デザイナーファーストな組織デザイン方法。どのようにマネジメントをすべきか。

デザイナーファーストな組織デザイン方法。



 

2018年3月6日(火)、デザイナーファーストな組織デザイン方法。というセミナーに行ってきました。登壇者はこの業界では有名なチームに所属する方々ばかり。

 

デザイナーファーストという言葉自体はまだ馴染めないけど、今後デザイナーが日本に増え続けて欲しいと感じています。

 

理由の一つとして、少子高齢化問題におけるシルバー・イノベーション(高齢者向け技術革新)を起こす足がかりに、デザイナーの人口増加が好ましいと個人的に思っているからです。

 

デザイナーという肩書きではなくても、デザイナー的資質を持ち合わした人や、イノベーティブな人を評価するような価値観を備えた人が増えれば、日本企業の99.7%を占める中小企業にもデザイナーの価値が浸透し、楽観的な言い方をすれば「暮らしやすい世の中」になるのでは?と予測しています。

 

そして、僕が所属する組織にもデザイナーという肩書きの人が何人も在籍していますが、デザイナーの役割を活かしきれていない実情があります。その理由は下記の通り。

 

デザイナーを活かしきれていない3つの問題

  1. 経営層・組織全体がデザイナーの価値を理解していない。
  2. デザイナー自身がデザイナーの価値を理解していない。
  3. 価値を理解していると思っている人が組織に価値を浸透しきれていない。

 

3つ目の大罪を犯しているのが、僕と相棒のWebデザイナーです。

 

上記は自分が所属する組織の話であり、一口に企業といっても、そこには業種業態や職場環境、社内政治など組織によってケースは様々。

 

このセミナーでは、業種業態、職場環境などに左右されず、どの組織においても、組織改革やチームビルディングができる万能なフレーム!といったら都合が良すぎるので、共通して応用できる基本姿勢やマネジメントの話が聞けないかと思い参加しました。

 

組織特性の違いはあれどチームビルディングの基本は同じ

チームビルディングの5つの基本

  1. そのチームは何のためにあるのかの共通認識
  2. それに向かってそれぞれがやるべきことを認識
  3. メンバー全員がGIVERマインドを持ち共創
  4. ナレッジやノウハウなどを共有してスキルアップ
  5. チャレンジを後押ししてそれぞれが強みをさらに伸ばす

 

DONGURIの熊本氏は上記を挙げ、最初は結構常識的なことかな?と聞いてましたが、各施策で行なっている内容の徹底ぶりに耳を傾け続けました。

 

なかでも、合宿を行ってミッションとビジョンを策定したことに胸をつかれる。

 

大所帯ではなかなか難しいことかも知れませんが、「そのチームは何のためにあるのか」を、「その組織は何のためにあるのか」に置き換え、共通認識を高めるべき。

 

社内wiki作成、勉強会、Slackのニュースチャンネルの活用は自社のクリエイティブ部門でも行なってきましたが、組織特性は違えど、経営層も含め部門横断で行うのが理想。

 

「デザイナー」=「情報をいい感じに色や形にするのに長けた人、よくわかんないけど面白いアイデアを出す人」で止まっている経営層・組織全体を根本から改革するにはこれぐらいやらねばならないと感じました。




 

オペレーター型のデザイナーにクリエイティブを要求し失敗

Goodpatchの長岡氏のマネジメント失敗談や、同氏とFOLIOの橋本氏の採用視点のお話はためになったけど、自分の組織にとって絶望に近い感覚に陥りました。

 

自分の組織のデザイナー自身も、デザイナーの本質・価値に気づいてなく、ビジュアルの技術とセンスを兼ね備えていますが、クライアントや代理店、営業からの伝言ゲーム的な指示を淡々と消化するオペレーター型にあたる人なので、長岡氏がその型の人にチャレンジやトライの機会を作ってあげても結局退職してしまったという悲しい事例を聞く。

そこから学んだこと

  • 組織に合わない人を採用しない
  • そういった人のために適した仕事を与える

 

自分の組織でも、最近新卒採用で入社したWebデザイナーの子は近年のデザイナーの役割をある程度心がけている部分があり、育成に力を注ぐ余地は十分にあると思いますが、古くから在籍している上記のようなオペレーター型の人の意識改革は難しいと感じた。

 

