さくらレンタルサーバーで特定のIPアドレスからのアクセスをブロックする方法




 

先日、さくらインターネットのサーバーで特定のIPアドレスからのアクセスを制限した時の事例を備忘録。

 

この記事を読んでいる人は早期的に解決を望んでいると思いますので、特定IPアドレスをブロックすることになった経緯は後述するとして、とりあえず最低限の状況と条件、さくらのレンタルサーバーでのブロックの簡単な方法を足早に書いていきます。

 

条件

  • 制限対象のグローバルIPアドレスのナンバーがわかっている。
  • さくらインターネットのレンタルサーバーを利用(ちなみにビジネスプラン)。

 

事象

  • 全ての環境からWebサイトが閲覧できない。
  • もしくは、一部の環境のみWebサイトが閲覧できない。

 

さくらのファイルマネージャーから制御する

さくらインターネットのカスタマーサポートの対応はメールでも電話でもとても親切ですが、さすがにすぐには対応してくれるのは難しい。なぜなら、このようなトラブルみ見舞われている人の対応が多すぎるから。電話はすぐつながればラッキーだし、メールも問い合わせた直後に返信がくるわけではありません。

 

なので、手っ取り早くさくらインターネットのファイルマネージャーを利用して自分でアクセス制限をします。

 

※注意:ファイルマネージャー作業とはいえ.htaccessに記述されたりするので、復元できるようデータのバックアップを取っておくことを推奨します。




 

さくらのコントロールパネルにアクセス

まず、さくらインターネットサーバコントロールパネルにアクセスします。
https://secure.sakura.ad.jp/rscontrol/

 

ドメイン名とパスワードを入力し「送信する」をクリックしてログイン。

 

さくらコントロールパネルにログイン

 

左側のメニューの上から5番目「サイトに関する設定」の中の「ファイルマネージャー」をクリック。

 

ファイルマネージャー」をクリック。

 

別ウィンドウが開き、ファイルマネージャが開きます。

 

ファイルマネージャの画面

 

home/初期ドメイン/wwwのディレクトリのまま、画面上部のメニューバーの左から3番目「表示アドレスへの操作」をクリックするとプルダウンメニューが開き、「アクセス設定」をクリック。

 

「アクセス設定」をクリック。

 

ポップアップウィンドウが開くので、タブ中央の「接続元アクセス制限」を選択し、下部の「拒否するアクセスのリスト」内の「+追加」をクリック。

 

ポップアップウィンドウ

 

左側のプルダウンメニューがデフォルトの「IPアドレス」になっているのを確認し、右側の入力欄にアクセスブロックしたいIPアドレスを入力。さらにブロックしたいIPアドレスを追加したい場合は続けて「+追加」をクリック。

 

ポップアップウィンドウのIP入力

 

「OK」をクリックして完了です。

 

アクセスブロックを解除したい時

事がおさまりアクセスブロックを解除したい時は、単純に上記の逆の手順になります。

ポップアップウィンドウで追加したIPアドレスの右にある赤い「×」を押して消します。

最後に「OKをクリック。

 

.htaccessでの制御は可能か?

FTP経由で.htaccessをダウンロードして直接制御しても大丈夫か?と、一応さくらのサポートの方にと問い合わせてみたら、

 

「大丈夫です、しかし.htaccessのファイル上での操作および操作方法はサポート外です。」

との返答をいただいた。

 

特定IPアドレスをブロックすることになった経緯

余談ですが、今回かなり稀なケースであったため、同業者の人たちに向けてIPアドレスをブロックすることになった経緯を共有します。

 

とあるクライアントの全面改修案件で起きたこと。

 

SSL化してフルリニューアルしたWebサイトを公開した翌日、クライアントから

「社内でホームページが見れない」

という連絡が入り、額に汗をかく。

 

自分の会社のWi-Fi環境の内外で確認すると、なにごともなく閲覧できる。

 

先方に画面のスクショを送ってもらったところ503エラーの表示でした。

 

なぜコンテンツもほぼ一新し、リニューアルした直後に大量のアクセスがされたのか?

 

さくらインターネットのコントロールパネル内の「サーバーエラーログ」を確認すると、たしかにクライアントのグローバルIPからのアクセスが尋常ではなかった。

 

リニューアルして公開したばかりのタイミングだったので、クライアントも僕らも原因はこちらにあるのだとばかり思っていました。

 

意を決してクライアント側のシス管に調査を求めたところ、リニューアルとほぼ同時期に導入したサブスクリプション型業務系ソフトが立ち上がるたびにドメインを踏んでから起動する設定になっていたらしく、結果的に数千人の社員が同時に業務系ソフトを立ち上げるたびに自社のWebサイトへアクセスが集中してしまう事象だったらしいです。

 

原因が判明するまでは何も手をつけられない状態が続き、混乱してかなり憔悴しました。

かなり稀なケースですが、ひとつの要因としてこの件でいい経験になりました。

 

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『空気の研究』山本七平を読んで思い返すプロジェクトの炎上




 

Eテレの『100分 de 名著』でも紹介されていた、山本七平の『空気の研究』を読んだあとに、真っ先に下記の苦い経験を思い出した。

 

