小林健二 個展『Crystal Specimen-結晶標本』魅惑の鉱石たち。

小林健二 個展『Crystal Specimen-結晶標本』



 

2019年4月26日(金)、中野ブロードウェイの4階にあるGALLERY リトルハイまで鉱石ラジオなどで知られるアーティスト小林健二さんの展示会 『Crystal Specimen-結晶標本』に行ってきました。

 

GALLERY リトルハイ

 

小林健二さんの展示会へは、2017年に開催された『Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition』ぶり。

 

アーティスト小林健二さんの作品というと、絵画、造形、音楽、映像、鉱石ラジオなど多岐にわたる作品群がありますが、今回の展示のメインはずばり結晶。

 

148点にも及ぶ小林健二さんが育て上げた魅惑の結晶たちが無数に鎮座していました。

 

小林健二の無数の鉱石

 

中野ブロードウェイに通い続けて早20数年。仕事や家庭で忙しく年々ブロードウェイに足を運ぶ機会が減っているとはいえ、行けば隅々まで練り歩く僕ですが、何気にリトルハイに踏み入れたのは今回初めて。

 

リトルハイは過去に井口真吾さん、空山基さんなどの個展も開催されていたと知って非常に後悔。今後はまめにチェックしなければと思いました。

 

GALLERY リトルハイ看板

 

さて、そのリトルハイの敷地をまたぐと早速無数の輝きが目に飛び込んでくる。

 

 小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』

 小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』

 

148点にも及ぶ、地球の至宝たち。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

上の水色の結晶をながめていると、次第に神秘的な塔塚に見えてくる。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

 

それぞれが自己主張している多彩な結晶たち。呼吸をしている植物のよう。




 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

たむらしげるさんの作品の風景に登場しそうなニョキニョキ育ったクリスタルたち。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

真っ二つ?に別れたきれいなV字の結晶は、決して仲がわるくなったのではなく、平等に分け与えることの象徴なのだ。きっと。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

上の鉱石は、絵画の中に描かれている「窓」に見えてきた。そしてその先には見えるのはまた窓。いつまでも遠くを見つづけることが大切なのだと考えさせられた。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

撮影がへたっぴなので画像だと毒々しく見えけど、岡本太郎さんの作品みたいに生命感にあふれている真っ赤な結晶でした。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

この辺りから、盆栽を眺めている時と同じ気分に気づく。
そして、あらためて地球人でよかったと気づく。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

レモンスカッシュが飲みたくなるような黄色い鉱石群に目を奪われていると、ギャラリーのスタッフさんが特殊な紫外線のライトを鉱石の上から照らしくれた。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

感動。これには他にいらしたお客さんと一緒に驚いた。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

真っ暗闇の中で見たらさぞ素晴らしい光景だろうと思った。

 

そして、今回の展示会は結晶だけでは終わらなかった。そう、あの神々しき天体・・・。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

出ました。土星が住んでいる黒い箱(と、いつも僕は勝手に呼んでいます)。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』鉱石

 

しかも今回は2機。覗き込むと土星は生きているかのようにゆっくりと自転していました。しかし、この土星生成装置は一体どうやって制作されているのだろう?

 

物販コーナーには小林健二さんのアートブックなどが多数。

 

小林健二『Crystal Specimen-結晶標本』物販

小林健二ポストカード

 

黄色い封筒に入っているのは鉱石を撮影したポストカードのセット。

 

感想

小林健二さんとは同じ星に住み、同じ時代に生きているのに、なぜか作品を通じて地球と宇宙、神と人間、今と昔を行き来しているような不思議な関係性を体感してしまう。

 

今回、個性のある結晶たちからは、生命力と、舐めたら甘そうな懐かしさをもらった気がする。

 

Crystal Specimen -結晶標本-

会期

2019年4月26日(金)~5月7日(火)
12:00~19:00(最終日17:00まで) 休廊なし 入場無料

場所

GALLERY リトルハイ(中野ブロードウェイ4F)
東京都中野区中野5−52−15 中野ブロードウェイ 4F

HP

GALLERY リトルハイ

KENJI KOBAYASHI ART WORK




昭和30年代の風景が今ここに。『秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』




 

