人間やAIではなく神の領域なのか?『ソーシャルメディアの“掃除屋”たち』




 

先日NHKのBS1で、2夜連続放送された「BS世界のドキュメンタリー ソーシャルメディアの“掃除屋”たち 前編/後編」というドキュメンタリーを見て驚愕しました。

 

僕は日頃フェイスブックも含め複数のSNSを楽しんでいますが、たまに不愉快だったり際どい内容の投稿を見かけるときがあります。

 

それはフェイスブックではありませんが、別のSNSでは明らかに破廉恥で露骨な動画や画像、国外の暴力的ないじめの動画や画像などがそれにあたります。

 

そういった投稿は長続きせずに突然削除されたり、アカウント自体が凍結されたり、そもそも投稿がアップされる前にディープラーニングの経験を積んだ優秀なAIが自動で排除してフィルタリングしているのかと思っていました。

 

しかし、それをフィルタリングしていたのは実は人間だったのです。

 

フェイスブック社がフィリピンのマニラに置くクリーナーズという会社で働く現地のエリート学生たち。彼(女)らの作業は、世界中のユーザーが投稿する画像や動画を「秒単位」でチェックし、わいせつ・残酷な投稿を除外していく作業。

 

毎日のように、「秒単位」でそのような画像や動画やテキストを目の当たりにし、次第に精神がおかしくなる社員たち。

 

問題はそれだけではなかった。




 

「人間の裸」による表現はアダルト。でも人によってはそれはアート。価値観の違いから招く問題など。

 

こういった判断は、人間にもAIにも難しいことのように思います。もはや神の領域なのか。

 

発信者(表現者)も管理者(除外者)もアマチュアが大半を占めるUGCのもろさとリスクを暴き出してゆくNHKも参加した国際共同制作番組。

 

SNSを巡るトラブルは日夜耳にしてきましたが、こういった実情も抱えていることを初めて知りました。

 

ソーシャルメディアの“掃除屋”たち 前編

フェイスブック社のコンテンツから“社会的に不適切”なものを排除する“掃除屋=クリーナーズ”。検閲作業の実態をスクープ取材、ソーシャルメディアが抱えるリスクを探る。

 

ソーシャルメディアの“掃除屋”たち 後編

ソーシャルメディアの検閲作業の実態に初めて迫ったスクープ番組。後編は、精神を病んでいく“クリーナーズ”の横顔や、“表現”をめぐって世界各国で高まる論争にフォーカス。




『未来の年表2 人口減少日本でこれから起きること』感想




 

昨年(2017)、Webディレクターが読んだ2017年に出版された本という記事でも簡潔に紹介しましたが、講談社現代新書から出版された『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』を読んで、かなり衝撃を受けました。

 

前書は、Amazonでベストセラー1位になっていたこともあり、さらに仕事上での提案やアイデア発想のネタ探しとして軽い気持ちで購入。たしかにネタの宝庫で、実際にここに書かれていることをヒントに提案したこともあります。

 

しかしながら、ビジネスにつなげるための良いネタ本であると同時に、あまりの日本の深刻な状況に絶句もしました。そんな記憶がまだ新しく感じる中、続編の『未来の年表2 人口減少日本でこれから起きること』が出版されたと聞いて購入。

 

前書ををあらためて再読し、続編に挑む。

 

前書『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』

まずは、前書の説明。

 

社人研(国立社会保証・人口問題研究所)の調査報告などを中心に多くの確証あるデータに基づき、未来の日本で起こりうる出来事が第1部では記されており、後半の第2部では、著者の河合雅司氏による10つの対策案が講じられている。

 

人口減少にまつわる日々の変化というのは、極めてわずかである。「昨日と今日の変化を指摘しろ」と言われても答えを窮する。〜〜省略〜〜ゆっくりとであるが、真綿で首を絞められるように、確実に日本国民1人ひとりの暮らしが蝕まれてゆく。出版:講談社現代新書 著:河合雅司『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』P10〜11から一部引用

 

上記の引用文のように、第1部、第2部を通して河合雅司氏は、「静かなる有事」という言葉を使い、現状と将来を危ぶみながら、これから起きること、しなくてはならないことを説明しています。

 

ちなみに、現在世界中が注目している日本の少子高齢化問題に関しては、昨年のシルバー・イノベーションはデザイナーの吉祥性が鍵という記事で触れていたのを思い出し、久しぶりに読み返してみて、なんて楽観的な記事だったんだと前書を読み終えたあとに思いました。


未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

 

直面してからでは遅い「静かなる有事」

自分が住むマンモス集合住宅はまさに小さくした日本の姿だと最近感じました。

 

今の集合住宅に引っ越してからは、確かにご高齢の方は多い印象はあったものの、それなりに子どもたちの声も聞こえるし、僕と同世代のお父さんお母さんの姿も見受けられる。

 

しかし、これこそが「静かなる有事」なのでした。

 

今年から組合の役員となって、理事会における最年少はおそらく40代の僕。今までこの集合住宅を守ってきた建築関係、植栽関係、デザインや出版関係などの専門的な居住者の方たちは高齢化が進み、若い人たちへの引き継ぎが難しくなっいます。

 

これと同じように、今の日本において気づいたら手遅れにならないように、個人の周りでこれから起きること、できることを、より多くの人々が認識するべきです。




 

個人でできることを知る『未来の年表2』

前書は、俯瞰的に少子高齢化問題・人口減少問題に対して言及しており、また、政府や自治体などの機関・団体へ向けて取り組むべき対策が記されてあったのに対し、今回の『未来年表2』では家族や自分自身など、これから身の回りに起きるミクロな視点で迫る事態が描かれているので、前書よりもいっそう国民一人ひとりの危機感の意識が高くなるのではないかと思います。

 

  • やる気のない万年ヒラ社員が続出
  • 食卓から野菜が消える
  • 刑務所が介護施設と化す
  • 東京の路線が縮み、会議に遅刻する
  • 中小企業が黒字でも倒産

 