はじまる前から炎上していたプロジェクト

会社で「何か新しいことを始めなければ」という空気が社内に充満していた時期があった。

 

その空気は、冷凍庫を開けた時に漂う冷気のように、上層部である経営陣から漂い、それは社内全体に広がっていた。

 

社員の中には目の前の業務で忙しい中、このうえ面倒臭そうなことを押し付けられるのではないかとヒヤヒヤしていた者も少なくない。

 

ちょうどその頃、天下のD社から協同でメディアサイトを立ち上げないかという話が舞いこんできた。

 

Web制作チームにいた僕は嫌な予感がした。

 

そしてそれは的中。

 

D社のプレゼンに執行役員であった当時の上長と出席することになり、うちの本社会議室へ足を運ぶことになった。

 

D社からはプロデューサーとプロジェクトマネージャーが出席し、うちからは、代表、専務、執行役員、営業部部長、なぜか営業の新人の女の子、そして当時Webデザイナーだった僕。

 

プロジェクトは、数年先のブームを見越した戦略であり着目点としてはうなずける内容であったものの、すぐに問題点が浮かび上がった。

 

役員たちはリターンばかりを気にしていたが、たしかに僕も上長も役員たち同様に見返りのインパクトに欠けていることを感じながらも、とりわけ無視できなかったのが、ターゲットの母数、リソース不足の2つの問題に強い懸念を抱いていた。

 

そしてD社は、うちのリソースに期待している発言をしていたが、その会議中うちの誰もがその問題に触れることはなかった。

 

現場に戻り、執行役員である上長と冷静に話し合い、やはりターゲットの母数、そして自社のリソース不足は拭えないとのことでリスクヘッジをする共通の認識を確かめあった。

 

しかし数日後、本社で行われた役員会から帰ってきた上長の口から、まさかのプロジェクトの始動命令が下された。

 

僕とリスクヘッジを取ることで一致したはずの上長に対し、なぜそのような決定にいたったのかと問いかけると、

 

「あの大手D社からのお話はチャンスだよ。そしてうちの会社が新しい分野に挑戦できる良いきっかけでもあるし、役員会でもそういったムードが高まり、やることにした。お前も頑張れ。」

 

とのこと。

 

結論から言うと、このプロジェクトは2年半後に失敗に終わった。リソース不足や運営をしていく体力がなくなってきたのだ。

 

1年目にプロジェクトを見直すタイミングが訪れた。今からジャッジしてもまだ損害は少ないはず。

 

疲弊しているスタッフを横目に、プロジェクトにそこまで関わっていない熱血派の上司が「ここまで時間と労力を費やしてきて途中でやめるのはもったいない」という新たな空気を醸成しはじめ、プロジェクトはあえなく続行。

 

のちに、コンコルド計画のサンクコストのバイアスの話を知ったときは思わず苦笑したのを覚えている。

 

プロジェクトに関わったことは個人的にはいい経験となった。短期間で多くの困難を経験できたおかげで、見えなかったものをたくさん見ることができた。

 

しかし、会社にとってはマイナスだった。

 

早計なプロジェクトであったがゆえ、組織についていけなくなったスタッフも多く失い、あらゆる面で損失を出す結果となった。

 

今思えばトップマネジメントチームとして杜撰ではなかったかと感じる。

 

みんな空気に飲まれていった

プロジェクトの内容のことはこれ以上は省かせてもらい、問題はなぜ、上長ならびに他の役員たちはプロジェクトの始動を選んだのか?




 

彼らは、下記の「空気」に支配されていたに違いない。

 

  • 「何か新しいことを始めなければ」という空気
  • 「有名なD社からのお誘い受けた」という空気

 

さらに、プロジェクトの続行か中止かの見極めの時には、下記の「空気」に支配されていたに違いない。

 

  • 「ここまでやってきて途中でやめるのはもったいない」という空気
  • 「始めたからには成功をさせる」という空気

 

少なくとも当初、上長だけはリスクマネジメントをしようとしていた。

 

しかし、第一会議室にて経営陣である役員たちと卓を囲んでいるうちに、「何かをしなければならない」「新規事業を発足させなければいけない」という空気が、「チャレンジ精神」「チャンス」という美化された言葉に変換させたのではないか。

 

「おそるべき空気」の研究

日本人ならば誰でも知っているであろう「空気を読む」という言葉。

 

死語だけど「KY」なんて使われ方もされてきた。

 

その「空気」の研究について解説された山本七平著の『空気の研究』という本。


「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

 

この本では、戦艦大和出撃の決断、公害イタイイタイ病の原因追求、光化学スモッグ問題など、前述の僕の体験談よりも深刻な社会問題・国際問題を例に、空気によって日本人個人の意思決定を左右する、妖怪のような、いわば見えない暗黙の権力の正体を考察している。

 

要約すると、ものごとを決めるときには人間の意思や科学的根拠ではなく、その場の空気が決める場面があるということ。

 

空気が醸成される原理、つまり空気の正体を解明するにあたり、山本七平さんは臨在感的把握という難しいキーワードを多用する。

 

一部、臨在感的把握について文中33ページから引用させていただくと、

 