戦後、駐留米軍を経て、国鉄(現JR)のコンサルティングに就き日本に滞在したアメリカ人の撮り鉄、J・ウォーリー・ヒギンス氏がフィルムにおさめたカラーの東京、日本。

 

時代は平成の終わりが近い2018年現在から約60年前の昭和30年代。

 

今から60年前といえば自分はまだこの世に生まれていない。そしてちょうど両親が働き盛りだった時代。

 

なので当然僕は実際に見たことがない風景。

 

しかし、日影丈吉や安部公房といった昭和初期〜中期の東京や日本を描いている小説が好きな僕にとっては実際に見たことはなくとも、頭の中で思い描いていたことがあるどこか懐かしい風景であった。

 

黄色い山手線。

コートというより外套をまとっているような当時のビジネスパーソン。

空が高い渋谷の宮益坂。

ちばてつやの漫画に出てきそうなボンネットバス。

スッキリとした池袋東口。

渋谷・浅草・新宿・銀座の幻想的な夜景。

蒸気機関車が走る秋葉原。

GHQ用の看板を横目に走る路面電車。

ホーローの看板。

建設中の東京タワー。

道路が舗装されていない淡路。

 

現代の日常とかけ離れた当時の東京・日本へ、鮮明なカラー写真によってタイムスリップできる本です。

 


秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本 (光文社新書)

 

渋いワーゲンが走っている表紙は1957年の上野広小路。さて、奥の方では一体なにを建設しているのか。

 

450ページ強の新書サイズ。大判で出版してもよかったのでは?と思うリアリティを感じるカラー写真が多数。

 

この素晴らしく貴重な記録と、この時代の力溢れる日本人の姿と国の様子を、いま少子高齢化・人口現象問題に悩む現代の日本人に届けてくれたことを、著者のJ・ウォーリー・ヒギンス氏に感謝します。

 

お正月、実家に帰った時に持って帰って両親に懐かしんでもらおうとも思う。きっとタイムスリップすることに間違いないだろう。




『矩形の森 思考するグリッド』創造の可能性を秘めた土台作り。




 

どんな媒体のデザインにおいても欠かせないグリッドレイアウト。

 

きちんと整列された格子柄のフィールド上でレイアウトを施し、ユーザーにとって理解しやすく最適に情報を整理する。

 

Webデザインの現場では、CSSで組むグリッドレイアウト(グリッドシステム)という構築方法が言葉としては馴染み深いと思いますが、正確にはグリッド自体はラフやプロトタイピングといった設計フェーズから用いられています。

 

コンテンツの優先順位や導線を意識した画面設計の場面において、ブロックごとのカラム分けを大雑把にペンで線引きをしたらそれはもうグリッドなのです。

 

そういえば、CSSを学び良い気になってたWebデザイナーだった頃から、グリッド自体について深く意識をしたことはなかった。

 

会社帰りに神保町にある建築や数学の書物が充実している古本屋さん明倫館書店に立ち寄った際に買った書物『矩形の森 思考するグリッド』がとても面白かったです。

 

矩形の森 思考するグリッド

 

94年に埼玉県立近代美術館で開催された展覧会『矩形の森 思考するグリッド』の図録です。

 

グリッドは先述の通り、Webやグラフィックなどのデザイン、建築デザインの現場でも多用されており、平面・立体関わらず昔からモノを作る時の拠り所としてきた主な構成方法。

 

また、アートの分野でも近代美術以降、ディ スティルやミニマリズムでも使用されてきました。

 

この展覧会・図録ではグリッドの変遷については特に取り上げらていなく、多角的な視点でグリッドを見つめています。

 

当時展示されていた、パウル・クレー、ディ スティル、アンディ・ウォーホル、草間彌生など国内外の23作家の作品が紹介されており、それらの作品は、

 

