『未来の年表2 人口減少日本でこれから起きること』感想




 

昨年(2017)、Webディレクターが読んだ2017年に出版された本という記事でも簡潔に紹介しましたが、講談社現代新書から出版された『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』を読んで、かなり衝撃を受けました。

 

前書は、Amazonでベストセラー1位になっていたこともあり、さらに仕事上での提案やアイデア発想のネタ探しとして軽い気持ちで購入。たしかにネタの宝庫で、実際にここに書かれていることをヒントに提案したこともあります。

 

しかしながら、ビジネスにつなげるための良いネタ本であると同時に、あまりの日本の深刻な状況に絶句もしました。そんな記憶がまだ新しく感じる中、続編の『未来の年表2 人口減少日本でこれから起きること』が出版されたと聞いて購入。

 

前書ををあらためて再読し、続編に挑む。

 

前書『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』

まずは、前書の説明。

 

社人研(国立社会保証・人口問題研究所)の調査報告などを中心に多くの確証あるデータに基づき、未来の日本で起こりうる出来事が第1部では記されており、後半の第2部では、著者の河合雅司氏による10つの対策案が講じられている。

 

人口減少にまつわる日々の変化というのは、極めてわずかである。「昨日と今日の変化を指摘しろ」と言われても答えを窮する。〜〜省略〜〜ゆっくりとであるが、真綿で首を絞められるように、確実に日本国民1人ひとりの暮らしが蝕まれてゆく。出版:講談社現代新書 著:河合雅司『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』P10〜11から一部引用

 

上記の引用文のように、第1部、第2部を通して河合雅司氏は、「静かなる有事」という言葉を使い、現状と将来を危ぶみながら、これから起きること、しなくてはならないことを説明しています。

 

ちなみに、現在世界中が注目している日本の少子高齢化問題に関しては、昨年のシルバー・イノベーションはデザイナーの吉祥性が鍵という記事で触れていたのを思い出し、久しぶりに読み返してみて、なんて楽観的な記事だったんだと前書を読み終えたあとに思いました。


未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

 

直面してからでは遅い「静かなる有事」

自分が住むマンモス集合住宅はまさに小さくした日本の姿だと最近感じました。

 

今の集合住宅に引っ越してからは、確かにご高齢の方は多い印象はあったものの、それなりに子どもたちの声も聞こえるし、僕と同世代のお父さんお母さんの姿も見受けられる。

 

しかし、これこそが「静かなる有事」なのでした。

 

今年から組合の役員となって、理事会における最年少はおそらく40代の僕。今までこの集合住宅を守ってきた建築関係、植栽関係、デザインや出版関係などの専門的な居住者の方たちは高齢化が進み、若い人たちへの引き継ぎが難しくなっいます。

 

これと同じように、今の日本において気づいたら手遅れにならないように、個人の周りでこれから起きること、できることを、より多くの人々が認識するべきです。




 

個人でできることを知る『未来の年表2』

前書は、俯瞰的に少子高齢化問題・人口減少問題に対して言及しており、また、政府や自治体などの機関・団体へ向けて取り組むべき対策が記されてあったのに対し、今回の『未来年表2』では家族や自分自身など、これから身の回りに起きるミクロな視点で迫る事態が描かれているので、前書よりもいっそう国民一人ひとりの危機感の意識が高くなるのではないかと思います。

 

  • やる気のない万年ヒラ社員が続出
  • 食卓から野菜が消える
  • 刑務所が介護施設と化す
  • 東京の路線が縮み、会議に遅刻する
  • 中小企業が黒字でも倒産

 

上記は『未来の年表2』に書かれている危機のほんの一例ですが、手遅れの時にはこのような事態になっていることが予想されており、前書同様、対策案が「今からあなたにできること」として個人の目線で8つ講じられています。


未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)

 

企業人として。個人として。

「企業人として。個人として。」一人の自分に対し、仕事とプライベートの二極化した表現はあまりしたくないのですが、ここはあえて『未来の年表』『未来の年表2』に倣っていろいろと考えてみました。

 

まず、近年、デザイン会社、Web制作会社などの実績を眺めていると、年々と地方再生などのプロジェクトの実績が以前よりも多く見受けられるようになったと感じます。

 

こういった案件はやり甲斐もあるだろうし、そこに着目し、企業の実績として今からとことん実績を重ねておくのも将来的に強みとなる。

 

また、『未来の年表2』の第2部、今からできる8つのメニューの2項目、「1人で2つ以上の仕事をこなす」に関して、副業やパラレルキャリアについて触れています。

 

自分が現在の定年歳となり、その時に今の若い人たちと共存していくためにも(迷惑をかけないためにも)、幾つになってもより多くの刺激ある経験を踏んでいきたい。

 

最後に

今後『未来の年表3』も出版されそうな気もしますが、まずは前編と後編の『未来の年表2』は自分たちのためにも読んでおいた方がいいと思います。久しぶりに会社の人間だけでなく、家族にも勧めた本となりました。

 




シルバー・イノベーションはデザイナーの吉祥性が鍵




 

身近な環境を見渡すと、僕が所属している組織でも少子化の波が思いっきりかぶさっています。

 

我が家も子供は1人で今後2人目が欲しいところですが、今はいろいろな事情でなかなか授かることができません。

 

少子高齢化。

 

先日、僕が大好きなテレビ番組でシルバー・イノベーションのことが取り上げられていました。

 

経済学視点の番組オイコノミア

「オイコノミア」は、Eテレのテレビ番組で、吉本興業の又吉直樹が毎回いろいろな経済学者とともに様々なテーマを経済学的視点の角度から考察していきます。

 