こればかりは育成に力を入れてもお互いに時間を無駄にする可能性が高いので、もっとも根本的な採用の時点でフィルタリング、もしくは適した仕事を与えながら、まわりから徐々に文化的に意識改革していくしか手立てはないのではと思いました。

 

また、長岡氏も橋本氏も採用に関しては、自身の思考やカルチャーマッチングを大事にしたリファラルリクルーティングを強化しているとのこと。

 

これからのデザイナーのあるべき姿

  • マネージャーもデザインの対象が変わっただけでデザインすることに変わりはない。
  • マネージャーは人と組織をデザインする人。
  • デザイナーも上流工程から出席すべき。
  • ビジュアルだけではなく本質的にビジネスそのものを理解する。
  • ビジネス成果にコミットするために課題解決に向き合う姿勢。
  • 技術だけではない、狭まる視点を持たない。
  • ロジカルでエモーショナルなバランスが必要。
  • 個人の得意不得意領域は必ずある。まずは一つづつの完璧を。

 

昨今、ネットや本など様々な媒体でもささやかれているように、デザイナーであるべき姿は、手だけを動かすような色や形の具現化を作業的にするだけではないと言える。

 

上記だけではなく、担当領域によってはもっと多くのことを求められていると思けど、デザイナーに担当領域とそのスキルセットを等級的に段階を踏んでもらい、フォローアップしていくことでモチベーションが保たれるようにしていく。

 

セミナーの感想

今の自分の組織にピタリとハマるフレームは当然のごとくありませんでした。

 

しかし、マネジメント経験が豊富な登壇者の方々のお話は三者(社)三様でありながらも共通した部分も多く、それぞれの組織で取り組んでいる細いことや大まかな工夫・失敗談を掻い摘んでつなぎ合わすことで、自社でも改善できる希望が見えました。

 

皆が共通認識を持ち、楽しく成長していけるカルチャーを作ること。

 

さらに自分でも感じていたこと・実行していたことを再認識できたこと。

 

試行錯誤することを怠らず、トライアンドエラーを繰り返すことで、広範囲から組織をデザインし、デザイナーや経営層と引きも切らず接していくことで、デザイナーファーストな組織へと成長するのではとまとまった。




 

ユーザーに行動を促す『ザ・マイクロコピー Webコピーライティングの新常識』




 

昨年、SNS上でお世話になっているWebディレクターの方が紹介していたザ・マイクロコピーという本を読んでみて、サイト制作の参考になった。

 

文字伝達情報である「コピー」は、様々な広告やWebサイト上に見られるけど、「マイクロコピー」とはどの部分にあたるのか。

 

マイクロコピーは、主にアプリやWebサイト内のボタン上やボタン付近といったCTAまわり、入力フォーム内などにあるユーザーに重要な行動を促すための少ない文字。

 

この本は、サイトのコンバージョンに左右するそういった細部のコピーライティングのノウハウを、数々のマイクロコピーの実践・ABテストをおこなって結果を出してきた著者の株式会社オレコンの山本琢磨氏が、豊富な事例と多くの図版を使用し、やさしく専門的に紹介している。


Webコピーライティングの新常識 ザ・マイクロコピー

 

たった数文字にユーザーのコンテキストを考える。

一時期、ランディングページ制作においてコンバージョンポイント、コンバージョンエリアなどと呼ばれているエリアのデザインを研究していた時は、ボタンの大きさ、色や形、ボタンまわりの装飾や出現のタイミングといったことばかりに気をとられていました。

 

ユーザーの不安、懸念、疑問、迷いを払ってあげる、ちょっとした文章をCTAに添える、もしくはリライトすることでユーザーの行動は劇的に変わる。

 

コストがかかるデザイン変更や、HTML再構築といった改善実装の前に、ユーザーの前後関係、状況を見直した、たった数文字のリライトや文言追加で結果が変わるのがマイクロコピーの特徴だと思った。

 

マイクロコピーの力が発揮できるのはCTAまわりだけではない。

商品注文、問い合わせ、会員獲得といったところだけではなく、メニューやナビゲーション、ローディング画面、メール内などにも、その状況において適切な”思いやりの語りかけ”が有効。

 

わかりやすかったのが404ページのカスタム。404ページは、ユーザーが目的のページにたどり着けなかった際に「お探しのページは見つかりませんでした」と表示される、あの残念なイメージのページ。

 