<分割と展開>

<連続と集積>

<ずれと気配>

<構造と意味>

 

の4つの章で分類され、各視点にて多様な姿で表現されたグリッドによる構築物の作品を楽しむことができます。

 

グリッドは様々な創造の立脚点にしやすいが、あくまで立脚点にすぎない。要求されているのは、そこから創造を、独自性を立ち上げることである。

グリッドという普遍的な構造を見据え、用いながらも、真の創造と独自の表現を立ち上げる。

これが、普遍と個の関わりを生み、魅力ある世界の開示をもたらすのである。

引用:埼玉県立近代美術館学芸員

 

グリッドとは、独自の価値をもたらす創造の可能性を秘めた土台作り。

 

ワイヤー作成、プロトタイピング、コーディング時のように素早く線引きしている現場環境で、今後そのことを思い出し、意識できればいいのですが・・・。




 

展覧会「インド・タラブックスの挑戦」@板橋区立美術館

世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦



 

インドの出版社タラブックスの展覧会があると知り、2017年11月26日(日)板橋区立美術館へ、「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」に行ってきました。

 

インド・タラブックスの挑戦のチケット

 

タラブックス

4年前だったか。僕が初めてタラブックスの出版物と出会ったのは、原題:The Night Life Of Treesを吉祥寺のタムラ堂さんによる日本語版仕様にした『夜の木』を手に取ったのが最初。

 

夜の木の絵本

『夜の木』

 

シルクスクリーン印刷によるなんとも美しく、そしてインクの匂いなのか、お香のようなエキセントリックな香りが漂う素敵な大判の絵本。

 

タラブックス(Tara Books)は、南インドにある、”手作り”の絵本の出版社。

 

『夜の木』が一部の人たちで話題となり、僕も当時SNS上などで”同じ穴の狢”の方々と情報交換をしていた時期がありました。

 

なにが”手作り”かというと、まず印刷の技法が、一枚一枚を人の手で刷るシルクスクリーン印刷。さらに製本もすべて手作業。

 

シルク印刷が味わいある綺麗な仕上がりとはいえ、オフセットやデジタルなど印刷技術が発展するこの時代に、手間の掛かるシルクスクリーンを採用し、なぜ世界中を魅了し、そして知れ渡ったのか。

 

世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦

板橋宿区立美術館の入り口

 

板橋区立美術館へは、2015年のイタリア・ボローニャ国際絵本原画展以来。

 

板橋区立美術館の階段

 

展示室に続く二階への階段は、板橋区立美術館ならではのわくわく感が倍増する施し。

 

タラブックスの歴史

 

タラブックスの歴史は94年まで遡ります。

 

『夜の木』の歴代の表紙

『夜の木』の歴代の表紙

 

圧倒的な『夜の木』の歴代の表紙たち。

 

『夜の木』の原画

『夜の木』の原画

 

そして『夜の木』の原画群19点。紙にペン、インク、アクリルなどで描かれています。

 

『水のいきもの』初版

 

2011年に出版された、『水のいきもの』初版。原題:Waterlife

 

『水のいきもの』の原画

 

同じく『水のいきもの』の原画6点。こちらも紙にペン、インク、アクリルで描かれています。

 

『母なる神の布』木版

 

『母なる神の布』の木版。

 

タラブックスの原画

タラブックスの原画

タラブックスの原画

タラブックスの原画

 

他にも全然知らない作品が多数展示されており、新たな発見と本展覧会の網羅性に圧巻。

 

板橋宿区立美術館の館内

板橋宿区立美術館の館内

 

『インド・タラブックスの挑戦』グッズ

『インド・タラブックスの挑戦』グッズ

 

展示室の下、一階(半地下)の物販コーナーでは、本展覧会のグッズが充実していました。

 

『夜の木』トートバッグ

『インド タラブックス』物販

『インド タラブックス』物販

 

