調査・分析がゴールではない『マーケティングリサーチとデータ分析の基本』




 

「マーケティングって市場調査のことだろ」

 

以前の上司が発したこの言葉から思うに、一般の人からはマーケティングは「調査」「リサーチ」の印象が強いらしい。

 

きっと、調査やキャンペーンの場面で消費者として接点があるからなのかもしれない。かくゆう僕もその1人でした。

 

「マーケティングとは?」の問いに「市場調査」と答えてしまう人が世の中にはいったい何人いるのでしょうか?

 

僕にとっては、そのようなリサーチデータは必要ないので調査はしませんが、目的によってはこのデータから何かを導き出し(分析し)、成功に繋げる人もいると思います。

 

リサーチ、そして分析はマーケティングをしていくうえで、主に初期段階で行うことが多いミッション。

 

マーケティング部門の人じゃなくても、上司から「四半期の売上げ調べといて」と言われリサーチ作業を機会があると思います。

 

では、どうやってリサーチする?どうやって分析する?どこに答えがあるの?

 

最初のとっかかりとしてはやっぱりインターネットによるデスクリサーチからだと思いますが、ブラウザやエクセルデータを開いたからっていきなりリサーチ・分析ができるわけではありません。

 

最新のマーケティングリサーチ・データ分析事情が解説されている初学者向けの入門書。

 

手法論だけでなく、仮説、検証、分析の大切さというか、見失いがちだったり、そもそも備わっていなかったマーケティングリサーチ・データ分析を行う上での「意味」も理解できると思います。

 

玄人はわざわざ購入するまでもないけど、読む機会があったらそれはそれで初心に立ち返れるのでは。

 


マーケティングリサーチとデータ分析の基本

企業と顧客の暗黙知の前提を導き出すギャップファインディング




 

UXにおいてバイアスを払い、コンテキストを理解し、ユーザーのインサイトを知ることは主眼点となっています。

 

ユーザーの真の欲求を検出し、問題を解決するために活用するカスタマージャーニーマップ。それにくわえて、ギャップファインディングという手法がとても興味深かったです。

 

それは、ユーザーの潜在価値を見いだしマーケティングをしていくうえでも効果的な手法なのだと先日参加したワークで実感しました。

 

B2Bブランディングセミナー 活用できるカスタマージャーニーの作り方~ギャップファインディングというアプローチ~

主催:株式会社 大伸社コミュニケーションデザイン

 

ギャップファインディングとは

異なった分野と比較し、アイデアを得る。

 

このセミナーでわかりやすく例に出されていたのは、救急医療のシーンとF1のピットインのシーン。

救急医療

F1のピットイン

 

目的と対象が違うまったく別の分野でも、こうやって見ると、どこか相似していることに気づきます。

 

問題に直面している事柄と、共通・相似したすでに成功をおさめている事柄とを照らし合わせることにより、ピタリと前者に後者の成功法が当てはまる可能性があるのでは。

 

ギャップとは

ギャップファインディングを実施するうえで、「ギャップ」=「暗黙知の前提」を理解する。

 

企業も顧客も、商品やサービスの既存の「仕組み」「形状」「存在価値」が当たり前の現状だと思い込んでいることが多い。よって、その商品やサービスを利用しているユーザーの潜在的な不満や課題・期待がカモフラージュされてしまう。

 

その企業と顧客が持つ強力なバイアスこそが「ギャップ」=「暗黙知の前提」であり、そのギャップをカスタマージャーニマップや、先述の異なったカテゴリーとの比較から導き出すのがギャップファインディング。




セミナーの内容

レクチャー

ここではブランディングや、カスタマージャーニーマップ作成のコツ、ギャップファインディングについてのレクチャーを聞く。

本記事では、ブランディングや、カスタマージャーニーマップの説明は割愛します。

 

ミッション

ここから実際にワークショップに入ります。

ペルソナであるうつ病の患者さん(40代男性)自身が期待すらできなかったギャップを埋める問題を抽出し、うつ病患者さんが笑顔になれるアイデアを考える。

 

ペルソナの読み込み〜カスタマージャーニーマップ作成

5〜6人でチームを組み、すでに用意されているペルソナのストーリーを各メンバーが頭に入れ、各プロセス毎にペルソナの感情、ゴールを書き記した付箋やカードを時系列に並べ、カスタマージャーニーマップを完成させていく。

 

ギャップファインディングの実施

ジャーニーマップから汲み取れる感情や行動の情報から、ペルソナが本当は何を求めていたのかを分析。

 

さらに別カテゴリー(分野)のイノベーションサービスが集約されたアイデア集が各チームに一時配布され、それらを参考に比較し、アイデアのヒントをみつける。

 

分析結果

ペルソナが何を求めているか?