ページが見つからないことを伝えるという常識的なことだけではなく、コンテンツにたどり着けなかったユーザーに対し、そこで行き止まりにさせないようにトップページリンク、サイト内検索、商品一覧といった道を作り、そしてモチベーションダウンさせない協力的な姿勢を示したコピーでインタラクションにつなげる。

 

上記のように、直帰率を下げるために404ページに工夫をこらすSEOテクニックが存在しますが、ここでの手法がマイクロコピーとの結びつきが強いことが証明されていた。

 

細部までこだわってナンボ。
何かしらの結果を出すUIとして機能しなければならないWebサイトの制作者に大変おすすめ。




 

仕組みがわかりやすい『入門 ビットコインとブロックチェーン』




 

仮想通貨、ビットコイン、そしてブロックチェーン。

 

数年前からこれらのワードを目にして折々ネットで調べてはいたけど、この分野の書籍はちゃんと読んだことがなかった。

 

入門書として、広く・わかりやすく・素早く知識が得られる本書を読んでみました。

 

入門 ビットコインとブロックチェーン (PHPビジネス新書)

 

  • ビットコインとは?
  • ビットコインはどうやって持つ?
  • どのように運営されている?
  • 電子マネーと何が違う?
  • 仮想通貨は安全なのか?
  • 仮想通貨とセットでよく聞くブロックチェーンとは?
  • ブロックチェーンはなぜ改ざんされないのか?

 

以上のような、最近この分野に関心を持った人が気になるテーマが、各事項Q&A方式でやさしくわかりやすく端的にまとめられており、この分野の基本を明快に押さえることができます。

 

ビットコインを代表的な事例に、仮想通貨やブロックチェーンの基本的な概念・仕組みが体系的に学べるだけでなく、今後それらが作り出す新しい世の中への課題と希望も解説されています。

 

仮想通貨、ブロックチェーンの基礎知識、後半はフィンテック、シェアリングエコノミー、予測市場、さらにスマートコントラクトやDAOといった未来の社会についても触れており、やさしくわかりやすくまとめられているとはいえ、新たな経済、働き方、生活の世界へ、すでに突入していることに気づかされます。

 

当初は仮想通貨に一番の関心があって読みやすそうな本書を手に取りましたが、着目すべきは仮想通貨の投資・投機ではなく、画期的な送金手段である仮想通貨の基幹技術そのもの「ブロックチェーン」なのだと、読了後に認識できたことが大の収穫でした。

 

読了後、とても良い意味で物足りなさを感じたので、入門書としてぴったりでした。

 

もう少しこの分野の知見を広げ、まずは仮想通貨を体験してみて、ブロックチェーンの内部まで触ってみたいと思いはじめました。




 

未経験Webデザイナーが教えてくれた『図解 モチベーション大百科』




 

去年入社したばかりの新卒Webデザイナーの女の子から借りてきた本。

 

約一年前の入社当初は、業務向上のために率先して本を読む子ではなかったのだが、彼女が未経験からWebデザイナーになって自主的に自分で選んで買って読んだ記念すべき一冊目。

 

タイトルを見せてもらった時に、

「まさか、僕のせいでモチベーションが下がっているのか!?」

と焦ったのだが、モロな自己啓発系の本というよりは、行動経済学と認知心理学の観点からあらゆるビジネスシーンをモチベーションというテーマに沿ってフォーカスした実用書でした。

 

とにかく読みやすい

本文は黄と紺の二色刷りで、堅苦しくない文章表現。

 

Web制作業界でも人気があるダン・アリエリー、ダニエル・カーネマン、ダニエル・ピンクといった学者・研究者の著書に書かれている実験結果を抜粋し、図解と、端的な結論と、編著者の説得色のある解釈が要約されている構成。

 

他人や自分に関聯する感情のメカニズムを1〜2ページづつ断片的に簡略にまとめてあるので、読み進めていく上でモチベーションが下がらぬままスラスラ読めてしまう。

 

てっとり早く理解しやすい内容なので、ハンドブックとして持ち歩きたいと思いました。

 

いろいろな場面で役に立つ

モチベーションというと、やる気や動機といった、人が行動を起こすために必要な原動力みたいなことが思い浮かびますが、もっと深く解釈すると、そこには大小様々な問題解決のための予防策やスムーズな対処にも発揮するのだと思いました。

 