『夜の木』のTシャツや、トートバッグは無条件でかっこいい。

ほかにタラブックスのトートバッグや、手ぬぐい、ミスプリントを素材にした缶バッジ、カード各種、シルクスクリーン印刷の展覧会ポスター、などなど、おそらく、ここでしか手に入らないタラブックスヘッズにはたまらない物ばかりでした。

 

僕の戦利品

『夜の木』カード

 

数ある濃い品揃えの中から、一番思入れ深い『夜の木』のカードのみを購入。

 

そして本展覧会のチラシを持って帰りたかったけど、館内のどこにも無い。

 

美術館の方に聞いてみたら、初日で無くなってしまったそうです(初日ってこの日の前日だぞ!)。

 

インド・タラブックスの挑戦のDM

 

しかし、見兼ねた美術館の方からDMをいただきました!

本当にありがとうございました。

 

感想

作品の素晴らしさは、タラブックスのことをすでに知っている人にとっては紛れもないことであり、また、この展覧会に足を運んでいない人に、この記事の画像などを通じて少しでもそれが伝われば幸いと思います。

 

タラブックスが十数万部級のベストセラーを生み出している理由の一つに、作家、画家、デザイナー、編集者、刷り師など一つのチーム全体が、独自の価値観と独自のやり方で仕事をしていることだと感じました。

 

たとえば子ども向けの本の場合は、男の子と同じ数だけの女の子もいるということを忘れないこと。主人公になれるのは男の子だけではありませんから。(ギータ・ウォルフ)

 

読み手のことを考えて、本を作るのは当たり前のことかもしれませんが、タラブックスはその人にとって価値がある絵本を制作するという社員全員のマインドセット、そして素晴らしい趣向をこらした作品に仕上げ、世界を魅了する手法でまい進するクリエイター集団だと認識しました。

 

初めて『夜の木』を知り、手に取り、タラブックスの世界に足を踏み入れ、熱中した一連の体験。

 

これは、僕がやっているWeb制作の仕事でも大事なことと改めて痛感しました。

 

今回小さな子どもと一緒に二人で行って、ゆっくり観れなかったということもあり、会期中にもう一度行こうと思います。

 

そのあとまたブラッシュアップができれば。

 

タラブックスの挑戦 垂れ幕

 

世界を変える美しい本
インド・タラブックスの挑戦

会期:2017年11月25日(土)から2018年1月8日(月・祝)まで
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(1月8日は祝日のため開館)、12月29日〜1月3日
場所:板橋区立美術館
詳細ページ:http://www.itabashiartmuseum.jp/exhibition/ex171125.html
住所:東京都板橋区赤塚5-34-27
巡回開催:愛知県刈谷市美術館 2018年4月21日~6月3日

 

タラブックスのことがわかる関連書籍


世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦

 


タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる

 


夜の木

 




 

カワイハルナ 個展『海を見る』を見に行く。

カワイハルナ 個展「海を見る」



 

海が見たい。

 

カワイハルナさんと本個展を知ったのはいしいひろゆきさんのツイッターのタイムライン。

 

DMに描かれていた海が見える風景の一部に惹かれました。

 

この日は内林武史さんの展示とハシゴだったのですが、偶然にもお二人のテーマの一環が「記憶」で、感慨深くなりそうななにかを予感。

 

PARK GALLERY(末広町)
PARK GALLERY(末広町)

 

会場である秋葉原のパークギャラリーへ行くのは初めて。公園横にある素敵な佇まい。

 

いざ。

 

カワイハルナ 個展「海を見る」

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

 

こじんまりとした空間に、存在感がある8点の風景が並ぶ。

 

作品:風が通る場所
作品:風が通る場所

 

夏っぽい青空の中、壁にタオルが掛けられ、関係性が感じられない物が点々と存在する意味不明な風景。不思議と穏やかな風を感じながらここで寝っ転がりたくなる。

 

作品:風が通る場所
作品:風が通る場所

 

なんか奥行きを感じると思ったら、背面に画用紙、手前に透明アクリル板の2レイヤー構造。中央のオブジェに自然の影がついている。

 

作品:海のあれこれ
作品:海のあれこれ

 