このペルソナは、症状が出はじめた初期の段階から自分がうつ病であることをひた隠す感情を持ち、それに伴った行動を各プロセスでとっていたせいで、全てが裏目に出る泥沼の行進を歩むことになっていた。

 

そこに着目し、うつ病の予防や治療といった病気自体の対策よりも、それらをも包括した、うつ病を肯定するある種の世界観が思い浮かんできました。

 

そもそも、世間のうつ病自体に対する印象がいけないのでは?

 

「風邪を引いたので今日は会社を休みます・・」
「昨日から風邪を引いちゃってさ、まいったよ・・」
「風邪引きそうな気がする・・」

 

同じ病気なのに誰もがここまで気軽に人に主張できる病気「風邪」。

 

うつ病も、風邪のように気軽に人に打ち明けられるようにならないものか?

 

別カテゴリー(分野)との比較

主催の大伸社さんが用意してくださった膨大なアイデア集を眺めてても、限られた時間内でマッチするものが見つけられなかった。むしろ、自分の知らないイノベーションがこんなにもあるのだなと、職業柄、感心してしまっていた。

 

前段で汲み取れたように、うつ病は人々に受け入れがたい分野なのかもしれない。

 

人々に受け入れがたい分野・・・。
その分野が人々に受け入れらた過去の実例・・・。

 

僕は「オタク」が思い浮かんだ。

 

80年代、タレントの宅八郎のキャラクター性や、当時実際に起った悪質で悲しい事件により、オタクは「気持ち悪いやつ」「危ないやつ」というレッテルが貼られていた。

 

00年代に入り、2ちゃんねるや、電車男というテレビドラマや映画を中心に、オタクと呼ばれる人たちに明るいスポットが当てられ、聖地となった秋葉原を中心に様々なカルチャーが生まれる。

 

オタクは「気持ち悪いやつ」から「キモカワイイ」存在となり、やがて市民権を得て、今や先端性すら感じるようになった。

 

アイデアの創出

うつ病に対する世間のネガティブな印象を、ポジティブな世界へと変遷させることに着想してからは、オタク文化への成り立ちに照らし合わせることに限らず、様々な奇抜なアイデアがチーム内から産声を上げた。

 

ここからのスピード感はすごかったし、一番盛り上がりました。

 

その中でも僕はやっぱり、オタク文化への変遷がマッチした。さらに前述の通り、今さら語るまでもない効果の威力を兼ね備えた映画やドラマの放映という、新鮮味に欠ける施策も有りだと思いはじめました。

 

「新鮮味に欠ける」ということはある意味「確立されている」ということ。

 

プロジェクトとして進行する際、未知のプロダクトやサービスは、プロトタイピング、素早いリリース、そして評価などを繰り返す試行錯誤の開発期間がかかる。

 

プロジェクトの予算の問題は置いといての話ですが、

 

その点、映画やドラマはありきたりとも言えるけど、幾年も大衆に親しまれている媒体であるがゆえ、今さらユーザーの学習理解度(ユーザービリティテスト)の心配はないし、PRのノウハウ、制作の専門家も充実しているので、時間という資源の消費の節約ができるという見解に至った。

 

このセミナーで得たこと

ギャップファインディングのレクチャーを受けているとき、経済学者で日本大学准教授の安藤至大氏の言葉を思い出した。

 

世の中のいろいろな現象を突き詰めて考えると、一見するとまったく別のことなのに背景にあるメカニズムがよく似ている現象が見つかることなんです。

 

別の畑を覗くことが有効なのはどこかで学んだつもりではいたけど、今回のワークを通して、ギャップファインディングという確立されたフレームとして学べたのは収穫でした。

 

