織、あるいは役割に全面的に依存してしまい、その価値観を疑問の余地なく受け入れ、その状態から変化する可能性すら想定していない場合」
決して終身雇用がいけないというわけではありません。しかし、長時間残業、異動、慣れ親しんだ仲間といった、会社が用意した時間と空間と接点の中で、一つの組織の考えだけに染まった思考と行動はとても閉鎖的なのです。
現に僕も組織のその時その時の状況により役割や立場、部署を転々とした経験があります。
その閉鎖的な状況にも気づかぬまま、組織の血液が濃くなってしまうと、社員個人は総合職として様々な経験ができる反面、特筆した専門分野を伸ばすことができません。
様々な経験といえど、所詮自分の組織内での経験にすぎない。
成長を妨げられた社員が多くなると、無意識に組織に身を任せる人ばかりとなり、自らが組織をより良い方向へ導く思考・行動を起こせなくなると考えています。
またはその危機感に気づいた人は転職を希望することになります。
当然それは組織的にもマイナスだし、後述する「キャリア」という個人の人生にも跳ね返ってくるでしょう。
パラレルキャリアが注目された3つのこと
(1)社内では経験できないことが経験できる。
例えば、町内会委員になるにしても、日頃の業務と同じように町内会にも目標や課題があるはずです。
多くの人たちに自分の町に住んでもらいたいという最終目標があり、そのためには町内イベントを開催したり、治安を良くしたりなど。
本業でフロントエンドエンジニアをメインでやっている人が、同じ町に住んでいる老若男女の様々な職業・役割を持つ人たちと一つの目標に向かうプロジェクトに参加することにより、普段では経験できない人たちとのコミュニケーション、チームビルディング、未知の専門知識、問題解決能力などが身につくはずです。
(2)その経験を本業で生かせる。
今まではフロントエンドの構築をメインでやっていた人が、本業ではバグの解決だけでなく、プロジェクトの問題解決能力を発揮できたり、たまたま同じ町内会員にいた経済学者さんから得た知識でターゲットユーザーの行動心理についてアイデアを出せるようになったり。
かなり都合の良い例ですが、外部環境で率先して行動することは、間違いなく自分自身へのフイードバックとなり、それが持ち帰った組織への手土産となります。
(とはいえ、最近のエンジニアさんは守備範囲が広いが)
(3)その経験が自分のキャリアになる。
今後、我が国で定年が長くなるのか、定年自体がなくなるのかわかりませんが、節目として現職を離れた後も働きたい場合や、転職をする場合、豊富なキャリアがあればシングルキャリアに比べてそれは有利に働きます。
本書ではパラレルキャリアという観点からのキャリアについて、ダグラス・T・ホールの定義を紹介しています。
生涯における一連の職業と経験。
生涯における一連の役割の経験。
キャリアの定義は様々ですが、上記をキャリアと定義づけ、それらを果たすことにより、いつか自分の軌跡を振り返った時に大きな自信と実績になるということです。
まとめ
- パラレルキャリアとは、本業と本業以外の社会活動。
- パラレルキャリアは、身近なところから始めらる。
- シングルキャリアのままだと自己成長の妨げになる。
- パラレルキャリアは、本業では経験できないことが経験できる。
- パラレルキャリアは本業や自分の人生に相乗効果をもたらす。
以上、この本を読んで自分なりに解釈したことですが、富士通ラーニングメディアのデザイン思考の導入の話や、週5時間〜10時間のスキマ時間を活用した話など、とにかく実例が豊富な良書だと思います。
日頃からプライベート学習をしている人におすすめ。
おまけ:僕のパラレルキャリア
僕が飛び込んだ「もう一つの世界」は、自分が住む大規模な集合住宅の理事会です。
役割としては、
- 4棟管轄の副棟委員長として、棟の問題提起、問題解決、業務執行。
- 広報副部会長として、広報誌制作、Webサイトの運用と改善、他、広報活動全般。
- 理事会役員として、棟と部会の活動報告や稟議、さらに全棟における問題提起、問題解決。
などなど。
月に10時間+α程度の時間で活動していますが、やはり理事会、棟委員会、広報部会のそれぞれのチーム内には、様々な専門分野の人、職業の人がいて、みんなこの集合住宅の資産価値を高めようという一つの目標に向かっている人たちで形成されていてとても刺激的で楽しいです。
飛び込んだだけじゃ成果の前借りをしているに過ぎないと思いますが、ここから少しづづキャリアを積み上げて行こうと思います。
いや、まずは飛び込むことが大事かな。