上記は『未来の年表2』に書かれている危機のほんの一例ですが、手遅れの時にはこのような事態になっていることが予想されており、前書同様、対策案が「今からあなたにできること」として個人の目線で8つ講じられています。


未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)

 

企業人として。個人として。

「企業人として。個人として。」一人の自分に対し、仕事とプライベートの二極化した表現はあまりしたくないのですが、ここはあえて『未来の年表』『未来の年表2』に倣っていろいろと考えてみました。

 

まず、近年、デザイン会社、Web制作会社などの実績を眺めていると、年々と地方再生などのプロジェクトの実績が以前よりも多く見受けられるようになったと感じます。

 

こういった案件はやり甲斐もあるだろうし、そこに着目し、企業の実績として今からとことん実績を重ねておくのも将来的に強みとなる。

 

また、『未来の年表2』の第2部、今からできる8つのメニューの2項目、「1人で2つ以上の仕事をこなす」に関して、副業やパラレルキャリアについて触れています。

 

自分が現在の定年歳となり、その時に今の若い人たちと共存していくためにも(迷惑をかけないためにも)、幾つになってもより多くの刺激ある経験を踏んでいきたい。

 

最後に

今後『未来の年表3』も出版されそうな気もしますが、まずは前編と後編の『未来の年表2』は自分たちのためにも読んでおいた方がいいと思います。久しぶりに会社の人間だけでなく、家族にも勧めた本となりました。

 




究極やさしい入門本『スラスラ読める JavaScript ふりがなプログラミング』




 

ディレクターがJavaScriptを基礎から学びなおす

組織の都合もあるけど、Web制作を俯瞰的に見れるよう自分のキャリアアップのためにもディレクターへシフトしたものの、Webデザイナー時代にもっと経験を積んでおけばよかったと今でも思うプログラミングスキル「JavaScript」。

 

考え方は人それぞれ違うかもしれませんが、僕の場合Web制作の仕事をしていくうえでディレクターになった今でも時折JavaScriptをマスターしたいという衝動にかられます。

 

以前、オライリージャパンから出版された『デザインの伝え方』の著者が、プライベートの時間に本業のデザインから離れクラシックカーのリペアをしているのを読んで、僕もこの夏、なにかを本業とは別の分野の研究や学習をし直そうと思っていました。

 

『デザインの伝え方』の著者Tom Greeverは、クラシックカーを弄り通して、当時のエンジニアから多くのことを楽しみながら学び、本業へフィードバックしており、クリエイティブな仕事をしている身としてこのライフスタイルに共感しました。

 

本業のWeb制作に活かせるかはわかりませんが、普段にらめっこしているパソコンやスマホから離れ、別の分野に没頭するために、はんだごてとニッパーでも買って鉱石ラジオをスクラッチ開発してみようかと思った矢先、ふらり立ち寄った本屋で面だしされていた、ある一冊の本のタイトルが目に止まりました。

 

スラスラ読める JavaScript ふりがなプログラミング

というわけで、ディレクター職がメインの僕はJavaScript(以下、JS)初心者レベルなのですが、本屋さんで『スラスラ読める JavaScript ふりがなプログラミング』という本を見かけて立ち読みしたとき、「この本なら今度は挫折しなそう」という気がして久しぶりに衝動買い。


スラスラ読める JavaScript ふりがなプログラミング (ふりがなプログラミングシリーズ)

 

別に他分野にこだわらなくても同じWeb制作の分野で身近に関わっているコーダーやフロントエンジニアのスキルの一環を学ぶのも必ず本業に役に立つ。

 

さらに、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されることが明示されたことにより、自分の子どもの勉強を見てあげられるのでは?

 

と、自分に言い聞かせ、鉱石ラジオのスクラッチ開発は来年の夏休みに先送りにし、再びパソコンの画面に戻ってきました。

 

著者はリブロワークスさんで、監修は、ネット上でもフォローさせていただいているGoogleやMicrosoftを渡り歩いた日本を代表するエンジニアの及川卓也さん。

 

終始ふりがながふってあることでソースの意味を理解。

過去にもこのような教材があったのか知りませんが、この本はタイトルの通り、本書内にある全てのサンプルプログラミングのソースコードに、もれなく「ふりがな(ルビ)」がふってあるのが最大の特徴。

 

最終章まで繰り返し付きまとう「ふりがな(ルビ)」のおかげで、覚えが悪い初心者の僕でも本書をもとに学習し終わった頃には演算子、関数、変数、式の書き方や基本的なルールなどを頭に叩き込むことができました。

 

読み下し文によってさらに理解への補完に。

変数、演算子などの単語ひとつひとつに細かくふりがながふってありますが、英単語の様に、ふりがな部分だけを繋げて読んでも日本語の文法としてはおかしい状態です。

 

よって、ふりがながふってあるサンプルのプログラムの下には、「読み下し文」も記載されていて、プログラミングコードの式の理解をさらに深めることができます。

 

今思えば、もしこの読み下し文が無くふりがなだけだったら理解し難かったと思います。

 

ソースコードのサンプルをダウンロード。

1章〜5章までに本書内で出てくるサンプルのプログラムコードがダウンロードできます。

 

最初にダウンロードしたものの、僕は2ヶ月間ゆっくり時間をかけてこの本で実習したので、結局最後まで使うことはありませんでした。

 

ですが、時間が無い中どうしても記載通りに書いてるのにプログラムが動かない/エラーになる、または、4章(Chapter4)までは、テキストエディタに書いたプログラムをGoogle Chromeのコンソールを利用して動作確認をするのですが、最終章の5章(Chapter5)では、実際にHTMLファイルを作成して動かすので、うまくいかない時に差分用としてあると便利です。

 

JavaScript ふりがなプログラミングを読んで

実際のプログラムの書き方の前に、1章ではJavaScriptとはどんなものかの話から始まります。

 

JSのバージョンであるES5とES6の説明もあり、基本的に今後移行しつつあるES6に基づいて章が続きますが、ES6では対応できない書き方についても別の章で解説されています。