そしてギャップファインディングを行うには精度の高いペルソナやカスタマージャーニーマップが必要だということも(本ワークショップでのカスタマージャーニーマップ作成方法は割愛します)。

 

最後の一つは、
テクノロジーを駆使したイノベーションを起こすことにこだわる自分を取り払うことができたこと。

 

画期的なイノベーションを起こすことが目的ではなく、あくまで問題を解決することが目的なのだと。

 

今所属している組織のWebサイト上で、「手段はなんでもいい」なんてカッコつけた自分のコメントは、ただ”騙っていただけ”だったと気づき、恥ずかしい気持ちにもなってきました・・・。

 

大伸社コミュニケーションデザインさんは、多くのエクスペリエンスデザイナー、エスノグラファー、ストラテジストを擁する会社で、今回のような有用なセミナーを惜しみなく開催されています。

 

僕がクライアントだったら依頼してみたい魅力的な会社だと思いました。

 




 

ユーザーに行動を促す『ザ・マイクロコピー Webコピーライティングの新常識』




 

昨年、SNS上でお世話になっているWebディレクターの方が紹介していたザ・マイクロコピーという本を読んでみて、サイト制作の参考になった。

 

文字伝達情報である「コピー」は、様々な広告やWebサイト上に見られるけど、「マイクロコピー」とはどの部分にあたるのか。

 

マイクロコピーは、主にアプリやWebサイト内のボタン上やボタン付近といったCTAまわり、入力フォーム内などにあるユーザーに重要な行動を促すための少ない文字。

 

この本は、サイトのコンバージョンに左右するそういった細部のコピーライティングのノウハウを、数々のマイクロコピーの実践・ABテストをおこなって結果を出してきた著者の株式会社オレコンの山本琢磨氏が、豊富な事例と多くの図版を使用し、やさしく専門的に紹介している。


Webコピーライティングの新常識 ザ・マイクロコピー

 

たった数文字にユーザーのコンテキストを考える。

一時期、ランディングページ制作においてコンバージョンポイント、コンバージョンエリアなどと呼ばれているエリアのデザインを研究していた時は、ボタンの大きさ、色や形、ボタンまわりの装飾や出現のタイミングといったことばかりに気をとられていました。

 

ユーザーの不安、懸念、疑問、迷いを払ってあげる、ちょっとした文章をCTAに添える、もしくはリライトすることでユーザーの行動は劇的に変わる。

 

コストがかかるデザイン変更や、HTML再構築といった改善実装の前に、ユーザーの前後関係、状況を見直した、たった数文字のリライトや文言追加で結果が変わるのがマイクロコピーの特徴だと思った。

 

マイクロコピーの力が発揮できるのはCTAまわりだけではない。

商品注文、問い合わせ、会員獲得といったところだけではなく、メニューやナビゲーション、ローディング画面、メール内などにも、その状況において適切な”思いやりの語りかけ”が有効。

 

わかりやすかったのが404ページのカスタム。404ページは、ユーザーが目的のページにたどり着けなかった際に「お探しのページは見つかりませんでした」と表示される、あの残念なイメージのページ。

 

ページが見つからないことを伝えるという常識的なことだけではなく、コンテンツにたどり着けなかったユーザーに対し、そこで行き止まりにさせないようにトップページリンク、サイト内検索、商品一覧といった道を作り、そしてモチベーションダウンさせない協力的な姿勢を示したコピーでインタラクションにつなげる。

 

上記のように、直帰率を下げるために404ページに工夫をこらすSEOテクニックが存在しますが、ここでの手法がマイクロコピーとの結びつきが強いことが証明されていた。

 

細部までこだわってナンボ。
何かしらの結果を出すUIとして機能しなければならないWebサイトの制作者に大変おすすめ。




 

『逆説のスタートアップ思考』から学ぶ




 

タイトルから見てとれるようにスタートアップに関する本ですが、そのスタートアップの本質が「逆説」や「反直観的」という言葉の中に隠されています。

 

ベンチャーと混同している人にとっても、スタートアップの正しい解説から始まるので、起業家でない人でも、著者が主張する素晴らしい思考へと読み進めやすいと思います。

 