「海はどこ?」とよく見たら丸い穴の向こうが海になっていました。

 

作品:三角が横たわる部屋
作品:三角が横たわる部屋

 

不思議なインテリアはキューブリックの映画「時計じかけのオレンジ」の一幕を思い出す。

 

作品上:なかに海を 作品下:夢の中
作品上:なかに海を 作品下:夢の中

 

カワイハルナさんが創造する世界はとても心地よさを感じる。作中によく登場するカーテンやタオルみたいな布で、清潔感と風を表現されているからだと思う。

 

作品:曲面のなか
作品:曲面のなか
作品:円と板
作品:円と板
作品:部屋を横切る丸太
作品:部屋を横切る丸太

 

力学や物理学が好きな方なのだろうか。整合性をとりたくなり考えこみながら見入ってしまう。

 

ポップでシュルレアなランドスケープ。

 

戦利品

カワイハルナDMといしいひろゆきのZINE

 

カワイハルナさんの物販はなく今回の個展のDMと、いしいひろゆきさんのZINEを購入。

 

ですが、会期中に発注すると、受注生産で今回の個展で展示されている原画のポスター(原画実寸)を3,000円で購入できるそうです。

 

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

 

そういえば、本個展に行くきっかけとなったDMに描かれていた絵はどこだ?

 

と思ったら、いちばん最初に観た「風が通る場所」の作品に似ている。しかし、雲やタオルの形が若干変わっているし、無いはずのオブジェクトが「風が通る場所」にはある。

 

最初は「きっと未完成の状態でDMに使用したのだろう」と思ったけど、そうではない。どちらも同じ記憶であり、同じ風景。どちらも完成品。と、解釈しました。

 

これからもますますカワイハルナさんの展示に足を運びたいと思いました。

 

カワイハルナ個展「海を見る」
http://park-tokyo.com/post/165279496681/kawaiharuna
PARK GALLERY
東京都千代田区外神田3-5-20
会期:2017/10/11(水)~2017/10/22(日)
時間:13:00~20:00
休館:月曜日・火曜日




内林武史 展 Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]

内林武史 展 Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]



 

先月の小林健二さんの展示会に続き、10月18日にギャラリー椿へ内林武史さんの展示会に行ってきました。

 

内林武史さんの展示は、同じくギャラリー椿GT2で2年前の2015年に開催された「Another Planet*」以来。

 

その「Another Planet*」では、初めてご本人とお会いし、不思議なオブジェ(装置)を丁寧に紹介してくださって、オブジェ(装置)のスイッチが切り替えるたびに現実から夢の世界へと切り替わる体験をさせていただきました。

 

残念ながら今回はご本人にお会いすることができず。

 

しかし、今回も普段の生活では味わえない世界が用意されていました。

 

Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]

ギャラリー椿GT2の一部屋目
ギャラリー椿GT2の一部屋目

 

GT2の一部屋目。さっそく所々に何かが発光しているのが目に飛び込み、外の京橋の喧騒を一瞬で忘れる。

 

『alu』は「在る」、「或る」などの”ある”
光、音、色、匂い…脳裏に刻み込まれた記憶。
初めてみる光景に懐かしさを憶える、
そんな感覚で楽しみ頂けたらと思います。
-内林武史さんの説明文より引用-

 

説明文を読んでGT2のメインルームを一周。

作品:内包された機械と空気
作品:内包された機械と空気

 

裸同然で閉じ込められたシステムと空気は、この菅の中でともに永遠の存在となった。

 

作品:D.L.C model:1817 No.397
作品:D.L.C model:1817 No.397

 

やっぱ発光する鉱石を見ると落ち着く。「ここに来た」と実感する。

 

作品:月の軌道と。
作品:月の軌道と。

 

今回、僕が見入ってしまった作品の一つ。遠い記憶の断片が額装された空間の中で今でも時が流れているよう。

 

作品:機械の脳と宇宙の砂
作品:機械の脳と宇宙の砂

 

右上の丸い窓の中では鉱石が緩やかに点滅していました。

 