 

また、本書の読み進め方とJSを書くとための準備として、Web屋にお馴染みにChromeデベロッパーツールのコンソールと、テキストエディタ(Atom)を推奨していますが、僕の場合、動作を確認するためのコンソールはChromeを使いましたが、エディタは日頃から慣れ親しんでいるAdobeのBraketsを使用しました。ここら辺は使い慣れたツールでいいと思います。

 

どの章にも後半にエラーメッセージの読み解き方が紹介されており、制作実務でバグっているときに、社内の新米Webデザイナーとデベロッパーツールをにらめっこしてても理解できないことがあり、いちいちベテランに来てもらってたこともあったので、これは僕にとって良い勉強材料になりました。

 

1章の中盤、実践学習からは、いよいよ文字列の表示の書き方から始まり、その後、演算子を使って簡単な計算(四測計算)の書き方に進みます。

 

「またか」と思いました。

 

JSの個人的なイメージとして、ひと昔前は入力フォームの様にユーザーに何かを入力してもらった結果を素っ気なく表示したりといった印象でしたが、最近だとスライドショー、モーダルウィンドウ、その他スクロールエフェクトなどの華やかな動きの役割を担うプログラムの印象が強いので、以前学んだときも足し算掛け算などのこういった地味な計算から学ぶのが非常に退屈だった記憶があります。

 

しかし、「+」「-」「×」「÷」といっ演算子の使いこなしが今後重要になることを理解してきて考え方が変わりました。以前購入した技術書やネットスクールで学習をしていた頃は、この地味な計算式から覚えなければならない退屈感から挫折した記憶があるのですが、本書は2名のキャラクターイラストがストーリーを展開しており、図版や優しい色使いのせいか、緊張感なく基礎の大切さが伝わりました。

 

ちなみに、最初はエディタの入力保管機能は使わず、慣れるまで直打ちの繰り返しを徹しました。そのおかげで各章の最後のドリル問題にて、自然にコードが打てるようになりました。

 

やっぱり、何かを覚える時には書く(打つ)って大事だと思います。

 

初心者とはいえ、for文の条件分岐、while文などのループ、配列のarrayなどは、WordPressのPHPをいじっていた経験もあり比較的に理解しやすかったけど、やっぱりエッセンスというか、基本を理解していなかったので、この本でJSやプログラムの原理が学べて充実した夏の自由研究を終えました。

 

当然この本は、僕の様なディレクターではなく、これからJavaScriptを学ぶWebデザイナー、フロントエンドエンジニアの初学者におすすめです。

 

誤植について

JS初心者の僕が読み進めていると、どうしても理解できない部分があり、調べて見たら数ページに誤植があることに気づきました。

版元のインプレスブックスのサイトから確認できるので、つまずく前に確認することをおすすめします。

インプレスブックス紹介ページ
https://book.impress.co.jp/books/1117101139

 

今回紹介したJavaScriptの姉妹本で、Python版も出ていました。


スラスラ読める Pythonふりがなプログラミング (ふりがなプログラミングシリーズ)

 

番外編:ディレクターにJavaScriptの知識は必要か?

「ディレクターはコーティングしてはいけない」という言葉を耳にすることがあるけど、その通りだと思います。

 

ディレクターの仕事は、あくまで「なるべくプロジェクトを円滑に完遂することが基本」なので役割として不当に思うし、そもそも複数のプロジェクトの舵取りの片手間にコーディングをやる暇がない。

 

一人でWeb制作の1から10を担った経験がある人なら尚更わかると思うけど、それはかなり荷が勝つことです。

 

しかし、JSに限らずPHP、HTML、CSSの知識はディレクターといえども持っていて不都合は当然ないどころか役に立ちます。理由は以下の2つ。




 

クライアントの前ではっきり可否

上流工程のクライアントとの会議において、目前のクライアントは遠慮なく技術的な質問をしてきます。

 

ディレクターだろうが、デザイナーだろうが、コーダーだろうが、なんだか知らないけどクライアントにとっては目の前にいる人間はWeb制作者に見えています。

 

PHPなどのバックエンドプログラムにもいえることですが、オリエンの時点でアサインするメンバーはほぼ決めているので、費用感や技術レベルを会議の場である程度は把握していますが、あまりに複雑で多くのパターンを要する条件分岐の要望があった際に、「この予算でこの仕様は可能か?」との質問にその場で答えられないことが多々ありました。

 

「多分大丈夫です」「宿題にします」「勉強します」とその場を切り抜けたり、その場で直接エンジニアに電話や、こっそりSlackなどで聞いたりすることもありますが、やはり即答できてミーティングを円滑に進められることが望ましいと思います。

 

プログラム上のトラブルの早期対応

納品後にプログラム上のなにかしらのトラブルが発見された時に、協力会社のコーダーにいちいち時間を作ってもらうより、その場で自分で解決策をみつけたほうがよほど早い場面もあります。

 

ただ気をつけなければならないのは、自分で直せるからといって毎回自分で作業しないこと。

 

矛盾しているかに思えますが、ディレクターには他にやらなければならない優先事項が多々あるのでタスク優先度としては低い。あくまで緊急時。エラーの原因の究明まで終えルことができたら、あとは極力エンジニアに任せた方が良い。

 

そういった意味では、前述の通り本書に書いてあるエラーの読み解き方はとても参考になります。

 

なにはともあれ、この本は社内のデザイナー達に共有しようと決めるくらいJavaScriptの入門書として良書です。




さくらレンタルサーバーで特定のIPアドレスからのアクセスをブロックする方法




 

先日、さくらインターネットのサーバーで特定のIPアドレスからのアクセスを制限した時の事例を備忘録。

 

この記事を読んでいる人は早期的に解決を望んでいると思いますので、特定IPアドレスをブロックすることになった経緯は後述するとして、とりあえず最低限の状況と条件、さくらのレンタルサーバーでのブロックの簡単な方法を足早に書いていきます。

 

