未経験Webデザイナーが教えてくれた『図解 モチベーション大百科』




 

去年入社したばかりの新卒Webデザイナーの女の子から借りてきた本。

 

約一年前の入社当初は、業務向上のために率先して本を読む子ではなかったのだが、彼女が未経験からWebデザイナーになって自主的に自分で選んで買って読んだ記念すべき一冊目。

 

タイトルを見せてもらった時に、

「まさか、僕のせいでモチベーションが下がっているのか!?」

と焦ったのだが、モロな自己啓発系の本というよりは、行動経済学と認知心理学の観点からあらゆるビジネスシーンをモチベーションというテーマに沿ってフォーカスした実用書でした。

 

とにかく読みやすい

本文は黄と紺の二色刷りで、堅苦しくない文章表現。

 

Web制作業界でも人気があるダン・アリエリー、ダニエル・カーネマン、ダニエル・ピンクといった学者・研究者の著書に書かれている実験結果を抜粋し、図解と、端的な結論と、編著者の説得色のある解釈が要約されている構成。

 

他人や自分に関聯する感情のメカニズムを1〜2ページづつ断片的に簡略にまとめてあるので、読み進めていく上でモチベーションが下がらぬままスラスラ読めてしまう。

 

てっとり早く理解しやすい内容なので、ハンドブックとして持ち歩きたいと思いました。

 

いろいろな場面で役に立つ

モチベーションというと、やる気や動機といった、人が行動を起こすために必要な原動力みたいなことが思い浮かびますが、もっと深く解釈すると、そこには大小様々な問題解決のための予防策やスムーズな対処にも発揮するのだと思いました。

 

そして、ビジネスシーンにおいての自分が関わる様々なこと。

「上司や部下とのコミュニケーション」、「顧客との交渉」、「捗らない会議の場面」、「チームビルディング」、「リーダーシップ」、「アイデア・発想法」、そして「自己管理」。

さらに、Webデザイナーにとって強みとなるであろう人間の行動パターンの知見も得られます。

 

本書の章立て

【CAPTER1】
動機づけのモデルケース

【CAPTER2】
人材育成のモデルケース

【CAPTER3】
目標設定のモデルケース

【CAPTER4】
意思決定のモデルケース

【CAPTER5】
人脈作りのモデルケース

【CAPTER6】
自己管理のモデルケース

【CAPTER7】
発想転換のモデルケース

 

図解 モチベーション大百科

 

感想・まとめ

Web制作、Webデザインの仕事をしていると、人によっては行動経済学や認知化学、認知心理学などに行き着きます。

 

今期、彼女にはコーディングやデザインなどの技術面やセンスを磨いてもらいつつ、Web制作のエッセンス、マーケティングやUXデザインの必要性、プロジェクト意識、チーム行動の重要性などを経験してきた中で選んだ一冊として納得しました。

 

行動経済学や心理学系の専門書は難しかったりするけど(もちろん読みやすい本もある)、巻末で紹介している有用な参考文献も多いし、この分野への興味をより高め、深掘りしていく入門書としての役割も持ちます。

 

僕は前述の行動経済学者の著書は大体読んでいますが、だいぶ昔にインプットしたきり記憶が薄れていることに気づき、今一度再読して、今後はアレンジとアウトプットをしていこうと思いました。




 

『矩形の森 思考するグリッド』創造の可能性を秘めた土台作り。




 

どんな媒体のデザインにおいても欠かせないグリッドレイアウト。

 

きちんと整列された格子柄のフィールド上でレイアウトを施し、ユーザーにとって理解しやすく最適に情報を整理する。

 

Webデザインの現場では、CSSで組むグリッドレイアウト(グリッドシステム)という構築方法が言葉としては馴染み深いと思いますが、正確にはグリッド自体はラフやプロトタイピングといった設計フェーズから用いられています。

 

コンテンツの優先順位や導線を意識した画面設計の場面において、ブロックごとのカラム分けを大雑把にペンで線引きをしたらそれはもうグリッドなのです。

 

そういえば、CSSを学び良い気になってたWebデザイナーだった頃から、グリッド自体について深く意識をしたことはなかった。

 