そして、ビジネスシーンにおいての自分が関わる様々なこと。

「上司や部下とのコミュニケーション」、「顧客との交渉」、「捗らない会議の場面」、「チームビルディング」、「リーダーシップ」、「アイデア・発想法」、そして「自己管理」。

さらに、Webデザイナーにとって強みとなるであろう人間の行動パターンの知見も得られます。

 

本書の章立て

【CAPTER1】
動機づけのモデルケース

【CAPTER2】
人材育成のモデルケース

【CAPTER3】
目標設定のモデルケース

【CAPTER4】
意思決定のモデルケース

【CAPTER5】
人脈作りのモデルケース

【CAPTER6】
自己管理のモデルケース

【CAPTER7】
発想転換のモデルケース

 

図解 モチベーション大百科

 

感想・まとめ

Web制作、Webデザインの仕事をしていると、人によっては行動経済学や認知化学、認知心理学などに行き着きます。

 

今期、彼女にはコーディングやデザインなどの技術面やセンスを磨いてもらいつつ、Web制作のエッセンス、マーケティングやUXデザインの必要性、プロジェクト意識、チーム行動の重要性などを経験してきた中で選んだ一冊として納得しました。

 

行動経済学や心理学系の専門書は難しかったりするけど(もちろん読みやすい本もある)、巻末で紹介している有用な参考文献も多いし、この分野への興味をより高め、深掘りしていく入門書としての役割も持ちます。

 

僕は前述の行動経済学者の著書は大体読んでいますが、だいぶ昔にインプットしたきり記憶が薄れていることに気づき、今一度再読して、今後はアレンジとアウトプットをしていこうと思いました。




 

Webディレクターが読んだ2017年に出版された本




 

本は年間に何十冊も何百冊も読んではいませんが、Webディレクターという職業柄のせいか、ディレクション、UX関連、デザイン、ライティング、チューニング、コミュニケーション、思考法など、気づいたら多岐にわたるジャンルの本に手をとりました。

 

その中から、今年2017年に出版され、読んでみた本をまとめてみました(順不同)。

 

Webディレクターが読んだ2017年出版された本

 


Webディレクションの新・標準ルール 現場の効率をアップする最新ワークフローとマネジメント

デザイナ同様、数年前に比べてWebディレクターの守備範囲が広がったように思えます。

しかし、もっとも心がけるエッセンスは昔から依然変わっていないようです。

重要なのはマネジメントとコミュニケーション。

この本ではWebディレクターが担うべき最新の標準ルールを知ることができ、もちろん基本的なことを知ることができます。

これからWebディレクターを志す人や、最近の動向を確かめる理由ですでにWebディレクターをやっている人が読んでも有用。

 

 


デザインの次に来るもの

日本でも話題になった「デザイン思考」以外の考え「意味のイノベーション」の価値が紹介されています。

また、デザインの黎明期から、ヨーロッパを中心に近年のデザイン・デザイナーの定義についても触れており、ビジネスにおいてデザイン・デザイナーの重要性を知ることができます。

 

 


Webフロントエンド ハイパフォーマンス チューニング

ディレクターになってから技術書を購入することはめっきり減りましたが、それでもWeb制作に携わる人間としてはWebサイトのパフォーマンス向上の知識を持ち合わすことは大事。

計測ツールの使用方法、JS、CSSのチューニングテクニックなど、Webサイトを幅広く網羅されている。

 

 


逆説のスタートアップ思考 (中公新書ラクレ 578)

スタートアップの正しい解説に始まり、その本質が「逆説」や「反直観的」という言葉の中に隠されています。

ベンチャーと混同している人にとっても、スタートアップの正しい解説から始まるので、起業家でない人でも、著者が主張する素晴らしいスタートアップ思考への理解が深まると思います。

また、UXの考え方に近い、CS(カスタマーサクセス)の重要性についても言及されています。

 

 


発想法 改版 – 創造性開発のために (中公新書)

ブレストなどによって導き出された多くの発想を整序して、問題解決に結びつけていくための手法、KJ法の本。

KJ法は、文化人類学者であり、著者の川喜田二郎のイニシャルから取られた世界中で活用されている。

新版ではないが、続・発想法にも続く。

 

 


未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

今、世界中が注目している日本の少子高齢化問題。

仕事上での提案やアイデア発想のネタ探しとして購入して読んだものの、あまりの深刻な状況に絶句した。

「自分も日本のためになにかをしなければならない」という気持ちのさせられた。

 

 


大人の語彙力ノート 誰からも「できる! 」と思われる

 

 


仕事で必要な「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか?