作品:Ishmedail
作品:Ishmedail
作品:Ishmedail
作品:Ishmedail

 

鉱石の研究にひたすら没頭できそうな空間。お気に入りの鉱石を持ち出しノクターンビュリズムを決め込みたくなる。

 

GT2奥の小部屋
GT2奥の小部屋

 

幻想っぷりがさらに増した、薄暗いGT2の奥の小部屋に移動。

 

作品:引き出しに流れる時間
作品:引き出しに流れる時間

 

「引き出しに流れる時間」なんて素敵な作品名だろうと立ち止まった。

普段、いつも目の前に見えている風景には無意識に時の流れを感じていますが、当然引き出しの中でも時間は流れている。

 

作品:対話する菌類の標本
作品:対話する菌類の標本

 

「生物の標本」と考えると薄気味悪いけど(笑)、昔出会ったキノコとこうして今も一緒に過ごせたら素敵だと思いました。

 

作品:星の棲む灯台
作品:星の棲む灯台

 

作品:alusola
作品:alusola

 

菅や額に収められていることにより、現実とは切り離されているけど過去の曖昧な記憶はこれから大切に保管されていく感じがしました。

 

作品:build-SQ 01〜02
作品:build-SQ 01〜03

 

幼少の頃、寂しさを感じる夜に窓を開けると灯りがついている建物を見て安心した気持ちになったことがあります。

 

作品:build-SQ 01〜03

 

バックに映る建物の光と影がきれいなランドスケープ。

 

作品:いちばん近い星(スイッチ)
作品:いちばん近い星(スイッチ)

 

GT2の奥の小部屋との境界線にあるスイッチ。

これを押すと・・・

 

作品:いちばん近い星

作品:いちばん近い星
作品:いちばん近い星

 

大きな星(恒星?)の鉄塔に灯りが!

 

作品:いちばん近い星
作品:いちばん近い星

 

鉄塔の脇にクレーンで吊るされている土星。

 

作品:いちばん近い星
作品:いちばん近い星

 

幻想的な現象。

 

団地やクレーンや鉄塔といった風景は、内林武史さんのアトリエがある東雲の風景にリンクしているようにも感じました。

 

 

遠い記憶をこういった形でアウトプットできるなんて素敵すぎる。

 

幼少の頃、母と行った広い原っぱのあの公園は一体どこだったのだろう?
夜中に目を覚ました時に台所にいたあの怪人はなんだったのだろう?
僕にはそういった子供の頃の曖昧な記憶がいくつもあります。

 

夢だったのか?
現実だったのか?
空想だったのか?

 

どうしても思い出せません。

 

普段、仕事で必要な知識をインプットし、忘れないように言葉に出したり、文章にしたり、議論を交わしてみたりして記憶を少しでも持続させようとしています。

 

当然それらは今仕事で必要なことばかり。

 

だけど、今回の内林武史さんの展示で思ったことは、現在の記憶も忘れたくないだけど、幼少の頃の遠い曖昧な記憶もこれ以上忘れたくない。それも今の自分には必要なのだと。

 

内林武史さんが具現化した「風景」に訪れて、僕はそう思いました。

 

内林 武史 展 DM

 

内林武史 展 Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]
http://www.gallery-tsubaki.net/2017/takeshi_uchibayashi/info.htm

2017年10月7日(土)〜10月21日(土)
11:00 AM〜6:30 PM
日・祝 休廊




異次元ポップなイラストレーター:いしいひろゆき




 

久しぶりに胸が踊る作家を見つけました。

 

イラストレーターの「いしいひろゆき」さんです。

 

惑星探査機カッシーニが長年の役目を終えるニュースを見たり、先日行ってきた小林健二さんの展示会などもあり、興奮が冷めずTwitterで「土星」を検索しまくっていたら、たまたま、いしいひろゆきさんの存在を知りました。

 

ご本人のTwitter上で紹介されていた、FRaUという雑誌で使用されている一枚の挿絵を見て、今後自分はこの人に注目していくだろうと直感的に思いました。

 