物質から何らかの心理的・宗教的影響をうける、言いかえれば物質の背後に何かが臨在していると感じ、知らず知らずのうちにその何かの影響を受けるという状態…(省略)

 

例として、もし「車は走る凶器」というスローガン的な言葉を聞いたことがあり、さらにその言葉通りイメージしたことがある人は、臨在感的把握が発動し、醸成された空気が伝わってきていることを意味する。

 

車は便利であると同時に危険を伴う物質であると思われがちだが、人間が危険な運転さえしなければ、ましてや、極論的に運転をしなければただの物質。つまり動かなければただの鉄の塊に過ぎない。

 

しかし、交通事故が”多発”した時に、運転手ももちろんのこと非難の対象となるわけだが、人を殺める能力を兼ね備えている車こそが悪。という空気が醸成され、それが図式化することもありうる。

 

このように、車という対象(物質)への一方的な感情移入により、その対象への科学的根拠といった分析を無視してしまうような無意識の思考と行動へ転換する恐れがある。

 

意図的な空気の醸成が可能なら、スローガンも同様にプロパガンダにも共通する危険な側面があるとも思った。

 

こういった無意識の働きは、日本の文化・歴史をさかのぼり紐解いていて、日本人特有の偶像崇拝性的な概念に縛られてる視野で物事を感じ取ってしまう宗教心に行き着くことまで解説されている。

 

科学的にはただの「石」なのに、その石に霊的な何かが宿っていると感じてしまうことは僕自身も理解してしまう。

 

もし石が仏像の形をしていれば粗末な扱いはできないし、そこに何年も神と崇められてきた石があったとしたら、思わず手を合わせてしまうかもしれない。

 

ましてやパワースポットなんて呼ばれていたらなおさら。

 

では、我々日本人は空気から逃れることは不可能なのか?

 

醸成された空気から現実に引き戻す作用として通常性を意味する「水を差す」という言葉を用いて述べている。

 

しかし、これも結局自分(たち)にとって不利になり得ることだと悟った際、たんなる空気を変えるための新しい空気を醸成させる素となる「水」に過ぎず、それはのちに蒸発を起こし、繰り返しますが、新たな空気として醸成されることも懸念材料とされる。

 

時に悲劇的な末路を迎えることになりかねない恐るべき妖怪のような「空気」。

 

余談ですが、山本七平氏と同様、悲惨な戦争経験者である水木しげる氏の妖怪の中に、この空気が基になっている妖怪がいたら知りたい。

 

何はともあれ、僕ら日本人のDNAに組みこまれた性質を理解し、空気に支配される恐れがあることを認識する必要があるのではと思う。

 

その場において、今後自分は上長と同じ轍を避けることはできるのか・・?

 

少なくとも、「空気」の存在を把握した現在、物事を別の角度から客観視できるようにはなった。




フルスタックWebディレクターへの指標『Webディレクションの新・標準ルール』




 

特定分野の研究は深く掘り下げるクセがあるにも関わらず、Webディレクターを始めるにあたりこの手の標準ルール本からWebディレクションを学ぶという選択肢はなぜか今までなかった。

 

ここまでなんとなく歩いてはきたけど、口コミの評判が良かったこともあり、去年(2017年)『Webディレクションの新・標準ルール 現場の効率をアップする最新ワークフローとマネジメント』を購入して、やっと最近一通り読み終える。

 

うんざりするWebディレクターのスキルの広さ

目次を読むと、あらためてWebディレクターという仕事も”身につけるべき”と思われるスキルがたくさんあるんだなーと思いつつ後ずさりしたくなる。

 

当然わくわくしながら読み進める人もいるでしょうが、たぶん、この本を手に取る人はこれからWebディレクターを始めようという人が多いと思うので、この目次の項目数の多さにおののいてしまう人もいるのではないか・・・。

 

今思えば、自分が今まで標準ルール本からWebディレクションを学ぶという選択肢がなかったのは、こういった理由だったのかもしれない。

 

しかし、そういった人もちょっと考え方を変えれば、この本は普段持ち歩くに等しい良書となる。

 

この本に書いてあるスキルを全て体得してフルスタックなWebディレクターになるのだという考え方を一時的に捨てれば。

 

「ディレクションの目的と役割」「企画」「設計」「制作・進行管理」「運用・改善」と全5章にわたり、一人前のWebディレクターになるための必要不可欠な知識が完全といっていいほどコンパクトにまとまって網羅されている。

 

最初から読み進めれば読み進めるほど、たしかにどのスキルの習得もはっきり言って捨てがたい。

 

が、エッセンシャル思考の本を読んだときにも書いたけど、ここはあえてどんどん切り捨てる。




 

Webディレクターの守備範囲は人それぞれ

どんどん切り捨てると言っても、好きなところだけを読んであとは無駄という意味ではない。

 

Webディレクターも組織の環境によって役割の守備範囲がだいぶ変わる。

 

  • ほとんどの工程を内製できるWeb制作会社
  • 企画立案がメインの上流工程を主体としたマーケティング会社
  • メーカーのマーケティング部門、並びにインハウスWeb制作部隊
  • 印刷・製版会社の中のWeb制作事業部隊

 