 

 


スタンフォード式 最高の睡眠

 

 


MBA100の基本

 

 


MBA生産性をあげる100の基本

 

番外編:Webディレクターが読んだ2016年後半〜に出版された本

今年2017年に読んだ本で、よく見たら2016年に出版されていた本です。

 

 


デザインの伝え方

 

 


ストーリーマッピングをはじめよう

 

 


人工知能―――機械といかに向き合うか (Harvard Business Review)

 

『矩形の森 思考するグリッド』創造の可能性を秘めた土台作り。




 

どんな媒体のデザインにおいても欠かせないグリッドレイアウト。

 

きちんと整列された格子柄のフィールド上でレイアウトを施し、ユーザーにとって理解しやすく最適に情報を整理する。

 

Webデザインの現場では、CSSで組むグリッドレイアウト(グリッドシステム)という構築方法が言葉としては馴染み深いと思いますが、正確にはグリッド自体はラフやプロトタイピングといった設計フェーズから用いられています。

 

コンテンツの優先順位や導線を意識した画面設計の場面において、ブロックごとのカラム分けを大雑把にペンで線引きをしたらそれはもうグリッドなのです。

 

そういえば、CSSを学び良い気になってたWebデザイナーだった頃から、グリッド自体について深く意識をしたことはなかった。

 

会社帰りに神保町にある建築や数学の書物が充実している古本屋さん明倫館書店に立ち寄った際に買った書物『矩形の森 思考するグリッド』がとても面白かったです。

 

矩形の森 思考するグリッド

 

94年に埼玉県立近代美術館で開催された展覧会『矩形の森 思考するグリッド』の図録です。

 

グリッドは先述の通り、Webやグラフィックなどのデザイン、建築デザインの現場でも多用されており、平面・立体関わらず昔からモノを作る時の拠り所としてきた主な構成方法。

 

また、アートの分野でも近代美術以降、ディ スティルやミニマリズムでも使用されてきました。

 

この展覧会・図録ではグリッドの変遷については特に取り上げらていなく、多角的な視点でグリッドを見つめています。

 

当時展示されていた、パウル・クレー、ディ スティル、アンディ・ウォーホル、草間彌生など国内外の23作家の作品が紹介されており、それらの作品は、

 

<分割と展開>

<連続と集積>

<ずれと気配>

<構造と意味>

 

の4つの章で分類され、各視点にて多様な姿で表現されたグリッドによる構築物の作品を楽しむことができます。

 

グリッドは様々な創造の立脚点にしやすいが、あくまで立脚点にすぎない。要求されているのは、そこから創造を、独自性を立ち上げることである。

グリッドという普遍的な構造を見据え、用いながらも、真の創造と独自の表現を立ち上げる。

これが、普遍と個の関わりを生み、魅力ある世界の開示をもたらすのである。

引用:埼玉県立近代美術館学芸員

 

グリッドとは、独自の価値をもたらす創造の可能性を秘めた土台作り。

 

ワイヤー作成、プロトタイピング、コーディング時のように素早く線引きしている現場環境で、今後そのことを思い出し、意識できればいいのですが・・・。




 

『逆説のスタートアップ思考』から学ぶ




 

タイトルから見てとれるようにスタートアップに関する本ですが、そのスタートアップの本質が「逆説」や「反直観的」という言葉の中に隠されています。

 

ベンチャーと混同している人にとっても、スタートアップの正しい解説から始まるので、起業家でない人でも、著者が主張する素晴らしい思考へと読み進めやすいと思います。

 

実際、起業をする予定がないWeb制作畑の僕も読んで良かったと思いましたし、知り合いのマーケターも絶賛していました。

 

スタートアップの成功に必要な様々な要素の中で、本書は「アイデア」「戦略」「プロダクト」の3つに焦点を当てており、3章の「プロダクト」で、個人的に共感する考え方が紹介されていました。

 

逆説や異端という言葉は音楽や漫画が好きだった学生時代の頃から意識しており、大勢が熱中している既に世にありふれたモノやコトには興味が湧かなく、ニッチでマニアックでマイノリティなアンダーグラウンドなモノ・コトの方が新鮮でオリジナリティがあり面白さを感じ、さらにそれらが徐々に大衆に広まっていき、メジャーになっていく様を見て優越感に浸っていた性格の悪い時期がありました。