実際、起業をする予定がないWeb制作畑の僕も読んで良かったと思いましたし、知り合いのマーケターも絶賛していました。

 

スタートアップの成功に必要な様々な要素の中で、本書は「アイデア」「戦略」「プロダクト」の3つに焦点を当てており、3章の「プロダクト」で、個人的に共感する考え方が紹介されていました。

 

逆説や異端という言葉は音楽や漫画が好きだった学生時代の頃から意識しており、大勢が熱中している既に世にありふれたモノやコトには興味が湧かなく、ニッチでマニアックでマイノリティなアンダーグラウンドなモノ・コトの方が新鮮でオリジナリティがあり面白さを感じ、さらにそれらが徐々に大衆に広まっていき、メジャーになっていく様を見て優越感に浸っていた性格の悪い時期がありました。

 

3章の「プロダクト」では、多数の「好き」より少数の「愛」を。という扉で始まり、スタートアップではスケールしないことを勧めています。

 

規模を拡大せず、未成熟でも製品・サービスをローンチしてしまい、創業者や開発者たち自ら早期の段階で検証に入り、大切な注意点を発見し、ブラッシュアップする。

 

そして、ある意味で共感者・ファンとも言える初期の少数ユーザー・カスタマーとも近い距離で接することができ、企業と製品・サービスに対する信頼の獲得と絆を深めることができる。

 

やがて少数のユーザー・カスタマーはエバンジェリスト(支持者)となり、美しい波紋状の広がりを見せる可能性があると思いました。

 

ではニッチなモノを作ればいいのか?というわけでもありません。

 

スタートアップにアイデアは重要な出発点となりますが、そのアイデアは「考え出す」のではなく「気づく」ものだと説いています。

 

これはスタートアップ思考に限らず、モノ・コトを作ることに関わる全ての人にとっても大事なことだと感じました。

 

序文で、「この考え方は企業全般に当てはまるものではありません」という注意が書いてありますが、この逆説のスタートアップ思考の知識・考え方は、様々なことに応用できることだと読み進めるうちに気づきました。

 

就職活動前の新卒者、起業家のみならず、全てのビジネスパーソンにオススメの本。

 

また、文中でも紹介されていましたが、著者の馬田隆明氏はスライドも公開しており、こちらも必見です。

 

 




 

デジタルマーケティングとエクスペリエンスの関係性と重要性




 

最近マーケティング戦略の分野に、UX/CXというワードが以前よりも目につくようになったと感じます。

 

さらに、Webマーケティングというワードよりも、デジタルマーケティングというワードの方が注目されている気もします。

 

「UX/CX」と「デジタルマーケティング」。それらの関係性はなんなのか?

 

例えばUXデザインとマーケティングは別ものと認識していますが、ビジネス、企業と消費者のより良い関係を築くために実施する手法としては共通していると思います。

 

ちょうど、それらを紐付けられそうなマーケティングセミナーを見つけたので行ってきました。

 

デジタルマーケティング時代を勝ち抜くためのマーケティング手法とICT活用とは

基調講演、講演1、講演2の全3部構成になっており、14:00〜17:30まで受講。

 

個人的にはこのイベントタイトルだけではあまり響かなかったのですが、基調講演のタイトルを見て申し込みました。

 

(僕みたいなのがターゲットじゃない講演なので、タイトルの批判をしている訳ではありません)

 

詳細ページ

 

講演項目

【基調講演】
~リアルの現場とデジタルのタッチポイントを融合せよ~デジタルマーケティング時代、顧客体験(CX)を提供できない企業は淘汰される
講演者:株式会社Nexal CEO & Bussiness Consultant 上島千鶴氏

 

【講演1】
デジタルマーケティングへの新たな視点』~ネットワークのチカラをフル活用~
講演者:シスコシステムズ合同会社 コーポレートビジネス事業統括 ビジネス開発本部 地方創生推進 担当部長 大野元嗣氏

 

【講演2】
デジタルマーケティング!!実現場ではこう使われている「Cisco Meraki」 の最新導入事例
講演者:ディーアイエスソリューション株式会社 第2事業部 パートナーソリューション2課 係長 藤重雄喜氏