自分のバックグラウンドも大きく影響するが、周囲の環境によって守備範囲が変わるのは物理的にも避けられない。

 

特に、比較的にWeb制作のリテラシーが高くないと思われる印刷・製版会社では、組織と自分(たち)との狭間で根本的な考え方の違いで苦悩と奮闘の日々を送ることになることが想定される。

 

ポジティブな行動として組織改革が考えられるが、そこに労力を費やす余裕はこの本を読んでいる時点ではきっとない。

 

人それぞれに合った効率的な読み方

したがって、その環境・案件に適用するスタイルを確立するためには、今の自分に絶対的に必要な知識からチョイスして読み進めることをおすすめする。

 

チョイスをしたら、その分野を別の本なり、勉強会なり、ネットなりでもっと深く掘り下げていけばいい。

 

当然、最初から最後まで一読しても面白くて有用な内容だけど、もはやWeb制作会社だけにWebディレクターがいるわけではない現在において、こういったチョイス方法は相応かと思う。

 

本書CHAPTER 1でも、事業会社の社内ディレクターの役割と必要なスキルセットも紹介されているほどだし、しつこいようだが、Webディレクターは受託会社だけに存在するわけではない。さらにUXなどの人間中心設計についても科目として取り上げられているあたりが、今回の標準ルールに「新」をつけた理由のひとつなのだろう。

 

繰り返しになるけど、この本は立派なWebディレクターになるために必要な知識が完全といっていいほどコンパクトにまとまって網羅されているので、現在のWebディレクションに関するスキルセット内容を俯瞰的に把握できるという点もこの本の特徴のひとつ。

 

そういった意味では、一人前のWebディレクターへの道を計画的にロードマップを立てるのにも使えると思った。

 

好きなところから読み進め、何かの壁にぶつかった時に開けば助け舟にもなるかもしれない。


Webディレクションの新・標準ルール 現場の効率をアップする最新ワークフローとマネジメント

 

この記事で紹介しているのは『現場の効率をアップする最新ワークフローとマネジメント編』です。

 

『システム開発編 ノンエンジニアでも失敗しないワークフローと開発プロセス』というのもあるので、気をつけてください。


Webディレクションの新・標準ルール システム開発編 ノンエンジニアでも失敗しないワークフローと開発プロセス

 

とはいえ、この開発編も非常に気になりますが。

 

本質を押さえてから

と、ここまで偉そうに書いてきたけど、本書の冒頭に以下の文章がしっかりと書いてある。

 

(省略…)では、上記(様々な技術や知識を要すること)を満たすため技術に長けたフルスタックなWebディレクターでなければならないのか?もちろんできればそれに越したことはないが、それがWebディレクターの本質ではない。……

 

前述のようにどこから読み進めるべきかは人それぞれだが、サブタイトルに「現場の効率をアップする最新のワークフローとマネジメント」とあるように、物事(プロジェクト)を円滑に進行することに重点を置く思考こそが、やはりWebディレクターが最初に身につけるべき最優先事項なのではと思う。

 

必要なテクニックが多く網羅されているともいえるのだが、「ディレクターはこうあるべき」という思考はとても大事で、本質を捉えてから多くのことを学んでいってっも遅くはない。

 

むしろ、このエッセンスを理解していないと、のちに多くのスキルを身につけていく過程で自分が何者だかわからなくなるという、急に自分探しの旅に出なくてはならなくなるという恐れがある(自分がその傾向にあった)。

 

ちなみにまったく別の本のだけど『ディレクション思考』という本はWebディレクターのエッセンスを刷り込むのに大変おすすめ。

 

初歩的な問題から効率化を図るテクニックまで

最後になって気になる内容についてだが、各科目についてははっきり言ってAmazonのなか見!検索を見ていただいた方が手っ取り早い。そこで目次も見ることができる。

 

本質を理解したうえでも、いざWebディレクターとして実際に走り始めてるとミクロな部分ですぐに壁にぶち当たる現実。

 

  • キックオフミーティングの開催はいつ?
  • どのサーバーを選べばいいのか?
  • 工数計算の算出法は?
  • MacだからExceでドキュメントを作ったことがない・・・
  • DNSって?公開のタイミングがわからない・・・

 

上記のような初歩的な問題から、「見込み案件の見極め」「運用後の課題管理」「商流のパターン」「Webサイトの検収の見極め」といった、さらに効率化を図るテクニックやリスクマネジメントまで。

 

そういったリアルな現場で直面した時に役にたつ対処、習得しておくとディレクションがさらに効率よくなる知識が、見開き2ページ単位で具体的に紹介されている。

 

僕は最初この本を知り合いから借覧していたが、現在はKindleで購入しMacBookでいつでもどこでも引けるようにしている。




Webディレクターの必須スキルを見極める『エッセンシャル思考』




 

Webディレクションのスキルセットの多さに悩んでいたころに読んだ「エッセンシャル思考」を再読しました。

 

初めてエッセンシャル思考を読んだ動機

Webディレクターに専念していくうちに、覚えなければいけないことが沢山あると思うようになり、早く一人前にならなくてはいけない!という焦りと、全てのスキルを体得できるのか?いや、むしろ何ひとつまともに体得できないのではないか?という不安に満ち、気持ちに余裕がなくなっていた時期がありました。