条件

  • 制限対象のグローバルIPアドレスのナンバーがわかっている。
  • さくらインターネットのレンタルサーバーを利用(ちなみにビジネスプラン)。

 

事象

  • 全ての環境からWebサイトが閲覧できない。
  • もしくは、一部の環境のみWebサイトが閲覧できない。

 

さくらのファイルマネージャーから制御する

さくらインターネットのカスタマーサポートの対応はメールでも電話でもとても親切ですが、さすがにすぐには対応してくれるのは難しい。なぜなら、このようなトラブルみ見舞われている人の対応が多すぎるから。電話はすぐつながればラッキーだし、メールも問い合わせた直後に返信がくるわけではありません。

 

なので、手っ取り早くさくらインターネットのファイルマネージャーを利用して自分でアクセス制限をします。

 

※注意:ファイルマネージャー作業とはいえ.htaccessに記述されたりするので、復元できるようデータのバックアップを取っておくことを推奨します。




 

さくらのコントロールパネルにアクセス

まず、さくらインターネットサーバコントロールパネルにアクセスします。
https://secure.sakura.ad.jp/rscontrol/

 

ドメイン名とパスワードを入力し「送信する」をクリックしてログイン。

 

さくらコントロールパネルにログイン

 

左側のメニューの上から5番目「サイトに関する設定」の中の「ファイルマネージャー」をクリック。

 

ファイルマネージャー」をクリック。

 

別ウィンドウが開き、ファイルマネージャが開きます。

 

ファイルマネージャの画面

 

home/初期ドメイン/wwwのディレクトリのまま、画面上部のメニューバーの左から3番目「表示アドレスへの操作」をクリックするとプルダウンメニューが開き、「アクセス設定」をクリック。

 

「アクセス設定」をクリック。

 

ポップアップウィンドウが開くので、タブ中央の「接続元アクセス制限」を選択し、下部の「拒否するアクセスのリスト」内の「+追加」をクリック。

 

ポップアップウィンドウ

 

左側のプルダウンメニューがデフォルトの「IPアドレス」になっているのを確認し、右側の入力欄にアクセスブロックしたいIPアドレスを入力。さらにブロックしたいIPアドレスを追加したい場合は続けて「+追加」をクリック。

 

ポップアップウィンドウのIP入力

 

「OK」をクリックして完了です。

 

アクセスブロックを解除したい時

事がおさまりアクセスブロックを解除したい時は、単純に上記の逆の手順になります。

ポップアップウィンドウで追加したIPアドレスの右にある赤い「×」を押して消します。

最後に「OKをクリック。

 

.htaccessでの制御は可能か?

FTP経由で.htaccessをダウンロードして直接制御しても大丈夫か?と、一応さくらのサポートの方にと問い合わせてみたら、

 

「大丈夫です、しかし.htaccessのファイル上での操作および操作方法はサポート外です。」

との返答をいただいた。

 

特定IPアドレスをブロックすることになった経緯

余談ですが、今回かなり稀なケースであったため、同業者の人たちに向けてIPアドレスをブロックすることになった経緯を共有します。

 

とあるクライアントの全面改修案件で起きたこと。

 

SSL化してフルリニューアルしたWebサイトを公開した翌日、クライアントから

「社内でホームページが見れない」

という連絡が入り、額に汗をかく。

 

自分の会社のWi-Fi環境の内外で確認すると、なにごともなく閲覧できる。

 

先方に画面のスクショを送ってもらったところ503エラーの表示でした。

 

なぜコンテンツもほぼ一新し、リニューアルした直後に大量のアクセスがされたのか?

 

さくらインターネットのコントロールパネル内の「サーバーエラーログ」を確認すると、たしかにクライアントのグローバルIPからのアクセスが尋常ではなかった。

 

リニューアルして公開したばかりのタイミングだったので、クライアントも僕らも原因はこちらにあるのだとばかり思っていました。

 

意を決してクライアント側のシス管に調査を求めたところ、リニューアルとほぼ同時期に導入したサブスクリプション型業務系ソフトが立ち上がるたびにドメインを踏んでから起動する設定になっていたらしく、結果的に数千人の社員が同時に業務系ソフトを立ち上げるたびに自社のWebサイトへアクセスが集中してしまう事象だったらしいです。

 

原因が判明するまでは何も手をつけられない状態が続き、混乱してかなり憔悴しました。

かなり稀なケースですが、ひとつの要因としてこの件でいい経験になりました。

 

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『空気の研究』山本七平を読んで思い返すプロジェクトの炎上




 

Eテレの『100分 de 名著』でも紹介されていた、山本七平の『空気の研究』を読んだあとに、真っ先に下記の苦い経験を思い出した。

 

はじまる前から炎上していたプロジェクト

会社で「何か新しいことを始めなければ」という空気が社内に充満していた時期があった。

 

その空気は、冷凍庫を開けた時に漂う冷気のように、上層部である経営陣から漂い、それは社内全体に広がっていた。

 

社員の中には目の前の業務で忙しい中、このうえ面倒臭そうなことを押し付けられるのではないかとヒヤヒヤしていた者も少なくない。

 

ちょうどその頃、天下のD社から協同でメディアサイトを立ち上げないかという話が舞いこんできた。

 

Web制作チームにいた僕は嫌な予感がした。

 

そしてそれは的中。

 

D社のプレゼンに執行役員であった当時の上長と出席することになり、うちの本社会議室へ足を運ぶことになった。

 

D社からはプロデューサーとプロジェクトマネージャーが出席し、うちからは、代表、専務、執行役員、営業部部長、なぜか営業の新人の女の子、そして当時Webデザイナーだった僕。

 

プロジェクトは、数年先のブームを見越した戦略であり着目点としてはうなずける内容であったものの、すぐに問題点が浮かび上がった。

 

役員たちはリターンばかりを気にしていたが、たしかに僕も上長も役員たち同様に見返りのインパクトに欠けていることを感じながらも、とりわけ無視できなかったのが、ターゲットの母数、リソース不足の2つの問題に強い懸念を抱いていた。