行動経済学などが好物のマーケター・Webディレクター・UXデザイナー・IA(インフォメーションアーキテクト)のみならず、企業人全般にオススメの番組だったりします。

 

毎回おもしろい内容で毎週欠かさず観ているのですが、今回の「経済学で目指せ! 明るい高齢化」は特に感慨深い内容だったので、ブログに記録することにしました。

 

シルバー・イノベーションとは

本題に戻りますが、シルバー・イノベーション(高齢者向け技術革新)とは、その名の通り、高齢者の方々をターゲットにした新たな価値を創造することで、僕は言葉としては初めてこの番組で知り、興味が湧いてきました。

 

ご存知、日本は今世界のどの国よりも高齢化が進んでいます。

 

直近2016年の世界の高齢化率(高齢者人口比率)の国別比較統計ランキングでは、日本が1位で26.86%、2位のイタリアでは22.75%、3位のギリシャでは21.60%となっており、1位の日本から下は22位まで全てヨーロッパ諸国です。

出典:GLOBAL NOTE 世界の高齢化率(高齢者人口比率) 国際比較統計・推移
https://www.globalnote.jp/post-3770.html

 

【世界の高齢者人口】

  • 2015年 約6億人
  • 2035年 約10億人

 

世界の高齢者人口は、35年には約10億人に膨れ上がるらしいです。

 

さらにアジアの高齢者向け市場だけでも2035年には、約500兆円に昇るという試算が出ていることがわかりました。

 

今の日本はシニア向けのイノベーションが生まれやすい

深刻な状況に変わりないのですが、逆にこれを日本のGDPを向上させるチャンスとして捉える考え方が、番組で紹介されていました。

 

これからはヨーロッパ諸国を中心に、他の国が日本に遅れて高齢化が進んでいきます。

 

決定的打開策はないと言われている今、日本が直面している高齢者の医療や介護、雇用などの多くの高齢化問題に対し、革新的なアイデアを生み出す動向に深い関心を示す人たちが1人でも多く増えれば、日本人によるシルバー・イノベーションが生まれやすくなるはずなのです。

 

日本は今、どの国よりも先立って、今後世界で増加傾向の高齢化問題に取り組むモデルとしてだけでなく、多くのメソッドが生み出せる機会に恵まれていることがいえます。

 




 

革新的なデザイナーが必要な時代

今、少子化によって日本の人口が少なくなっていますが、人口が少ないからといってGDPが減るわけではないそうです。

 

大切なのはイノベーティブな考えを持った人たちが多いか少ないかの問題で、今までとは違うことを考えようとする人たちが必要になってくるとのことです。

 

つまり、イノベーティブなことを考える人の比率を増やしていかないと人口が減ってった時にイノベーションが起こりにくくなるのです。

 

イノベーションが起こらないとGDPは下がる一方。では、どんな人が適任なのか。

 

僕はデザイナーだと考えています。

 

文頭でオイコノミアがマーケター・Webディレクター・UXデザイナー・IA(インフォメーションアーキテクト)の人たちにオススメと書いてしまったのは、こういったデザイナー的資質を持った人たちこそ、イノベーションを起こしやすいのでは?と感じたからだと思いました(一概には言えませんが)。

 

デザインという観点は、ビジネスの諸問題をまったく新しいかたちへと変化させる。右脳から出てくる発想は、ビジネスの大きな課題を解決するうえでより重要になりつつある。デザイナーはその本質として、消費者の行動、思考、感情を深く理解し、そのニーズに感情移入する傾向がある。彼らは、ごく小さな洞察であっても掘り出すことができ、それが、左脳で考える人間には思いもつかないような、あっと驚く技術革新につながっていく。

引用:WIRED
https://wired.jp/innovationinsights/post/social/w/design-inspires-future/

 

人々のニーズを探り出し、飛躍的発想で生活を豊かにする―それが「デザイン思考」だ。物事の機能的な性能だけでなく、感情的な価値をも考慮に入れる。それを通じて、人々の隠れた(潜在的な)ニーズを把握し、機会へと置き換えるのだ。デザイン思考家の人間中心のアプローチを利用することで、新しい製品やサービスを人々の既存の行動に結び付け、受け入れられる可能性を高めることができる。

引用:デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) ティム・ブラウン(著), 千葉 敏生 (翻訳)

 

デザイナーの重要性というより、吉祥性を浸透させる。

最後にオイコノミアでは、第一に、(変わり者)(今までと違うことを考える人)など、イノベーティブな人を評価するような価値観を、まずみんなが持つことが大事。と紹介していました。

 

番組中に、経済学者の大竹文雄さんが、(変わり者)(今までと違うことを考える人)という表現をしていましたので、特に”デザイナーでなくてはならない”というわけではありません。

 

しかし、革新を意識しながらも、ビジネスを理解し、問題解決を生業にしているデザイナーこそ、一番期待できるのはないでしょうか。

 

最近では国内でも大手企業がデザイナーの重要性に気づき、そして、デザイン思考な制作会社や、そういった意識を持っているデザイナー個人も少しづつ増えてきていると思います。

 

ですが現実的には、未だ中小企業までは浸透しきれていないのが現状です。

 

重要性というよりも、もはや吉祥性。これからのデザイナー達はシルバー・イノベーションを起こす前に、まず、そういった意識を中小企業を含む日本全体に持たせる”デザイン”をするべきなのかなと思いました。

 

僕の場合、まずは自身が所属する組織からだ。