会社帰りに神保町にある建築や数学の書物が充実している古本屋さん明倫館書店に立ち寄った際に買った書物『矩形の森 思考するグリッド』がとても面白かったです。

 

矩形の森 思考するグリッド

 

94年に埼玉県立近代美術館で開催された展覧会『矩形の森 思考するグリッド』の図録です。

 

グリッドは先述の通り、Webやグラフィックなどのデザイン、建築デザインの現場でも多用されており、平面・立体関わらず昔からモノを作る時の拠り所としてきた主な構成方法。

 

また、アートの分野でも近代美術以降、ディ スティルやミニマリズムでも使用されてきました。

 

この展覧会・図録ではグリッドの変遷については特に取り上げらていなく、多角的な視点でグリッドを見つめています。

 

当時展示されていた、パウル・クレー、ディ スティル、アンディ・ウォーホル、草間彌生など国内外の23作家の作品が紹介されており、それらの作品は、

 

<分割と展開>

<連続と集積>

<ずれと気配>

<構造と意味>

 

の4つの章で分類され、各視点にて多様な姿で表現されたグリッドによる構築物の作品を楽しむことができます。

 

グリッドは様々な創造の立脚点にしやすいが、あくまで立脚点にすぎない。要求されているのは、そこから創造を、独自性を立ち上げることである。

グリッドという普遍的な構造を見据え、用いながらも、真の創造と独自の表現を立ち上げる。

これが、普遍と個の関わりを生み、魅力ある世界の開示をもたらすのである。

引用:埼玉県立近代美術館学芸員

 

グリッドとは、独自の価値をもたらす創造の可能性を秘めた土台作り。

 

ワイヤー作成、プロトタイピング、コーディング時のように素早く線引きしている現場環境で、今後そのことを思い出し、意識できればいいのですが・・・。




 

子どものUXデザイン 遊びと学びのデジタルエクスペリエンス




 

調査や行動観察・分析などを行い、利用者のことを先回りして理解し、製品やサービスとユーザーの接点に良い体験をしてもらう。

 

その貴重な時間を有効的に体験してもらうのは何も大人だけでなく、子どもに向けた製品・サービスにもいえます。

 

日々、テクノロジーとともに年々進化しているデジタルネイティブな将来の宝たちのためにも。

 

こんな人たちにオススメの本

  • とにかくUXデザインに興味がある人
  • 教育関係者
  • 0〜12歳までのお子さんを持つ親
  • 玩具メーカーのプロダクトデザイナー
  • 子ども向けテレビ制作チームの人

 

「UX」「エクスペリエンスデザイン」というワードに敏感に反応してしまう人は、この本のタイトルを見ただけでも興味が湧くと思います。

 

本来、子ども向けのアプリやWebサイト制作に携わる人たちに特化した本ではありますが、子どものためのUXの知見は、玩具や子ども向けテレビ番組制作などにも大いに役立つのではないかと思いました。

 

また、僕の場合ですが、Web制作者という立場とともに、いつの間にか親の気持ちになって本書を読み進めており、我が子への考え方、教育・子育てについても感慨深い気持ちになりました。

 

子どもというユーザー層の正体

実際に子ども達にWebサイトやアプリを開発するとしたら、自分だったらどうデザインするのか?

 

子どもをターゲットにしたデザインをするには、大人向けと比べたら「恐らくこう違うだろう」といった漠然とした注意点が予測できると思います。

 

例えば、

  • とにかくカラフルにすればいい。
  • 単純な構造にすればいい。
  • マウスオーバーなどフォードバックを大げさにすればいい。

 

以上のように、相手が子どもだからといって見下した姿勢で大人版よりも手を抜く感覚で臨むと、痛い目に逢うことが読み進めていくうちに分かってきました。

 

第3章では心理学者のジャン・ピアジェの認知発達理論という学術をもとに、子どもの発達の段階構造が記されています。

 

子どもは大人よりも知的能力が”低い”のではなく、年齢ごとに”もの事の捉え方が違う”そういう段階なのだそうです。

 