 

そしてD社は、うちのリソースに期待している発言をしていたが、その会議中うちの誰もがその問題に触れることはなかった。

 

現場に戻り、執行役員である上長と冷静に話し合い、やはりターゲットの母数、そして自社のリソース不足は拭えないとのことでリスクヘッジをする共通の認識を確かめあった。

 

しかし数日後、本社で行われた役員会から帰ってきた上長の口から、まさかのプロジェクトの始動命令が下された。

 

僕とリスクヘッジを取ることで一致したはずの上長に対し、なぜそのような決定にいたったのかと問いかけると、

 

「あの大手D社からのお話はチャンスだよ。そしてうちの会社が新しい分野に挑戦できる良いきっかけでもあるし、役員会でもそういったムードが高まり、やることにした。お前も頑張れ。」

 

とのこと。

 

結論から言うと、このプロジェクトは2年半後に失敗に終わった。リソース不足や運営をしていく体力がなくなってきたのだ。

 

1年目にプロジェクトを見直すタイミングが訪れた。今からジャッジしてもまだ損害は少ないはず。

 

疲弊しているスタッフを横目に、プロジェクトにそこまで関わっていない熱血派の上司が「ここまで時間と労力を費やしてきて途中でやめるのはもったいない」という新たな空気を醸成しはじめ、プロジェクトはあえなく続行。

 

のちに、コンコルド計画のサンクコストのバイアスの話を知ったときは思わず苦笑したのを覚えている。

 

プロジェクトに関わったことは個人的にはいい経験となった。短期間で多くの困難を経験できたおかげで、見えなかったものをたくさん見ることができた。

 

しかし、会社にとってはマイナスだった。

 

早計なプロジェクトであったがゆえ、組織についていけなくなったスタッフも多く失い、あらゆる面で損失を出す結果となった。

 

今思えばトップマネジメントチームとして杜撰ではなかったかと感じる。

 

みんな空気に飲まれていった

プロジェクトの内容のことはこれ以上は省かせてもらい、問題はなぜ、上長ならびに他の役員たちはプロジェクトの始動を選んだのか?




 

彼らは、下記の「空気」に支配されていたに違いない。

 

  • 「何か新しいことを始めなければ」という空気
  • 「有名なD社からのお誘い受けた」という空気

 

さらに、プロジェクトの続行か中止かの見極めの時には、下記の「空気」に支配されていたに違いない。

 

  • 「ここまでやってきて途中でやめるのはもったいない」という空気
  • 「始めたからには成功をさせる」という空気

 

少なくとも当初、上長だけはリスクマネジメントをしようとしていた。

 

しかし、第一会議室にて経営陣である役員たちと卓を囲んでいるうちに、「何かをしなければならない」「新規事業を発足させなければいけない」という空気が、「チャレンジ精神」「チャンス」という美化された言葉に変換させたのではないか。

 

「おそるべき空気」の研究

日本人ならば誰でも知っているであろう「空気を読む」という言葉。

 

死語だけど「KY」なんて使われ方もされてきた。

 

その「空気」の研究について解説された山本七平著の『空気の研究』という本。


「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

 

この本では、戦艦大和出撃の決断、公害イタイイタイ病の原因追求、光化学スモッグ問題など、前述の僕の体験談よりも深刻な社会問題・国際問題を例に、空気によって日本人個人の意思決定を左右する、妖怪のような、いわば見えない暗黙の権力の正体を考察している。

 

要約すると、ものごとを決めるときには人間の意思や科学的根拠ではなく、その場の空気が決める場面があるということ。

 

空気が醸成される原理、つまり空気の正体を解明するにあたり、山本七平さんは臨在感的把握という難しいキーワードを多用する。

 

一部、臨在感的把握について文中33ページから引用させていただくと、

 

物質から何らかの心理的・宗教的影響をうける、言いかえれば物質の背後に何かが臨在していると感じ、知らず知らずのうちにその何かの影響を受けるという状態…(省略)

 

例として、もし「車は走る凶器」というスローガン的な言葉を聞いたことがあり、さらにその言葉通りイメージしたことがある人は、臨在感的把握が発動し、醸成された空気が伝わってきていることを意味する。

 

車は便利であると同時に危険を伴う物質であると思われがちだが、人間が危険な運転さえしなければ、ましてや、極論的に運転をしなければただの物質。つまり動かなければただの鉄の塊に過ぎない。

 

しかし、交通事故が”多発”した時に、運転手ももちろんのこと非難の対象となるわけだが、人を殺める能力を兼ね備えている車こそが悪。という空気が醸成され、それが図式化することもありうる。

 

このように、車という対象(物質)への一方的な感情移入により、その対象への科学的根拠といった分析を無視してしまうような無意識の思考と行動へ転換する恐れがある。

 

意図的な空気の醸成が可能なら、スローガンも同様にプロパガンダにも共通する危険な側面があるとも思った。

 

こういった無意識の働きは、日本の文化・歴史をさかのぼり紐解いていて、日本人特有の偶像崇拝性的な概念に縛られてる視野で物事を感じ取ってしまう宗教心に行き着くことまで解説されている。

 

科学的にはただの「石」なのに、その石に霊的な何かが宿っていると感じてしまうことは僕自身も理解してしまう。

 

もし石が仏像の形をしていれば粗末な扱いはできないし、そこに何年も神と崇められてきた石があったとしたら、思わず手を合わせてしまうかもしれない。

 

ましてやパワースポットなんて呼ばれていたらなおさら。

 

では、我々日本人は空気から逃れることは不可能なのか?