デジタルマーケティングとエクスペリエンスの関係性と重要性

なにかにつけて「デジタル」という言葉に支配されがちな昨今ですが、実際は消費者と企業のコミュニケーション・チャネルでは、デジタルやインターネットとリアルが入り混じっている状態であり、もはや「デジタル」だけでは成り立っていないのが現状。

 

僕らWeb屋にWeb制作の依頼が来ても、Webサイトという成果物を作りあげることだけが求められているわけではないし、SEO対策、Webマーケティング以上の戦略を求められる時もあるので、その辺は特に実感しています。

 

俯瞰的に見つめると、ユーザーとデジタルデバイスのタッチポイントばかりに気を配っていたのでは顧客の満足度向上は難しい。

 

そこにはやはりUX、CXといった「体験」が重要視される。

 

上島千鶴氏は、詩人のマヤ・アンジェロウの

人は最後に記憶に残るのは言葉ではなく感じたこと、体験で得られた感情である。

という言葉を挙げ、体験の重要性を述べていました。

 

そして、体験で消費するのは何より時間。「今はお客さんの時間の奪い合いであり、そういった意味では違う異業種でも競合」という上島千鶴氏の言葉に納得しました。

 

藤重雄喜氏も、旅館での事例と体験談を元に体験と時間の重要性を言及。

 

スタートアップを見ても、10数年前に比べると大幅に時間の短縮ができるようなイノベーションを起こしていますし、ユーザー、顧客にとって素晴らしい体験(時間)を用意することはマストと言える。

 

上島千鶴氏や大野元嗣氏は、建設中の橋桁同士が繋がっていないイメージ画像を例に、組織の各部門の連携が取れていないことを懸念しており、これからはIT部門とマーケティング部門などがガッチリと統合し、組織全体が協働することが大切だと述べていました。

 

今回、上島千鶴氏の基調講演が一番の楽しみだったのですが、全講演を通して色々な知見を得られ、とても勉強になりました。

 

これがユーザーの事前体験期待値を超えるCustomer Delightというやつですね。

 




 

心理的戦略、たのしいプロパガンダ




 

プロパガンダという言葉が目に入ると何か物々しさを感じて今まで敬遠していましたが、ポップなタイトルと表1のデザインを見て思わず購入。

 

大日本帝国軍の「思想戦」で陸軍省の清水盛明中佐が、「宣伝は楽しくならなければならない」と説いていたことから章が始まります。

 

その大日本帝国、ナチドイツやソ連やアメリカなどの欧米諸国、北朝鮮や中国や韓国といった東アジアの近隣国のプロバガンダ戦略、そして国内外の宗教組織のプロバガンダ戦略、最後に日本国の政策芸術というパートで構成されており、「プロバガンダとは威圧的に押し付けるものではなく、娯楽などの楽しみや感動の中にメッセージ性を仕組む心理的戦略」だということを過去の実例をもとに紹介。

 

過去に実行されてきたプロバガンダ戦略の歴史を知り、現代の我が国日本で、もし国民に対してそういった思想実験が行われていたら、それに気づけるよう注意喚起をしている本です。

 

時の権力者・独裁者たちが様々なチャネルで実践してきた一般大衆や敵に思想を刷り込むテク。

 

プロパガンダ=「宣伝戦」だけに、予想以上にマーケティングなど自分の業務にも役に立つ本でした。

たのしいプロパガンダ
著者:辻田真佐憲
出版社:イースト・プレス

 

どの組織(国・軍)も、やはり民衆を主にメインターゲットとしていますが、反勢力(国・軍・団体)に向けても戦略を実行していることを知りました。

 

これについては、普段UXとかCXといったユーザーや顧客だけに意識を向けて戦略設計をしていることに対して、競合他社など対外的にも有効なのでは?と思い始めました。

 

競合を「巻き込む」といった点では、真っ先にキュレーションサイト戦略などが思い浮かびましたが、この本には別のアプローチによるヒントが隠されているような気がしました。

 

競合にもターゲットユーザーにも、いかに影響を与えるか。

 