これを理解・認識せず、大人版よりも”楽”に考えてデザインをするとうまくいかないどころか、堂々巡りの泥沼化に陥る可能性が高いと思いました。

 

子ども向けに限らないUXデザインの考え

数あるUX本の中でも子ども向けに特化した本なのですが、大人と共通のデザイン思想も紹介されています。

 

ゴール(目的)に不釣り合いだったり的外れなデザインではなく、デザインパターンに一貫性を保つ。

 

支払い処理後に、類似商品を表示させるのではなく確認画面に遷移させるといった、操作をしていくうえで期待に添えた動きをさせる。

 

このように、UIに接している時の「安心感」を大事にすることは、子どもにも大人にも共通といえるそうです。

 

また、観察・分析なども共通の実施項目といえますが、子どものUXデザインは大人向け以上に力を注技、注意を払うフェーズだと思いました。

 

子どものUXデザイン ―遊びと学びのデジタルエクスペリエンス

読み終えた感想とまとめ

注目すべきは、全12章中、5章分が、2歳おきに子ども向けのデザインパターン、原則、性質、技法、サイトやアプリの実例、リサーチ及びテストの効果的な実施方法で構成されており、各年齢ごとに考慮しなければならないUXデザインの重要な点を知ることができます。

 

全体的にはデザイン面だけでなく、子どもにつきもである親への対応、子どもに降りかかるネット上の脅威といった注意点も含め、子ども向けのアプリやWebサイトを作るうえで知っておいた方が良い知見が網羅されています。

 

しかし、著者はアメリカ人で、欧米の子どもを基準とした内容となっているため、全ての注意点が日本で通じるとは限りません。例えば、デザイナーの法的義務のことも、あくまでアメリカの場合だったりします。

 

また、大人と共通の知見も得られますが、タイトルの通り子ども向けのアプリやWebサイトのUXデザインに特化した本なので、UXデザインをもっとワイドレンジに学習したい人向けだと思いました。

 

とはいえ、自分にとって「子ども」という今まで未知だったユーザー層と、その対応の仕方を理解できたので、読んでよかったと思います。

 

Webサイトやアプリを利用するユーザー(人間)は、何も大人だけではない時代ですので。




 

UXデザインセミナー『UX Bridge vol.2』に行ってきました。

『UX Bridge vol.2』に行ってきました。



 

追記:2017年11月18日
スピーカーをされた伊東氏、布目氏のスライドを追加しました。

 

追記:2017年11月1日
スピーカーをされた右田氏、宮下氏、佐伯氏のスライドを追加しました。

 

2017年も終わりに近いですが、ようやく今年初のUXデザイン系のセミナーに行けました。

 

BtoB/BtoBtoCサービスにおけるUX勉強会『UX Bridge vol.2』

 

UXデザインに対して価値観が高くない新入社員のひよっこWebデザイナーを連れて行くのが最大の目的でしたが、人気のイベントだけあって自分だけが抽選に当選。

 

最近UXデザイン系のセミナーは盛んに行われているので、日程が合えば今度こそ連れて行こう。

 

参加した動機

前線でご活躍されているデザイナー、フロントエンジニア、プロダクトマネージャーの方々の視点で、取り組みや考え方、UXデザインがビジネス上でどのような価値をもたらしているか?といったお話が聞けるとのことで興味が湧きました。

 

自分自身のためでもあるのですが、やはり自分が所属する組織・チームの各役割のメンバー達に、自分の立ち位置からUXデザインの価値を知ってもらいたかった。

 

残念ながら結果的に行けたのは僕だけでした。しかも天候も体調も最悪な2017年10月25日に。

 

サービスの転換期とUX改善

プレイド 右田氏:サービスの転換期とUX改善

右田氏は、自社サービスの大規模UX改善の失敗談と軌道修正の経験を具体的に紹介されていました。

 

(余談ですが、個人的に、失敗〜軌道修正にプロジェクトの美学を感じます)

 

機能もクライアントも多様になりUIが散見したので、UIのサマリー要素を強化したものの、「社内に改善の意図がしっかりと伝達されていなかった」「大幅な画面構成の変更」「ユーザビリティテストの未実施」などにより、改修後に混乱を招いたそうです。