 

醸成された空気から現実に引き戻す作用として通常性を意味する「水を差す」という言葉を用いて述べている。

 

しかし、これも結局自分(たち)にとって不利になり得ることだと悟った際、たんなる空気を変えるための新しい空気を醸成させる素となる「水」に過ぎず、それはのちに蒸発を起こし、繰り返しますが、新たな空気として醸成されることも懸念材料とされる。

 

時に悲劇的な末路を迎えることになりかねない恐るべき妖怪のような「空気」。

 

余談ですが、山本七平氏と同様、悲惨な戦争経験者である水木しげる氏の妖怪の中に、この空気が基になっている妖怪がいたら知りたい。

 

何はともあれ、僕ら日本人のDNAに組みこまれた性質を理解し、空気に支配される恐れがあることを認識する必要があるのではと思う。

 

その場において、今後自分は上長と同じ轍を避けることはできるのか・・?

 

少なくとも、「空気」の存在を把握した現在、物事を別の角度から客観視できるようにはなった。




フルスタックWebディレクターへの指標『Webディレクションの新・標準ルール』




 

特定分野の研究は深く掘り下げるクセがあるにも関わらず、Webディレクターを始めるにあたりこの手の標準ルール本からWebディレクションを学ぶという選択肢はなぜか今までなかった。

 

ここまでなんとなく歩いてはきたけど、口コミの評判が良かったこともあり、去年(2017年)『Webディレクションの新・標準ルール 現場の効率をアップする最新ワークフローとマネジメント』を購入して、やっと最近一通り読み終える。

 

うんざりするWebディレクターのスキルの広さ

目次を読むと、あらためてWebディレクターという仕事も”身につけるべき”と思われるスキルがたくさんあるんだなーと思いつつ後ずさりしたくなる。

 

当然わくわくしながら読み進める人もいるでしょうが、たぶん、この本を手に取る人はこれからWebディレクターを始めようという人が多いと思うので、この目次の項目数の多さにおののいてしまう人もいるのではないか・・・。

 

今思えば、自分が今まで標準ルール本からWebディレクションを学ぶという選択肢がなかったのは、こういった理由だったのかもしれない。

 

しかし、そういった人もちょっと考え方を変えれば、この本は普段持ち歩くに等しい良書となる。

 

この本に書いてあるスキルを全て体得してフルスタックなWebディレクターになるのだという考え方を一時的に捨てれば。

 

「ディレクションの目的と役割」「企画」「設計」「制作・進行管理」「運用・改善」と全5章にわたり、一人前のWebディレクターになるための必要不可欠な知識が完全といっていいほどコンパクトにまとまって網羅されている。

 

最初から読み進めれば読み進めるほど、たしかにどのスキルの習得もはっきり言って捨てがたい。

 

が、エッセンシャル思考の本を読んだときにも書いたけど、ここはあえてどんどん切り捨てる。




 

Webディレクターの守備範囲は人それぞれ

どんどん切り捨てると言っても、好きなところだけを読んであとは無駄という意味ではない。

 

Webディレクターも組織の環境によって役割の守備範囲がだいぶ変わる。

 

  • ほとんどの工程を内製できるWeb制作会社
  • 企画立案がメインの上流工程を主体としたマーケティング会社
  • メーカーのマーケティング部門、並びにインハウスWeb制作部隊
  • 印刷・製版会社の中のWeb制作事業部隊

 

自分のバックグラウンドも大きく影響するが、周囲の環境によって守備範囲が変わるのは物理的にも避けられない。

 

特に、比較的にWeb制作のリテラシーが高くないと思われる印刷・製版会社では、組織と自分(たち)との狭間で根本的な考え方の違いで苦悩と奮闘の日々を送ることになることが想定される。

 

ポジティブな行動として組織改革が考えられるが、そこに労力を費やす余裕はこの本を読んでいる時点ではきっとない。

 

人それぞれに合った効率的な読み方

したがって、その環境・案件に適用するスタイルを確立するためには、今の自分に絶対的に必要な知識からチョイスして読み進めることをおすすめする。

 

チョイスをしたら、その分野を別の本なり、勉強会なり、ネットなりでもっと深く掘り下げていけばいい。

 

当然、最初から最後まで一読しても面白くて有用な内容だけど、もはやWeb制作会社だけにWebディレクターがいるわけではない現在において、こういったチョイス方法は相応かと思う。

 

本書CHAPTER 1でも、事業会社の社内ディレクターの役割と必要なスキルセットも紹介されているほどだし、しつこいようだが、Webディレクターは受託会社だけに存在するわけではない。さらにUXなどの人間中心設計についても科目として取り上げられているあたりが、今回の標準ルールに「新」をつけた理由のひとつなのだろう。

 

繰り返しになるけど、この本は立派なWebディレクターになるために必要な知識が完全といっていいほどコンパクトにまとまって網羅されているので、現在のWebディレクションに関するスキルセット内容を俯瞰的に把握できるという点もこの本の特徴のひとつ。

 

そういった意味では、一人前のWebディレクターへの道を計画的にロードマップを立てるのにも使えると思った。

 

好きなところから読み進め、何かの壁にぶつかった時に開けば助け舟にもなるかもしれない。


Webディレクションの新・標準ルール 現場の効率をアップする最新ワークフローとマネジメント

 

この記事で紹介しているのは『現場の効率をアップする最新ワークフローとマネジメント編』です。

 

『システム開発編 ノンエンジニアでも失敗しないワークフローと開発プロセス』というのもあるので、気をつけてください。


Webディレクションの新・標準ルール システム開発編 ノンエンジニアでも失敗しないワークフローと開発プロセス

 

とはいえ、この開発編も非常に気になりますが。

 

本質を押さえてから

と、ここまで偉そうに書いてきたけど、本書の冒頭に以下の文章がしっかりと書いてある。

 

(省略…)では、上記(様々な技術や知識を要すること)を満たすため技術に長けたフルスタックなWebディレクターでなければならないのか?もちろんできればそれに越したことはないが、それがWebディレクターの本質ではない。……

 

前述のようにどこから読み進めるべきかは人それぞれだが、サブタイトルに「現場の効率をアップする最新のワークフローとマネジメント」とあるように、物事(プロジェクト)を円滑に進行することに重点を置く思考こそが、やはりWebディレクターが最初に身につけるべき最優先事項なのではと思う。

 

