Webディレクションのスキルセットの多さに悩んでいたころに読んだ「エッセンシャル思考」を再読しました。
初めてエッセンシャル思考を読んだ動機
Webディレクターに専念していくうちに、覚えなければいけないことが沢山あると思うようになり、早く一人前にならなくてはいけない!という焦りと、全てのスキルを体得できるのか?いや、むしろ何ひとつまともに体得できないのではないか?という不安に満ち、気持ちに余裕がなくなっていた時期がありました。
- Web制作全般の知識
- サーバー・ネットワーク全般の知識
- コミュニケーション能力
- マーケティング
- プランニング
- リーダーシップ
- プレゼンスキル
- アクセス解析
- ライティング
- 経営知識
- UXデザイン
- マネジメント
- SEO
- SEM
- ドキュメント作成スキル
- デザイン
上記のように、やがて大枠のカテゴリーから飛び出し、もはや重要項目のひとつとして独立し、圧倒的な人手不足に煽られながら、その後もキーワードは膨れ上がっていきました。
そしてこれらのキーワードはひとつの立派な惑星へと成長し、太陽系のように常に頭の中を順繰り周回することになり、
「マーケティング覚えなければ…。」
「いや、アクセス解析を先に覚えければ…。」
「いやいや、要件定義書を作れようにしなければ…。」
「あ、そうだ、マーケティングも覚えなければいけなかったんだ…。」
と、こんな感じに。さらに、
「ステークホルダーが役員だらけなので経営学も…。」
といった具合に、太陽系はおろか宇宙のように無限に膨張し始める始末。
貪欲に知識を手に入れること自体は現在も以前も苦ではなかったけど、この時は明らかに全てが散漫な状態。
その時に本屋さんで、
エッセンシャル思考は、単なるタイムマネジメントやライフハックの技ではない。本当に重要なことを見極め、それを確実に実行するための、システマティックな方法論だ。エッセンシャル思考が目指す生き方は、「より少なく、しかしより良く」。
と書いてある本の帯に目を奪われた。
これが、数年前に初めてこの本を読んでみようと思った動機。
エッセンシャル思考とは
「エッセンシャル」とは、本質的であり、絶対に欠かせないこと。
エッセンシャル思考は、少ない労力でより良い成果を出すこと。
そのためには、
- 普段の業務や生活から多くのタスクを削ぎ落とす。
- 降りかかる多くのタスクの増幅を予防する。
- 一番重要なこと(エッセンス)を見極める。
- その大きな成果や価値に向かって突っ走る。
そういったエッセンシャル思考になるための徹底した考え方、習慣、行動の方法論を応用することができ、この時は非常に役に立ちました。
今思えば、ここ数年よく聞く「断捨離」にも通じる、ミニマリスト的な思想にも近い。
クローゼットにある今後着るか着ないかわからない服へのバイアスの払い方についてのたとえ話なども文中に出てくるし。
そして、このエッセンシャル思考を応用して、頭の中で周回する惑星たちにストップをかけてみました。
Webディレクターの商品価値(本質)
エッセンシャル思考を踏まえ、Webディレクターという役割の本質を見極め、絞り込む。
文中に、Linkedinのディレクターが行なった「逆プロトタイプ」という手法が紹介されていました。
やって(作って)結果を素早く検証するプロトタイピングの逆、どんどんやらないことで、それらが現在必要なことであったかを検証する方法。
自分も、やらなければいけないと思っていてことをやめてみたら、案外やらなくて大丈夫だったことに気づかされるのでは。
いっぱしのWebディレクターがマスターしなければならないと思われるスキルセットをリストアップして検証してみたところ、マーケティングはマーケター、アクセス解析はアナリスト、UXはUXデザイナーというようにディレクターでなくとも賄える本職種がはっきりとわかってきました(最初からわかっていた筈だったのに)。
なんとも当然な結果に驚いた。何かをとるなら何かを捨てなければならないトレードオフというシンプルな考え方。
そして最後にどうしても捨てきれなかったのがプロジェクトのマネジメント。
進行力と管理力こそがWebディレクターの商品価値。
自分はディレクターとして、メンバーをアサインするということを忘れ、全てのスキルを一気に体得しようとしていたことに気づく。
この本の章毎に常々要約されているエッセンシャル思考の人と非エッセンシャル思考の人との比較を見ると、自分はもろに非エッセンシャル思考型の人間だったのでありました。
Webディレクターには付加価値も必要
とはいえ、進行管理一辺倒のWebディレクターでは売れっ子ディレクターにはなれない。また、自分がWebディレクターの守備範囲のことで迷子のなったのはなぜか?
進行管理は円滑に進められることがなによりも好ましい。そのためにプロジェクトマネジメントを学び、スケジュールの引き方、要件定義、ステークホルダーの重要性などを学ぶ。ここまではなんとなくディレクターっぽい。
しかし、事業戦略のためのマーケティングツール「Webサイト」制作のディレクションを円滑に進めて行く中で、クライアントやマーケターとやりとりするためのSEOを含むマーケティングの知識が必要になってくる。
クライアントとディレクターが実装したい機能があれば、エンジニア、PM、PLに説明ができて、さらにフィードバックを理解するための技術知識が必要となってくる。
これらに事例はすべてディレクターの商品価値である進行管理を円滑に進めて行くために生まれる付加価値であると考えます。
この付加価値の必要性は、担当する案件の目的、予算、スケジュール、スコープによって決まります。
世間のディレクターがあれもできてこれも詳しいからといって、あらゆる付加価値を一挙に習得しようとせず、やらないことを切り捨て、まずが本質をしっかり習得することが大事だと思いました。