 

組織・チームが行動の目標に対し共通認識を持ち、ドッグフーディング、メンバー間でズレをすり合わせ、ユーザーテストをしっかり試みて現在も改善中とのこと。

 

セルフユーザビリティテストは、自チームでも実施していますが、当初は「デザイン思考はチームみんなで仲良くやる」という個人的な印象のもと、みんなで和気あいあいと代わる代わるデバイスを操作しながら進めてザルになってしまい失敗した経験があります。

 

右田氏も提言していましたが、声が大きい人の固定観念で左右が決まってしまい、声の小さい人の貴重な意見や考えが埋もれていくことを注意喚起していました。

 

それにしても失敗談はとても価値があると改めて思いました。

 

右田氏のスライド

 

これまでとこれからの広告UX

Repro 宮下氏:これまでとこれからの広告UX

宮下氏は、YouTubeがスキップできない30秒動画広告を2018年に廃止することや、Chromeが広告ブロック機能の追加をすることを取り上げ、広告においてのUXでは、ユーザー体験を妨害されるような広告はマイナスなることを指摘。

 

また、これからの広告UXの特徴として、ネイティブ広告、広告内でゲームができるプレイアブル広告、ダイナミックリターゲティングなどを挙げていました。

 

ユーザーの目的遂行に「待った」をかける広告が排除される。
アドテクノロジーの進化に注目。

 

以前に読んだことがある「子どものUXデザイン ―遊びと学びのデジタルエクスペリエンス」という本にも、8〜10歳くらいの年齢から広告を嫌い、信用しなくなり、子どもはエクスペリエンスを見捨てる可能性があると指摘されていました。

 

子どものUXデザイン ―遊びと学びのデジタルエクスペリエンス

 

自分もスキップできない動画広告やポップアップするような強制的に足止めを食らうインタースティシャル広告が死ぬほど嫌いですが、適度に目的の邪魔にならない広告ならばいいのかなと思います。

 

結局はユーザーのその時の気分。

 

単純な行動理論では予測できない感情の起伏も考えられるので、広告のUXは難しそうなイメージが残りました。

 

宮下氏のスライド

 

UXとCS(カスタマーサクセス)

弁護士ドットコム 佐伯氏:UXとCS(カスタマーサクセス)

佐伯氏は、デザイナーの立ち位置から見たUXについての心境の変化から説明されていて、UIを通した狭義的なUXにフォーカスしがちだったとのこと。うちのWebデザイナーもその傾向にありました。

 

UXの考え方について、IDEOのティム・ブラウン著:「デザイン思考が世界を変える」に記されている、ボストン→ニューヨーク→ワシントン間を走る高速列車サービスの交通改善のCX、カスタマージャーニーの重要性を例として挙げていました。

 

デザイン思考が世界を変える
著:ティム・ブラウン
(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

僭越ながら、僕もこの本で色々なことに気づかされ、かなり影響を受けました(3冊買って人に配るくらい)。

 

そのCXやカスタマージャーニーと話が繋がりますが、本題にあるCSとはカスタマーサポートではなく、カスタマーサクセスのこと。

 

カスタマーサポート

ユーザーから問い合わせが来た時に対応する受動的な「リアクティブ」

カスタマーサクセス

調査やデータ分析をして、問題が起きそうなところに能動的に働きかける「プロアクティブ」

 

上記でどちらがUXの考え方に近いかといったら後者。

 

たしかに、CS(カスタマーサクセス)は、UXと同意義に感じました。

 

CS(カスタマーサクセス)のことを詳しく知りたいという方に、馬田隆明氏のスライドを読むことを勧めておりました。

Takaaki Umada presentations | SlideShare

 

セミナーでは紹介されていませんでしたが、馬田隆明氏の著作物で、「逆説のスタートアップ思考」という本もおすすめです。

 

逆説のスタートアップ思考
著:馬田 隆明
(中公新書ラクレ 578)

 

「サービスのUXに課題を感じたらCSを思い出す!」

 

なるほど納得しました。

 

佐伯氏のスライド

 