必要なテクニックが多く網羅されているともいえるのだが、「ディレクターはこうあるべき」という思考はとても大事で、本質を捉えてから多くのことを学んでいってっも遅くはない。

 

むしろ、このエッセンスを理解していないと、のちに多くのスキルを身につけていく過程で自分が何者だかわからなくなるという、急に自分探しの旅に出なくてはならなくなるという恐れがある(自分がその傾向にあった)。

 

ちなみにまったく別の本のだけど『ディレクション思考』という本はWebディレクターのエッセンスを刷り込むのに大変おすすめ。

 

初歩的な問題から効率化を図るテクニックまで

最後になって気になる内容についてだが、各科目についてははっきり言ってAmazonのなか見!検索を見ていただいた方が手っ取り早い。そこで目次も見ることができる。

 

本質を理解したうえでも、いざWebディレクターとして実際に走り始めてるとミクロな部分ですぐに壁にぶち当たる現実。

 

  • キックオフミーティングの開催はいつ?
  • どのサーバーを選べばいいのか?
  • 工数計算の算出法は?
  • MacだからExceでドキュメントを作ったことがない・・・
  • DNSって?公開のタイミングがわからない・・・

 

上記のような初歩的な問題から、「見込み案件の見極め」「運用後の課題管理」「商流のパターン」「Webサイトの検収の見極め」といった、さらに効率化を図るテクニックやリスクマネジメントまで。

 

そういったリアルな現場で直面した時に役にたつ対処、習得しておくとディレクションがさらに効率よくなる知識が、見開き2ページ単位で具体的に紹介されている。

 

僕は最初この本を知り合いから借覧していたが、現在はKindleで購入しMacBookでいつでもどこでも引けるようにしている。




Webディレクターの必須スキルを見極める『エッセンシャル思考』




 

Webディレクションのスキルセットの多さに悩んでいたころに読んだ「エッセンシャル思考」を再読しました。

 

初めてエッセンシャル思考を読んだ動機

Webディレクターに専念していくうちに、覚えなければいけないことが沢山あると思うようになり、早く一人前にならなくてはいけない!という焦りと、全てのスキルを体得できるのか?いや、むしろ何ひとつまともに体得できないのではないか?という不安に満ち、気持ちに余裕がなくなっていた時期がありました。

 

  • Web制作全般の知識
  • サーバー・ネットワーク全般の知識
  • コミュニケーション能力
  • マーケティング
  • プランニング
  • リーダーシップ
  • プレゼンスキル
  • アクセス解析
  • ライティング
  • 経営知識
  • UXデザイン
  • マネジメント
  • SEO
  • SEM
  • ドキュメント作成スキル
  • デザイン

 

上記のように、やがて大枠のカテゴリーから飛び出し、もはや重要項目のひとつとして独立し、圧倒的な人手不足に煽られながら、その後もキーワードは膨れ上がっていきました。

 

そしてこれらのキーワードはひとつの立派な惑星へと成長し、太陽系のように常に頭の中を順繰り周回することになり、

 

「マーケティング覚えなければ…。」

「いや、アクセス解析を先に覚えければ…。」

「いやいや、要件定義書を作れようにしなければ…。」

「あ、そうだ、マーケティングも覚えなければいけなかったんだ…。」

 

と、こんな感じに。さらに、

 

「ステークホルダーが役員だらけなので経営学も…。」

 

といった具合に、太陽系はおろか宇宙のように無限に膨張し始める始末。

 

貪欲に知識を手に入れること自体は現在も以前も苦ではなかったけど、この時は明らかに全てが散漫な状態。

 

その時に本屋さんで、

 

エッセンシャル思考は、単なるタイムマネジメントやライフハックの技ではない。本当に重要なことを見極め、それを確実に実行するための、システマティックな方法論だ。エッセンシャル思考が目指す生き方は、「より少なく、しかしより良く」。

 

と書いてある本の帯に目を奪われた。

 

これが、数年前に初めてこの本を読んでみようと思った動機。


エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

 

エッセンシャル思考とは

「エッセンシャル」とは、本質的であり、絶対に欠かせないこと。

 

エッセンシャル思考は、少ない労力でより良い成果を出すこと。

 

そのためには、

 

  • 普段の業務や生活から多くのタスクを削ぎ落とす。
  • 降りかかる多くのタスクの増幅を予防する。
  • 一番重要なこと(エッセンス)を見極める。
  • その大きな成果や価値に向かって突っ走る。

 

そういったエッセンシャル思考になるための徹底した考え方、習慣、行動の方法論を応用することができ、この時は非常に役に立ちました。

 

今思えば、ここ数年よく聞く「断捨離」にも通じる、ミニマリスト的な思想にも近い。

 

クローゼットにある今後着るか着ないかわからない服へのバイアスの払い方についてのたとえ話なども文中に出てくるし。

 

そして、このエッセンシャル思考を応用して、頭の中で周回する惑星たちにストップをかけてみました。




 

Webディレクターの商品価値(本質)

エッセンシャル思考を踏まえ、Webディレクターという役割の本質を見極め、絞り込む。

 

文中に、Linkedinのディレクターが行なった「逆プロトタイプ」という手法が紹介されていました。

 

やって(作って)結果を素早く検証するプロトタイピングの逆、どんどんやらないことで、それらが現在必要なことであったかを検証する方法。

 

自分も、やらなければいけないと思っていてことをやめてみたら、案外やらなくて大丈夫だったことに気づかされるのでは。

 

いっぱしのWebディレクターがマスターしなければならないと思われるスキルセットをリストアップして検証してみたところ、マーケティングはマーケター、アクセス解析はアナリスト、UXはUXデザイナーというようにディレクターでなくとも賄える本職種がはっきりとわかってきました(最初からわかっていた筈だったのに)。

 

なんとも当然な結果に驚いた。何かをとるなら何かを捨てなければならないトレードオフというシンプルな考え方。

 

そして最後にどうしても捨てきれなかったのがプロジェクトのマネジメント。

 

進行力と管理力こそがWebディレクターの商品価値

 

自分はディレクターとして、メンバーをアサインするということを忘れ、全てのスキルを一気に体得しようとしていたことに気づく。

 

この本の章毎に常々要約されているエッセンシャル思考の人と非エッセンシャル思考の人との比較を見ると、自分はもろに非エッセンシャル思考型の人間だったのでありました。

 

Webディレクターには付加価値も必要

とはいえ、進行管理一辺倒のWebディレクターでは売れっ子ディレクターにはなれない。また、自分がWebディレクターの守備範囲のことで迷子のなったのはなぜか?