 

  • Web制作全般の知識
  • サーバー・ネットワーク全般の知識
  • コミュニケーション能力
  • マーケティング
  • プランニング
  • リーダーシップ
  • プレゼンスキル
  • アクセス解析
  • ライティング
  • 経営知識
  • UXデザイン
  • マネジメント
  • SEO
  • SEM
  • ドキュメント作成スキル
  • デザイン

 

上記のように、やがて大枠のカテゴリーから飛び出し、もはや重要項目のひとつとして独立し、圧倒的な人手不足に煽られながら、その後もキーワードは膨れ上がっていきました。

 

そしてこれらのキーワードはひとつの立派な惑星へと成長し、太陽系のように常に頭の中を順繰り周回することになり、

 

「マーケティング覚えなければ…。」

「いや、アクセス解析を先に覚えければ…。」

「いやいや、要件定義書を作れようにしなければ…。」

「あ、そうだ、マーケティングも覚えなければいけなかったんだ…。」

 

と、こんな感じに。さらに、

 

「ステークホルダーが役員だらけなので経営学も…。」

 

といった具合に、太陽系はおろか宇宙のように無限に膨張し始める始末。

 

貪欲に知識を手に入れること自体は現在も以前も苦ではなかったけど、この時は明らかに全てが散漫な状態。

 

その時に本屋さんで、

 

エッセンシャル思考は、単なるタイムマネジメントやライフハックの技ではない。本当に重要なことを見極め、それを確実に実行するための、システマティックな方法論だ。エッセンシャル思考が目指す生き方は、「より少なく、しかしより良く」。

 

と書いてある本の帯に目を奪われた。

 

これが、数年前に初めてこの本を読んでみようと思った動機。


エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

 

エッセンシャル思考とは

「エッセンシャル」とは、本質的であり、絶対に欠かせないこと。

 

エッセンシャル思考は、少ない労力でより良い成果を出すこと。

 

そのためには、

 

  • 普段の業務や生活から多くのタスクを削ぎ落とす。
  • 降りかかる多くのタスクの増幅を予防する。
  • 一番重要なこと(エッセンス)を見極める。
  • その大きな成果や価値に向かって突っ走る。

 

そういったエッセンシャル思考になるための徹底した考え方、習慣、行動の方法論を応用することができ、この時は非常に役に立ちました。

 

今思えば、ここ数年よく聞く「断捨離」にも通じる、ミニマリスト的な思想にも近い。

 

クローゼットにある今後着るか着ないかわからない服へのバイアスの払い方についてのたとえ話なども文中に出てくるし。

 

そして、このエッセンシャル思考を応用して、頭の中で周回する惑星たちにストップをかけてみました。




 

Webディレクターの商品価値(本質)

エッセンシャル思考を踏まえ、Webディレクターという役割の本質を見極め、絞り込む。

 

文中に、Linkedinのディレクターが行なった「逆プロトタイプ」という手法が紹介されていました。

 

やって(作って)結果を素早く検証するプロトタイピングの逆、どんどんやらないことで、それらが現在必要なことであったかを検証する方法。

 

自分も、やらなければいけないと思っていてことをやめてみたら、案外やらなくて大丈夫だったことに気づかされるのでは。

 

いっぱしのWebディレクターがマスターしなければならないと思われるスキルセットをリストアップして検証してみたところ、マーケティングはマーケター、アクセス解析はアナリスト、UXはUXデザイナーというようにディレクターでなくとも賄える本職種がはっきりとわかってきました(最初からわかっていた筈だったのに)。

 

なんとも当然な結果に驚いた。何かをとるなら何かを捨てなければならないトレードオフというシンプルな考え方。

 

そして最後にどうしても捨てきれなかったのがプロジェクトのマネジメント。

 

進行力と管理力こそがWebディレクターの商品価値

 

自分はディレクターとして、メンバーをアサインするということを忘れ、全てのスキルを一気に体得しようとしていたことに気づく。

 

この本の章毎に常々要約されているエッセンシャル思考の人と非エッセンシャル思考の人との比較を見ると、自分はもろに非エッセンシャル思考型の人間だったのでありました。

 

Webディレクターには付加価値も必要

とはいえ、進行管理一辺倒のWebディレクターでは売れっ子ディレクターにはなれない。また、自分がWebディレクターの守備範囲のことで迷子のなったのはなぜか?