コンセプト設計におけるUXデザイン

ProfitMakers 布目氏、伊東氏:コンセプト設計におけるUXデザイン

何年か前に、Schoo(だったか)でWebディレクターの田口真行氏もおっしゃっていたのを思い出しましたが、

 

「UX」は、バズワードになるずっと以前から、当たり前のように行われてきたこと。布目氏もこのように述べていました。

 

そして以下、業務の緊急やりとりが発生し、講義に集中できなくなる・・・。

 

さらに体調が悪化。

 

なんとかメモれたのがこれ。

 

よくあるWEB系事業の設計

模倣するサービスの調査→UX設計→UI設計

本来あるべき事業の設計

CI設計→コンセプト設計→UX設計→UI設計

 

製品自体にも、パッケージにも、什器POPにも、販路にも、コンセプトは最後まで付いてくるもの。それは、WEB系のサービスにも言えるでしょう。

 

 

感想・まとめ

登壇者の話は各々20分程度ですが、無料でここまで具体的で様々な内容を聞けてお得だなと思いました。

 

UXデザインの概念に関しては登壇者の方々は共通認識を持たれていましたが、各々のUXデザインにおける取り組み、失敗談、改善方法、専門的なフィールドに絞った知見を得ることができ、とても勉強になりました。

 

【先着枠追加】UX Bridge vol.2




 

インフォグラフィックで見る138億年の歴史:宇宙の始まりから現代世界まで




本屋で人類学のコーナーを物色していたら発見。これだから読書はやめられない。

 

インフォグラフィックとは、情報を視覚的に表したもので、今やグラフィックデザインには欠かせない表現方法の一つです。グラフなどがわかりやすい例ではないでしょうか。

 

当然Webデザインでも多く活用されており、データに動きをつけて可視化するD3.jsのようなJavaScriptライブラリも存在します。

 

この書物は、ビックバンから現代までに起きた出来事をインフォグラフィック化したもので、様々な分野の専門家の協力を経て、ほぼ一人のデザイナーが90点以上に及ぶインフォグラフィックをデザイン。

 

テーマは「人類誕生以前」「文明以前」「1900年くらいまで」「現代」と大きく4段階に分かれています。

 

時代が進むにつれ、ページ内で使われている色数が多くなり、デザインも今風に変化していくコンセプトが、読み進めるにあたりとても面白いと思いました。

 

「宇宙はいつ誕生したのか?」

 

に始まり、

 

「人類はどのように世界に広まったのか?」

「技術革命はいつ起きた?」

「古代文明は何を発明したのか?」

「どんなふうに音楽を買っている?」

「経済恐慌で失業するのは誰?」

「インターネットの地図」

「人類の未来」

 

といった興味深く学ぶべきところがあるデータ。

 

そして、ロンドンのデザイナー、ヴァレンチナ・デフィリッポによるテーマに沿った美しいデザインとアイデアも参考になりました。

 

インフォグラフィックで見る138億年の歴史:宇宙の始まりから現代世界まで

 

Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで




 

近年、ますます「UXデザイン」という言葉を見かけるようになり、僕もこの言葉を多用しているひとりです。

 

UXの定義については、人によって見解が違うことがいまだに身近でも多々見受けられ、その問題に加えてUXデザインの導入方法の難しさも課題になっていると感じます。

 

僕がこの本を手にいれた目的は以下の2つ

 

  1. Web制作者としてのUXデザインのノウハウが学べそう。
  2. Web制作者としてUXデザインの導入方法が、より現実的に学べそう。

 

UXは、日本の中小企業にはまだ浸透しきれていない分野です。クライアントの案件や、自分が所属するチームを含めた組織でいきなり「UXデザインというものをやります」と言われてもなかなか難しいと肌で感じています。

 

なにより、当然UXデザイン自体を自分が理解していないと始まりません。

 

この本では、現場のプロ(執筆陣である株式会社IMJの方々)が、これからWeb制作においてUXデザインを取り入れようとしている人に向けたコンセプトで作成された本であり、また、この本自体が、そういった人をターゲットユーザーに置いたUXデザインによって作られているのが興味深いです。

 