この本ではそれを「楽しくなければならない」と提唱していますが、その「楽しさ」をどううまく使うかを考えるだけで、この本を読んだ人にとっては新しいアプローチへの発想がひらめくかも知れません。

 

また、独裁的政治活動や戦争のためとはいえ、昔から行われてきたターゲットの趣向に合わせた展開戦略、メディア戦略、セルフプロデュース、セルフブランディングなども参考になりました。

 

セルフプロデュース、セルフブランディングでは、どんなに論理的でもっともらしいことを提唱しても、伝える側や表現をする側が威圧的・高圧的な態度では説得者として不利になりかねないこと。

 

最後に、どうやって自然な流れでユーザーに認知しても、共感してもらい、行動してもらい、伝播させていくか。

 

という日々の考察のもと、今までは色んなクリエイティブやエンタメに注意を払ってきましたが、これからはこれらに加え、その裏腹にはプロパガンダが刷り込まれているのではないか?という警戒心も芽生えてきました。

 

たのしいプロパガンダのお勉強終了。




 

『インターネットマーケティング 基礎編』第2版(改訂版)




 

多分この本を購入検討されている方は、サーティファイ主催のネットマーケティング検定の資格取得を目指している方が大半だと思います。

 

かくゆう僕もその一人でした。

 

ネットマーケティング検定についての過去記事:

「ネットマーケティング検定 」サーティファイを受けてみた(1)

「ネットマーケティング検定 」サーティファイを受けてみた(2)

「ネットマーケティング検定 」サーティファイを受けてみた(3)

 

以前の記事でも書きましたが、この本は公式サイトからでも購入できますが、僕はAmazonのキンドル版で購入しました。

 

その際に気を付けなければいけないのが、Amazonには第1版と第2版(改訂版)が存在する事。当然第1版は内容が古いと思いますので、間違って購入しないように気を付けてください。

 

単行本(ソフトカバー): 332ページ
出版社: インプレス; 第2版
発売日: 2015/8/24
商品パッケージの寸法: 21 x 14.8 x 2.2 cm

 

以下の様に全12章+付録の過去問題で構成されています。

 

第1章
インターネットマーケティングを行うにあたって

第2章
インターネット技術概論

第3章
総論〜インターネットマーケティングの個別手法〜

第4章
インターネットリサーチ

第5章
プロモーション(PR/ブランディング)

第6章
インターネット広告

第7章
インターネットを利用した販売

第8章
効果測定

第9章
外注管理

第10章
各種ポリシー

第11章
関連法規

第12章
インターネットとコンプライアンス、CSR

付録
過去問題



マーケティングの基本的な理論から、Webビジネスにおいて必要な知識が広く得られます。

 

全体的な内容として、ネット(Web)マーケティングの資格の教材だけあって、ちょこちょこWeb関連の話が出てきます。一般企業でいきなりWeb担当者を任せられた人より、ネットリテラシーを要するWeb制作経験者の人の方が吸収が早いかも知れません。

 

特に第2章だけはWeb制作経験者にとっては、資格取得を目指す上で最も有利な内容かなと思いました。ネットワーク・OSのの基本知識、言語・SEO・制作ワークローを大体知っている人ならば斜め読みでも大丈夫な気がします。

 

Web屋である僕が苦手意識を感じた章は「第10章の各種ポリシー」「第11章の関連法規」。しかし、ブログやSNSなどインターネット上での画像や動画、音楽などの扱いについて勉強になりました。物を売ったり広めたりというノウハウだけでなく、この辺の知識はWebビジネスに関わる人にとって知って置くべきことです。

 

第9章の外注管理」に書かれていた内容は、Webディレクターの僕にとって為になる内容でした。Web屋の目線じゃない角度(Web制作会社への仕事の頼み方や選定方法など)の知識も学べます。

 

他の章はマーケティングの概念・理論・手法などで、Webマーケティングを継続していくための知識として楽しめました。

 

当然の事ながら、資格を取る為にはどの章もすっ飛ばす訳にはいきませんが、まず全章一読した後、興味がある章から順番に読み進めると良いと思います。

 

ネットマーケティングや、Webビジネスに必要なノウハウが幅広く網羅されているので、少しづつ苦手な章を無くしていくイメージで。

 

今回、サーティファイのネットマーケティング検定の資格を取得するために本書を購入しましたが、検定試験を終えた現在でも、この本のページはめくることがあります。

 

基本的なことが書いてあるので。




グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

MARKETING

マーケターが「グレイトフル・デッド」の本を?