 

進行管理は円滑に進められることがなによりも好ましい。そのためにプロジェクトマネジメントを学び、スケジュールの引き方、要件定義、ステークホルダーの重要性などを学ぶ。ここまではなんとなくディレクターっぽい。

 

しかし、事業戦略のためのマーケティングツール「Webサイト」制作のディレクションを円滑に進めて行く中で、クライアントやマーケターとやりとりするためのSEOを含むマーケティングの知識が必要になってくる。

 

クライアントとディレクターが実装したい機能があれば、エンジニア、PM、PLに説明ができて、さらにフィードバックを理解するための技術知識が必要となってくる。

 

これらに事例はすべてディレクターの商品価値である進行管理を円滑に進めて行くために生まれる付加価値であると考えます。

 

この付加価値の必要性は、担当する案件の目的、予算、スケジュール、スコープによって決まります。

 

世間のディレクターがあれもできてこれも詳しいからといって、あらゆる付加価値を一挙に習得しようとせず、やらないことを切り捨て、まずが本質をしっかり習得することが大事だと思いました。




オライリーの『デザインの伝えかた』はディレクターも読むべき




 

プログラミング系の技術書でエンジニアにおなじみのオライリー出版のUXデザイン本シリーズ。

 

ステークホルダーにデザインの意図を正しく伝え、承認や合意を得ることは最適なUXを実現する

 

序盤はUXがもたらした近年のデザインの役割変化についてを振り返り、そして有効なコミュニケーションがデザインの決定過程においてどれほど必要不可欠なのか理解を深めてから、内容の濃い本題へと突き進んでいく。

 

Webサイトやアプリの制作を依頼をしてくるのはクライアントだったり自社の役員だったり。

 

他にも、一緒にプロジェクトのゴールへと向かうエンジニアやプロジェクトマネージャーなど、避けようのないステークホルダー(非デザイナー)たち相手に、デザインの専門家であるデザイナーが事業課題解決のためのデザインの意図をどう伝えることができるのか?

 

多くの修羅場をくぐってきたデザイナーである著者のTom Greever(トム・グリーバー)は、緊迫したステークホルダーとの戦略会議をS会議(ステークホルダー会議)と称し、非デザイナーとの接し方、考え方、会議に向けての準備や予防策、その場での対処法やステークホルダーの分析などを自身の豊富な経験の中から実例を交えてS会議の成功法を解説していきます。

 

1章にて、若き日のTom Greeverが、ある企業への就職活動で、マーケティング担当副社長との最終面接のやりとりの場面が印象的でした。

 

副社長は、

 

私が新しいプロジェクトを始めて、あなたに発注しようか検討しているとします。あなたなら最初に何を訪ねますか?

 

という質問に対し、Tom Greeverは、

 

印刷物ですか?ウェブサイトですか?カラーですか?白黒ですか?〜省略、そのウェブサイトあるいは印刷物は、何ページになりますか?納期は?

 

に対し、副社長は、

 

それでは困りますね。一番最初に尋ねるべきは『何を伝えたいか』でしょう

 

この『何を伝えたいか』という核心的な一言こそが、デザイナーのエッセンスなのかなと思いました。

 


デザインの伝え方

 

1章の実例と一言を念頭に置いて読み進めると、後に続く本題であるステークホルダーとの有効なコミュニケーションの具体的な実例や解説が全て紐付けられながら理解できると思います。

 

この本は、対ステークホルダー対策というだけではなく、デザイナー自身が自分の役割の一つとしてコミュニケーションの大切さを認識でき、「基本的にクライアントやステークホルダーはわがままで面倒臭い」という印象を持っている人は、読み終えるとだいぶ考え方が変わってくると思います。

 

自分が中心となって先導していくプロジェクトであっても、それは単に立場上の役割なだけで、ステークホルダーからしてみればデザイナーもステークホルダーなわけで、自分だけが正しいという考えではいけない。という忘れがちだったスタンスにも気づく。

 

一歩会社を出れば、ステークホルダーもデザイナーと同じ人間。

 

非デザイナーがデザインに触れる機会といえば、インターネットやスマートフォンが登場する以前は、駅や電車内の広告、好きな美術展やライブのポスターやチラシ、書籍の体裁などでしたが、今やWebサイトにアプリといった日頃の生活や人生に欠かせないUIツールを操作しながら毎日デザインに触れているといえます。

 

なので、いまの時代は非デザイナーでも自分が触れてきたUIデザインの経験がそのまま意見となりやすいのだが(それは悪いことではない)、やはりコンバージョンへの導線や、プロジェクトの目的を見失いがちになってしまうのもクライアントであり、ステークホルダーであり、非デザイナーであり、さらに言えば同じ人間。

 

戦略的で意図的なデザインに対してのステークホルダーのブレを軌道修正し、合意や承認を得るのに必要なのがデザインを伝え方である。

 

ここまで読んでいただければ、Webディレクターの方が読んでも面白い本だと思ってもらえると思います。

 

Webディレクターにとって女房役とも言えるデザイナーとの接し方、そのデザイナーのデザインに合意し、クライアントへの説明やその場での軌道修正に挑むことを考えると、Webディレクターにもおすすめです。

 

ちなみに、別の方の書評でも書いてありましたが、この本は翻訳がとても丁寧で分かりやすく、ステークホルダーへの具体的な発言例などの語彙は、そのまま実戦でも使えるようになっています。

 

数あるUX/デザイン系のオライリー本の中でもかなりの良書。




UXデザインセミナー『UX Bridge vol.5』に行ってきました。

UXデザインセミナー『UX Bridge vol.5』



 

BtoB/BtoBtoCサービスにおけるUXをテーマにした勉強会『UX Bridge vol.5』に行ってきました。

 

去年の『UX Bridge vol.2』では、新人のデザイナーを連れて行くことが一番の目的でしたが、本人は補欠から繰り上がらず落選。叶わず。

 