つまり、最近UXデザインの見解・手法・導入方法を知りたがっている、日頃Web制作の業務に従事している人物像がターゲットになっています。

 

そこが、今までに多数存在するUX関連の本にはない特徴です。

 

Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで

 

1章のUXデザインとは?から始まり、ユーザビリティ評価、プロトタイピング、ペルソナ、ユーザー調査、カスタマージャーニーマップ作成など、UXデザインを実行するうえで実践的な2章〜7章では、手法の説明・基本的な実施手順・環境や経験による難易度に合わせたやり方・推薦書籍の紹介・注意点などでまとめられており、8章ではUXデザインを組織に導入する取り組みが紹介されています。

 

さらに本書の特典として、シナリオ作成、カスタマージャーニーマップ、共感ペルソナ、ステークホルダーマップ、導入シナリオといった最初に自分で用意するには大変そうなシートがテンプレート(パワーポイントとPDFの2種類)としてダウンロードでき、いきなり本書と同じような進め方が可能ですし、ご自身で使いやすい様に改変も可能です。

 

個人的に目から鱗だったのは、8章の「UXデザインを組織に導入する」で、UXデザインを組織全体に理解してもらう道筋が書かれており、この内容の途中までは自分が実施してきたこととほぼ一致しており、ある意味今までの行動が報われたような気がしました。これでよかったのか?そしてまさにこの後どうするか?と迷っていた矢先でしたので、とても参考になりました。

 

【感想】

UXデザイン系の本はたくさんありますが、この本はWeb制作においてのUXデザインを導入するために、とても現実的に肌身で感じる内容でした。

 

初級〜中級の人向き。
初級の人にとっては、Web制作におけるUXデザインを体系的に知ることができ、実務内容も具体的に書かれているので大変オススメです。

 

中級以上の人にとっても、自社(自分)以外の手法を知ることができるので、今までのやり方に対して見直せることができます。

 

実践的な部分では、ユーザビリティ評価、ユーザー調査といった一般ユーザーを集めなければ実施できないのでは?といった心配も、まずは家族や友達、自社内の人間相手からでも始める実施法が紹介されており、今後はハードルが低く感じることと思います。

 

UXの考察自体、日頃の生活からでもできるのです。

 

UXデザインに興味を持たれている人はすでに感じていると思いますが、本書を読んだら”現状よりもいっそうWeb制作が楽しくなるのは間違いない”と自信を持って言えます。




 

何が無駄で何が大切かを考えるWebデザイン設計




 

特に難しい話ではないのですが、軽率なWebデザイナーと接触した時に説明したお話の内容です。

 

トレンドとはその名の通り移り変わっていくものであり、人間の思考もいつか変わる時が来る可能性があります。

 

そしてもう一つ、物事の存在には理由があります。

 

Web制作・運用をする際、UI実装、SEO対策などそれら一つひとつが明確な理由に基づいて適切に行えているかいないかによって、気づかないところでユーザーに不快を与えている可能性があります。

 

ユーザーは「何かを達成する」「満足を得る」までに様々なUIと接触します。

 

近年、簡単にカッコよく実装できてしまう便利なJSライブラリやCSSフレームワークが多く存在します。

 

もうどれも見慣れていると思いますが、スライドショー、モーダルウィンドウ、スクロールスパイなど、どれもユーザーがWebサイト内で「おっ?」と感じるアクションが特徴。

 

これらを発想・開発した人たちには、当然それを作るにあたり理由があったと思います。

 

その理由は、Webサイトを利用するユーザーの利便性や満足度のため。

 

Webサイトは、グラフィック・デザインの要素を兼ね備えたプロダクト・デザインであり、「人間が閲覧する・人間が操作する・人間が感じる」といった、ユーザーの動向・意識・思考を対象にした設計を施し、「人間が目的を達成する」ための道筋となります。

 

その適切な判断をし、実装するのがWebサイトの設計者、デザイナーの役目なのですが、単に「流行っているから」「カッコいい」「今風」というのは、この業界ではあまり的確な理由にはなりません。

 

そもそもこれでは自分のデザインに対し、明快な説明にもなりません。

 

Webサイトは目標達成のために最も有力な仮説を立てて、オープン後も試行錯誤し変化し続けるものです。「カッコいい」「今風」「無難」という理由で実装してしまうと、改善しなければならない時に、何が問題だったのかが解りづらくなり、困ることになるでしょう。

 

さらに、Webサイトは人間が利用し、判断するものなので、UIという段階を一つひとつ踏んで目的を達成するまでに過剰な演出が邪魔になることがあります。

 

何が無駄で何が大切か?