 

デッドヘッズが「マーケティング」の本を?

 

北区王子の古本屋、山遊堂さんの音楽書籍コーナーでこの本のタイトルが目に飛び込んできた時は、一瞬頭が混乱したと同時にすぐ手に取っていました。

 

「グレイトフル・デッド」にも「マーケティング」にも興味がある僕は、この本を日本に紹介した糸井重里さんの序文を読んですごく興奮しました。

 

そしてそのままレジへ。




グレイトフル・デッドと自分

グレイトフル・デッドとはヒッピーサイケの大御所的バンド。

 

僕も若い頃は長髪でそれっぽいファッションをしていた時期があり、デッドのレコードやCDも聴いていましたが、決して熱狂的なデッドヘッズ(グレイトフル・デッドの熱狂的なファンの事)という訳ではありませんでした。

 

でも、グレイトフル・デッドの音源を買っていただけでなく、当時乗っていたバイクにデッドベア(グレイトフル・デッドの子熊のキャラクター)のステッカーを貼っていたり、Tシャツも着ていました。

 

今思えば90年代、遠く離れたここ日本で当時若かった僕もグレイトフル・デッドが敷いていたマーケティング・プランに導かれていたのかも知れません。

 

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

サイケデリックな装丁デザインのこの書籍は紛れもなくマーケティングの実用書です。

 

とはいえ、AIDMAやAISASといった消費者行動理論、4P理論といったお硬い説明はありません。

 

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ
「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」 デイヴィッド・ミーアマン・スコット (著), ブライアン・ハリガン (著), 糸井重里 (監修), 渡辺由佳里 (翻訳) 出版社:日経BP社

 

(2017年5月現在)6年前の2011年に日経BP社が発行・日経BPマーケティングが発売したこの本は、ビートルズやローリング・ストーンズほど知名度が高くないグレイトフル・デッドというバンドのビジネスの成功法が記されており、その手法はどれも現代のWebマーケティングと一致しているのです。

 

流行り廃りの流れが速いこの業界の実用書は数年経てば内容が廃れている可能性が高く、僕は1年〜2年以上前の実用書にはなかなか目を向けないのですが、好奇心で手に取ってみたら、現在でも全くを持って通用する内容でした。

 

各章は、「グレイトフル・デッドの成功法」「超有名企業やサービスの事例」「結論」でコンパクトにまとめられています。

 

今を時めくGoogle、Amazon、Dropbox、MySQL、マクドナルド等といった超有名企業やサービスの手法・事例は、グレイトフル・デッドが70年代から先駆けて実行していたのです!

 

  • ライブの素晴らしさ=質の高いコンテンツ
  • ビートルズと真逆な戦略=競合との画期的な差別化
  • ライブ録音の自由とオフィシャルリリース=フリーミアム

 

などなど(以上の手段はほんの一例)




感想

どれもマーケティングをやっていく上で大切な事ばかりですが、小手先のテクニックだけではなく、一番大切なのは消費者(ファン、リピーター)に対して誠実に想う気持ち。これは、今のSEO対策の根本的な考え方と似ていると思いました。

 

この本を読んで、人によってはマーケティングの本質を感じ取ることもできますが、マーケティングのみ焦点を当てた内容だけではなく、デザインの仕方、ビジネスそのもの考え方、企業人としての誠実さ、働き方、生き方まで考えさえられます。

 

6年前の本ですが、Webマーケティングをこれから学びたいと思っている方に充分おすすめです。

 

グレイトフル・デッドの渋い写真や、アーティスティックなイラストも載っていてデザイン性が高く、エッセイ感覚な文体で気楽に読める実用書。

 

プロジェクトマネージャー・マーケター・Webディレクターさんとかだけでなく、これからUI/UXを武器にしたいと思っているWebデザイナーさんにも有効かつ読みやすい書籍だと思います。

 

今回たまたま古本屋さんで購入しましたが、Amazonでも購入可能な様です。