しかし、今回は、去年連れて行けなかったデザイナーと、今年入社したばかりの新人デザイナーの2名を連れて参加することができました。

 

参加した動機

  • 前回同様、前線で活躍しているデザイナー、フロントエンジニア、プロダクトマネージャーといった様々な役割の方々の視点で、UXデザインの取り組みや考え方、ビジネス上でどのような価値をもたらしているか?といったお話が聞けること。
  • 自分が所属する組織・チームの各役割のメンバー達に、自分の立ち位置からUXデザインの価値を、僕の言葉ではなく、外部の方々からの言葉で知ってもらいたかった。

 

良いUXデザインをする為に必ず必要とされる事

良いUXデザインをする為に必ず必要とされる事

 

業務では主に自社サービスのUXとUIの改善業務を担当しているUI/UXデザイナーの大村真琴氏。

 

良いUXデザインをする為に必要とされる事とは、スタッフエクスペリエンスとのこと。

 

要は、ユーザーに対するUXを向上させるためには、まず自チームや組織に対してエクスペリエンスデザインを施してから、ユーザーに良いUXを提供する。

 

大村氏は、テモナ株式会社に参画した際に初めてそれに向き合ったそうで、組織、人、文化、業務フロー、思考というキーワードをあげ、スタッフエクスペリエンスを実施した例を紹介していました。

 

ディレクターとはUXにおける問題点・課題点をすり合わせ、双方に学びや意思疎通、共通認識を増やす話のほかに、エンジニアとのコミュニケーションをピックアップしていました。

 

以前のエンジニアさんは、改善指示に対し黙って従う傾向にあり、ここにUX/UIのことを知れる絶好の機会をエンジニアが逃していると危惧していたとのこと。

 

実案件の中で改善指示を出す際は(おそらく)プロジェクトの背景やゴール、UIを改善することの意図を説明し、勉強会などを行わなくとも意思疎通や共通認識を高めることができたそうです。

 

とても良いアイデアだと思ったのは、セルフユーザビリティテストの実施方法。

 

プロジェクトチーム以外の社内の人たちにセルフユーザビリティテストを実施する際、「バグコンテスト」という告知ポスターを作成。セルフユーザビリティテストを社内イベント化し、他部門の人たちには業務以外のタスクが増えるといった印象を払拭したアイデアはいつか真似したいと思いました。




エンジニアがUXをロジックで考えてみる

エンジニアがUXをロジックで考えてみる

 

株式会社サイバーエージェント AdTech Studioの折原レオナルド賢氏は、エンジニアらしいロジカルな視点で管理画面の改善にあたった話などをされていました。

 

A〜Eまでページを遷移するタスクがあった場合のタスク完了までのユーザーの迷い度を、

 

  • N:ユーザーがタスク実行中に閲覧した異なるページ数(ユニークビュー)
  • S:ユーザーがタスク実行中に閲覧したページ数(ページビュー)
  • R:ユーザーがタスクを完了するための最短ページ数
  • L:迷い度

 

として数式に表し、複数あるタスク完了までの各ルートの迷い度を導きだす話が印象的でした。

 

その他にも、カードソートの集計にクラスター・デンドログラム(たぶんクラスター分析)の説明など、個人的には折原氏の登壇が一番興味深く、もっと詳しく話を聞きたいと思いました。

 

UI/UX カイゼンチーム始めました

UI/UX カイゼンチーム始めました

 

株式会社SmartHRから、デザイナーの渡邉氏、フロントエンドエンジニアの渡邉氏の同じ苗字の2名が登壇。

 

UX/UIに強いメンバーでカイゼンチームを立ち上げた経緯に、

 

  • プロダクト専任のデザイナーがいない。
  • エンジニアがBootstrapでUIを決定していた。
  • 当時のリソース・フェーズだとそれが正解。

 

といったことをあげてて、同行したWebデザイナーと自チームでのあるある話すぎておもわず笑みがこぼれた。

 

様々な改善例を紹介していた中で、会員登録へのタスクが斜格的すぎて、会員登録までの道筋案内の問い合わせがユーザーから殺到した時の改善例がグッときました。

 

ドロップダウンメニューに隠れていた会員登録へのリンクをグロナビに置いただけでは問い合わせは減らなかったが、最終的に罫線で区切り、並列から分類したことにより問い合わせが激減した成功例。

 

マイクロコピーじゃないけど、こういった細部のちょっとした修正で改善される成功例はつくづく素晴らしいと思う。

 

もちろん両名とも試行錯誤の努力と情熱が前提にあるのですが、僕は色んな知識を蓄えすぎて難しく考えすぎるクセがあるのだと今回の話で認識できてよかった。

 

感想

今回もデザイナーとエンジニアの視点から色んな考え方や取り組みを聞けて面白かったのですが、UXというよりも比較的UIやユーザビリティの話が多いという印象を受けました。

 

しかし、ワークフローやチームビルディングにおいて、やはり自分たちの環境だけが恵まれていないというわけではなく、どの組織も様々な課題を抱えており、その問題解決への素晴らしい工夫を聞けて収穫になりました。

 