 

幻想的で、どこか70〜80年代を感じさせる不思議な一枚。

 

2016年から本格的に活動されてたとのことで、個展もちょくちょくやっていたらしく、もっと早く知っとけばよかったと後悔しています。

 

パステルカラーによるファンシーな作風が特徴で、ユニークなキャラクターが繰り広げるストレンジポップな世界はついついじっくりと見入ってしまいます。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/162972909476/clouds

 

FRaUという雑誌の他にも、WIREDの表紙やQUICK JAPANでも仕事をされいたようで、海外でも注目を浴びているそうです。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/157190948276/cover-and-inside-illustrations-for-wiredjp-vol27

 

追記:10月3日

Web制作者御用達のオンラインスクール、Schooのイベントでもビジュアルデザインを担当されてらした模様。

 

 

ピースフルなエッセンスを感じる異次元ポップ・ワールド。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/160694532891/raisin-sandwich-acrylic-pen-colored-pencil

 

Illustratorで描かれているようですが、手描きでも描かれているようです。

原色のような明確じゃないパステルカラーなのでとてもファンタジック。ベタ塗りのフラットな感じから、子ども向けの絵本も出して欲しいと思いました。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/146532642616/park

 

トロピカルムードなアメリカ西海岸のニューエイジ的リラックス感(なんだそりゃ)。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/138323161441/museum-at-shallow-sea-海続きの美術館

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/130876270646/sunset-さんせっと

 

杉浦茂、たむらしげる、佐々木マキ、久里洋二を初めて知った時のようなワクワク感いっぱいで、今後の展開が非常に気になります。

 

ハマりました。

 

本文中、いしいひろゆきさんの公式SNSから引用させて頂きました。

 

いしいひろゆき(Hiroyuki Ishii)

Twitter
https://twitter.com/ishii_hiroyuki_

Tumblr
http://hiroyukiishii.tumblr.com

Instagram(Works)
https://www.instagram.com/ishii_hiroyuki_/

Instagram(Illustration)
https://www.instagram.com/ishii_hiroyuki_illustration/




 

小林健二 展『Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition』

Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition



 

2017年9月9日(土)、鉱石ラジオなどで知られるアーティスト小林健二さんの展示会に行ってきました。

 

ギャラリー椿へは、2015年の内林武史さんのAnother Planet以来2年ぶり。

 

【僕と小林健二】

鴨沢祐仁 展 – KITAHARA collection –でも書きましたが、以前、僕は宮沢賢治や稲垣足穂といった幻想文学作家が好きになったと同時に、いつしや同じような世界観を持つアーティストを追いかけるようになりました。

 

小林健二さんの存在を知ったのはもっとそれ以前で、97年に筑摩書房から出版されていた「ぼくらの鉱石ラジオ」という本を中野のタコシェで購入したのがきっかけでした。

 

 

宮沢賢治、稲垣足穂、鴨沢裕仁は、文章や絵でその不思議な魅惑の世界に僕を連れてってくれましたが、小林健二はご自身の作品を発表するだけでなく、自分で育てる鉱石や、自分で組み立てる鉱石ラジオといった製品(キット)を同氏が設計・監修をする銀河通信社から発売し、「体験」も僕に与えてくれたのです。

 

(体験といえば、内林武史さんも展示会で作品に触れさせてくれたり操作をさせていただきました。)

 

そして人生初の小林健二さんの展示会へ。

 

ギャラリー椿

 

【Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition】

小林健二さんの作品は鉱石ラジオだけではなく、絵画、造形、音楽、映像、装置!?など多岐にわたり発表しており、その作風はどれも不思議で幻想的な世界です。

 

今回、ギャラリー椿のサイトで告知されていた、青く発光している土星が中に入っている装置?みたいなものが当初のお目当てでしたが、全ての作品に魅了されました。

 

展示物は新旧の作品が展示されており、アートブックのAIONやMEEMに掲載されている作品、そして初お披露目の作品もありました。

 