 

3章の「プロダクト」では、多数の「好き」より少数の「愛」を。という扉で始まり、スタートアップではスケールしないことを勧めています。

 

規模を拡大せず、未成熟でも製品・サービスをローンチしてしまい、創業者や開発者たち自ら早期の段階で検証に入り、大切な注意点を発見し、ブラッシュアップする。

 

そして、ある意味で共感者・ファンとも言える初期の少数ユーザー・カスタマーとも近い距離で接することができ、企業と製品・サービスに対する信頼の獲得と絆を深めることができる。

 

やがて少数のユーザー・カスタマーはエバンジェリスト(支持者)となり、美しい波紋状の広がりを見せる可能性があると思いました。

 

ではニッチなモノを作ればいいのか?というわけでもありません。

 

スタートアップにアイデアは重要な出発点となりますが、そのアイデアは「考え出す」のではなく「気づく」ものだと説いています。

 

これはスタートアップ思考に限らず、モノ・コトを作ることに関わる全ての人にとっても大事なことだと感じました。

 

序文で、「この考え方は企業全般に当てはまるものではありません」という注意が書いてありますが、この逆説のスタートアップ思考の知識・考え方は、様々なことに応用できることだと読み進めるうちに気づきました。

 

就職活動前の新卒者、起業家のみならず、全てのビジネスパーソンにオススメの本。

 

また、文中でも紹介されていましたが、著者の馬田隆明氏はスライドも公開しており、こちらも必見です。

 

 




 

『デザインの次に来るもの』とは




 

年末になってやっと今年(2017年)発売された書籍のことを書きます。

 

デザイナーとは、色やカタチを成形する人なのか。

デザイナーとは、問題を解決する人なのか。

 

といったジレンマに陥る昨今、ビジネスにおけるデザイン・デザイナーの定義は広くなっており、その重要性は日本の多くの中小企業に浸透しきれていないのが現状(ネタバラしすると、それは我が国だけの問題ではない)。

 

さらに僕のまわりではデザイナー達が自身自分の肩書きの意味に解釈の違いがあり、自分の守備範囲はどこまでなのか?と戸惑っている様子も見受けられます。

 

デザインとは?デザイナーとは?というような本は時代々々で出版されてきましたが、この本は近年のビジネスにおけるデザイン・デザイナーの状況がまとめられており、そこには当然のごとくデザイン思考の話も出てきます。

 

その日本でも注目されてきているデザイン思考は果たして万能なフレームワークなのでしょうか。

 

UCD(人間中心設計)が包括するデザイン思考が機能しにくい条件を踏まえ、ミラノ工科大学のロベルト・ベルガンティ教授の著書『デザイン・ドリブン・イノベーション』で提唱された概念であり、デザイン思考とは対をなすデザイン戦略「意味のイノベーション」という価値の詳しい解説がされています。

 

当初、デザイン思考以外でのデザインマネジメントに興味が湧きこの本を読んでみたのですが、先述したように近年のデザインの状況・デザイナーの動向や、なおかつ、アーツ・アンド・クラフツ運動、ドイツ工作連盟、バウハウスといったデザインの歴史・変遷にも触れているので、やはりデザイン・デザイナー自体の力に興味があり、デザインのことを知りたいと思っている中小企業の起業家・経営者といったビジネスパーソンに向けかと思います。

 

もちろん、ビジネスやイノベーションと、デザインをすでに横並びに考えている人たちにも有用な内容ですし、違った視点でレビューすると下記のこんな人たちにオススメです。

 

  • 一応なんとかデザイナーだけどデザイン・デザイナーのことを深く知りたい人。
  • デザイン思考ってどうなの?と思っている人。
  • Webディレクター(僕)。

 

最終章では著者の一人、 八重樫文氏がこの本のタイトル「デザインの次に来るもの」に対しての説明で幕を閉じていますが、そこにはデザイン云々、企業人として当たり前に持つべき視点が込められていて深くうなずきました。

 

余談ですが、うちに会社見学にくる若いデザイン専門学校生に、バウハウスやデザイン思考のことを聞いても知らない人たちばかりで毎回ビックリしています。

 

デザイン専門学校では、センスの磨き方とかツールの使い方といった小手先のテクニックしか教えていないのでしょうか。