 

論理的理由に基づくWebデザイン設計は、Web制作・運用をやっていく人間が最低限持つべき思考です。




 

Webサイト改修時のコンテンツの精査とヒアリング

Webサイトの新規案件の時だけでなく、全面リニューアル(以下、改修)の時にも「コンテンツの精査」という作業を行なっています。

 

僕は、精査という言葉は「吟味する」「調査する」「念入りに調べる」という意味合いのもと行なっているのですが、中には「削除する」「省く」「削ぎ落とす」という勘違いした意味が先行している社員がいて、コンテンツの精査について考え直してもらったことがありました。

 

現在のコーポレートサイトの王道的デザインなのかわかりませんが、既存のコンテンツを排除し、実績・強み・サービス紹介というラインナップのトップページデザインにまるっと変更しようとする社員に待ったを掛けたのです。

 

流行り廃りが激しいWeb業界です。悪い言い方をすれば”古臭く見える”過去のWebデザインを見ると、ツッコミどころ満載に感じてしまうことはありがちです。

 

ですが、そこに落とし穴が待っており、過去の産物は何もかも否定的に感じてしまい間違ったコンテンツの精査を行ってしてしまう場合があるようです。

 

まだ技術の進歩が発展していなかったり、UXデザインが浸透しきれていない時代のもの、古臭い、一見時代遅れな見た目に思えるデザインに惑わされ、コンテンツの必要性まで否定してしまわないようにしなければなりません。

 

僕は、アナリティクスなどのデータを拝む前に、前任のWeb屋さんがどういう意図でこのデザイン設計にしたのかを考えます。

 

忘れる前に一つ。僕は必ず前任のWeb制作者に敬意を払った気持ちで調査します。

 

何故なら、同業者だからです。Webサイトというビジネスの成果向上・課題解決のためのツール(成果物)を作り上げるのが簡単ではないと思っているからです。

 

話を戻しますが、きっと前任の方々も当時何か考えがあってこのデザイン設計にしたのだろうと思いながら睨めっこしていると、やはり導線らしきものが浮かび上がってきたり、配置されているコンテンツが有用であったり、適材適所なのだと判断できることがあります。

 

この後に解析データ(数字)で裏付け、改善ポイントを固めていきます。

 

そうすると、「もう少し見やすく解りやすく操作しやすくしてあげよう」で済む場合があります。

 

無駄なことだけはしたくないです。

 

それと、クライアントとのヒアリングも何より重要です。

 

サイトのリニューアルの目的を聞いても、肩透かしな返答が返ってくることがあります。

 

よくある例として、

 

「とりあえず、いろいろ老朽化してるので今風に一新したいです…」という言葉の本音には「うまく言えないけど、何とかしてくれる?」という本音が潜んでいる可能性があります。

 

すなわち、「何とかしてくれる?」=「世間からいい感じに思われて、なおかつ商品やサービスを広めてくれ。そして売れるようにしてくれ。」ということだとも読み取れます。

 

最近では、一般企業でもWeb担当者がいたり、普通にWebに詳しい人もいますが、多くは自サイトの現状の戦略的デザインを知らないクライアントもいます。

 

単に今風にするという着せ替えだけでは、成果向上・課題解決には繋がりにくいです。

 

新規案件などWeb制作全般で言えることですが、クライアントはこちらに身をゆだねている訳ですから、真意を読みとらなければなりません。

 

Webサイト改修時のポイントは色々ありますが、僕は以下の2点を忘れずに心がけています。

 

  • 前任のWeb屋さんの設計思想を読み取る。
  • クライアントの本音を読み取る。

 

経験を積まなくては身につきにくい技ではありますが、それが改修の難しいところであり、楽しいところでもあると思います。