小林健二展示会1

小林健二展示会2

 

ギャラリーのメインスペースの長編の壁には、おそらく新作と思われる立体感ある作品がずらり。

 

小林健二作品1

小林健二作品2

小林健二作品3

小林健二作品4

 

小林健二さんの作品というと、「土星」や「鉱石」が発光するオブジェというイメージが個人的に強かったのですが、まるで高度な古代文明の遺跡で発掘されたような神々しい作品群も待ちかまえていました。

 

小林健二作品5

 

幾何学的な紋章にはどんな意味があるのでしょうか。

 

小林健二作品7

 

↑UFO?

 

小林健二作品8

小林健二作品9

 

これらの作品を見ているうちに、00年代に活躍していたイタリアの実験音楽宇宙兄弟My Cat Is An AlienのRoberto Opalio(ロベルト・オパリオ)の作風を思い出しました。

 

もしかしたら、Roberto Opalioも小林健二さんに影響を受けていたのではないでしょうか。

 

小林健二作品6

小林健二作品10

小林健二作品11

小林健二作品12

 

ページ最上部の作品とともに、つなぎ合わせた板に描いた神秘的な絵画は圧巻でした。

 

小林健二作品13

 

ギャラリーのメインスペースを超え、GT2と呼ばれるスペースへ。

 

ギャラリー椿GT2

小林健二作品14

 

メインスペースで展示されていた新作たちが進化する前の作品群。

 

小林健二作品15

小林健二作品16

 

特殊な樹脂で製作されているらしいです。進化前も良すぎる。

 

小林健二作品17

 

紫色のダイヤ型の空間をのぞくと、奥行きがある小さな一つの世界が存在しているかのように思いました。

 

小林健二作品18

 

↑巨大な作品。氏が10代の頃に製作した作品も展示されていました。

 

最後にGT2をさらに奥に進んだ部屋は、今までとは違う空間。

 

9年前?以前にギャラリー椿で行われた展示会のDMに使われていた石膏?らしき大きな作品。↓

 

小林健二作品19

 

そして、青く発光している土星が住んでいる黒い箱。

 

小林健二作品20

 

わがままを言ってギャラリーのスタッフさんに部屋を暗くしてもらい撮影。土星は水平ではなく不思議な動きで自転していました。

ホログラムによって映し出されているのかと思ったら、明らかに物体として自転しています。どうやってランダムな回転をさせているのか僕の頭脳では想像がつきませんでした。

 

小林健二作品21

 

うまく撮影できませんでしたが、この丸い大きな窓をのぞくと、ここにも青く発光する土星が自転しながら住んでいます。左下の小さな窓には鉱石が入っており、気づくと色が変化していました。

 

しかもこの大きな装置、鉱石ラジオだったのです!

 

小林健二作品22

 

【感想】

様々な技法で生み出される小林健二さんの作品は、ひとつひとつが神秘的な空想の世界に連れていってくれるのですが、どこか現実味も感じるのが魅力です。

 

自然と化学の法則、鉱石と土星の距離、現在と過去と未来の時系列など、現実で想像され、創造された独自の世界観。

 

これらの作品、この世にありえない風景や物体は、実はどこかに実在していたのではないか?と思うと楽しくて仕方がありませんでした。

 

ギャラリー椿のスタッフさんがとても親切に作品や小林健二さんのことを説明してくれるので、最近小林健二さんに興味を持った方にもオススメの展示会です。

 

9月16日(土)PM5:00からは、小林健二さんのイブニングトークがあるそうです。行けたら行きたい。

 

Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition

 

Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition
会期
2017年9月9日[土] – 9月30日[土]
9 September – 30 September 2017
11:00 AM – 6:30 PM
日・祝 休廊
*初日、作家在廊(PM5:00~)
http://www.gallery-tsubaki.net/tsubaki.html
http://www.gallery-tsubaki.net/2017/Kenji_Kobayashi/info.htm

 

ギャラリー椿:アクセス
http://www.gallery-tsubaki.net/access.html