 

進行管理は円滑に進められることがなによりも好ましい。そのためにプロジェクトマネジメントを学び、スケジュールの引き方、要件定義、ステークホルダーの重要性などを学ぶ。ここまではなんとなくディレクターっぽい。

 

しかし、事業戦略のためのマーケティングツール「Webサイト」制作のディレクションを円滑に進めて行く中で、クライアントやマーケターとやりとりするためのSEOを含むマーケティングの知識が必要になってくる。

 

クライアントとディレクターが実装したい機能があれば、エンジニア、PM、PLに説明ができて、さらにフィードバックを理解するための技術知識が必要となってくる。

 

これらに事例はすべてディレクターの商品価値である進行管理を円滑に進めて行くために生まれる付加価値であると考えます。

 

この付加価値の必要性は、担当する案件の目的、予算、スケジュール、スコープによって決まります。

 

世間のディレクターがあれもできてこれも詳しいからといって、あらゆる付加価値を一挙に習得しようとせず、やらないことを切り捨て、まずが本質をしっかり習得することが大事だと思いました。




オライリーの『デザインの伝えかた』はディレクターも読むべき




 

プログラミング系の技術書でエンジニアにおなじみのオライリー出版のUXデザイン本シリーズ。

 

ステークホルダーにデザインの意図を正しく伝え、承認や合意を得ることは最適なUXを実現する

 

序盤はUXがもたらした近年のデザインの役割変化についてを振り返り、そして有効なコミュニケーションがデザインの決定過程においてどれほど必要不可欠なのか理解を深めてから、内容の濃い本題へと突き進んでいく。

 

Webサイトやアプリの制作を依頼をしてくるのはクライアントだったり自社の役員だったり。

 

他にも、一緒にプロジェクトのゴールへと向かうエンジニアやプロジェクトマネージャーなど、避けようのないステークホルダー(非デザイナー)たち相手に、デザインの専門家であるデザイナーが事業課題解決のためのデザインの意図をどう伝えることができるのか?

 

多くの修羅場をくぐってきたデザイナーである著者のTom Greever(トム・グリーバー)は、緊迫したステークホルダーとの戦略会議をS会議(ステークホルダー会議)と称し、非デザイナーとの接し方、考え方、会議に向けての準備や予防策、その場での対処法やステークホルダーの分析などを自身の豊富な経験の中から実例を交えてS会議の成功法を解説していきます。

 

1章にて、若き日のTom Greeverが、ある企業への就職活動で、マーケティング担当副社長との最終面接のやりとりの場面が印象的でした。

 

副社長は、

 

私が新しいプロジェクトを始めて、あなたに発注しようか検討しているとします。あなたなら最初に何を訪ねますか?

 

という質問に対し、Tom Greeverは、

 

印刷物ですか?ウェブサイトですか?カラーですか?白黒ですか?〜省略、そのウェブサイトあるいは印刷物は、何ページになりますか?納期は?

 

に対し、副社長は、

 

それでは困りますね。一番最初に尋ねるべきは『何を伝えたいか』でしょう

 

この『何を伝えたいか』という核心的な一言こそが、デザイナーのエッセンスなのかなと思いました。

 


デザインの伝え方

 

1章の実例と一言を念頭に置いて読み進めると、後に続く本題であるステークホルダーとの有効なコミュニケーションの具体的な実例や解説が全て紐付けられながら理解できると思います。

 

この本は、対ステークホルダー対策というだけではなく、デザイナー自身が自分の役割の一つとしてコミュニケーションの大切さを認識でき、「基本的にクライアントやステークホルダーはわがままで面倒臭い」という印象を持っている人は、読み終えるとだいぶ考え方が変わってくると思います。

 

自分が中心となって先導していくプロジェクトであっても、それは単に立場上の役割なだけで、ステークホルダーからしてみればデザイナーもステークホルダーなわけで、自分だけが正しいという考えではいけない。という忘れがちだったスタンスにも気づく。

 

一歩会社を出れば、ステークホルダーもデザイナーと同じ人間。

 

非デザイナーがデザインに触れる機会といえば、インターネットやスマートフォンが登場する以前は、駅や電車内の広告、好きな美術展やライブのポスターやチラシ、書籍の体裁などでしたが、今やWebサイトにアプリといった日頃の生活や人生に欠かせないUIツールを操作しながら毎日デザインに触れているといえます。

 

なので、いまの時代は非デザイナーでも自分が触れてきたUIデザインの経験がそのまま意見となりやすいのだが(それは悪いことではない)、やはりコンバージョンへの導線や、プロジェクトの目的を見失いがちになってしまうのもクライアントであり、ステークホルダーであり、非デザイナーであり、さらに言えば同じ人間。

 

戦略的で意図的なデザインに対してのステークホルダーのブレを軌道修正し、合意や承認を得るのに必要なのがデザインを伝え方である。

 

ここまで読んでいただければ、Webディレクターの方が読んでも面白い本だと思ってもらえると思います。

 

Webディレクターにとって女房役とも言えるデザイナーとの接し方、そのデザイナーのデザインに合意し、クライアントへの説明やその場での軌道修正に挑むことを考えると、Webディレクターにもおすすめです。

 

ちなみに、別の方の書評でも書いてありましたが、この本は翻訳がとても丁寧で分かりやすく、ステークホルダーへの具体的な発言例などの語彙は、そのまま実戦でも使えるようになっています。

 

数あるUX/デザイン系のオライリー本の中でもかなりの良書。