同行した新人デザイナー達にも、自チームの問題や、Webサイトの改善に対して意欲が湧いているのが帰り道に感じられた。

 

UX Bridge vol.5




 

『時間と場所を選ばない パラレルキャリアを始めよう!2枚目の名刺があなたの可能性を広げる』




 

パラレルキャリアという言葉を初めて聞いた時に関心を持った理由は、SF小説などに登場する、現実と並行して存在する別の世界(時空)を表すパラレルワールドという言葉を知っていたことが基づいていたのだと後から思った。

 

そのパラレルキャリアについては数年前から関心を寄せていて、ネット上で情報収集をしていたところ、Webディレクターの方が実際にプロボノ、シビックテックといった活動をしているのを知り、その方と同年代・同業種としてその関心はさらに高まっていきました。

 

パラレルキャリアの定義についてはピーター・ドラッカー著『明日を支配するもの』にて提唱されている、

 

「パラレルキャリア(第二の仕事)、すなわちもう一つの世界をもつことである(中略)」

 


明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命

 

それはまさに今日の日本でも重要視されつつあり、ドラッカーは見事に予言を的中しています。

 

後述しますが、自分でもようやく最近その「もう一つの世界」を見つけることができ、今一度パラレルキャリアについて認識しようと、下記の書籍を読んでみました。

 


時間と場所を選ばない パラレルキャリアを始めよう!―――「2枚目の名刺」があなたの可能性を広げる

 

この本では、豊富な実例と平行に、パラレルキャリアの定義始め方種類方法活動により得られること。また、対極をなすシングルキャリアの実態リスクなど、パラレルキャリアを始めるにあたり、知っておくべき知識が全8章200ページ強にて学べます。

 

パラレルキャリアとは

本業と本業以外の社会活動。

 

社会活動と聞くと「NPO団体」「ボランティア」という敷居が高いワードが思い浮かぶけど、そこがちょっと待ったなのである。

 

「社会」とは、なにも「世の中」という広くて公なステージだけではなく、単に人々の共同空間でもあります。

 

つまり、学校のPTAや、自分が住んでいる町内会も立派な「社会」なのです。

 

  • SNSなどで同士を集め、プログラミングの勉強会を始める。または参加する。
  • 上記のように自分が住んでいる町の町内会に参加する。

 

こういったことも立派なパラレルキャリアに当てはまります。

 

シングルキャリアのリスク

といった具合に考えると、身近なところから気楽な気持ちで始めらることがわかりますが、そもそもそんなことは昔から行われていることなのでまったく目新しいことではない。

 

では、パラレルキャリアという横文字が、なぜ最近注目されているのか。

 

それはパラレルキャリアとは対極をなす、シングルキャリアにその本質が隠されています。

 

下記、本文中から引用抜粋。

 

シングルキャリアとは、「自分が本業と考える組織、あるいは役割に全面的に依存してしまい、その価値観を疑問の余地なく受け入れ、その状態から変化する可能性すら想定していない場合」

 

決して終身雇用がいけないというわけではありません。しかし、長時間残業、異動、慣れ親しんだ仲間といった、会社が用意した時間と空間と接点の中で、一つの組織の考えだけに染まった思考と行動はとても閉鎖的なのです。

 

現に僕も組織のその時その時の状況により役割や立場、部署を転々とした経験があります。

 

その閉鎖的な状況にも気づかぬまま、組織の血液が濃くなってしまうと、社員個人は総合職として様々な経験ができる反面、特筆した専門分野を伸ばすことができません。

 

様々な経験といえど、所詮自分の組織内での経験にすぎない。

 

成長を妨げられた社員が多くなると、無意識に組織に身を任せる人ばかりとなり、自らが組織をより良い方向へ導く思考・行動を起こせなくなると考えています。

 

またはその危機感に気づいた人は転職を希望することになります。

 

当然それは組織的にもマイナスだし、後述する「キャリア」という個人の人生にも跳ね返ってくるでしょう。

 

パラレルキャリアが注目された3つのこと

(1)社内では経験できないことが経験できる。

例えば、町内会委員になるにしても、日頃の業務と同じように町内会にも目標や課題があるはずです。

 

多くの人たちに自分の町に住んでもらいたいという最終目標があり、そのためには町内イベントを開催したり、治安を良くしたりなど。

 

本業でフロントエンドエンジニアをメインでやっている人が、同じ町に住んでいる老若男女の様々な職業・役割を持つ人たちと一つの目標に向かうプロジェクトに参加することにより、普段では経験できない人たちとのコミュニケーション、チームビルディング、未知の専門知識、問題解決能力などが身につくはずです。

 

(2)その経験を本業で生かせる。

今まではフロントエンドの構築をメインでやっていた人が、本業ではバグの解決だけでなく、プロジェクトの問題解決能力を発揮できたり、たまたま同じ町内会員にいた経済学者さんから得た知識でターゲットユーザーの行動心理についてアイデアを出せるようになったり。

 

かなり都合の良い例ですが、外部環境で率先して行動することは、間違いなく自分自身へのフイードバックとなり、それが持ち帰った組織への手土産となります。

 

(とはいえ、最近のエンジニアさんは守備範囲が広いが)




 

(3)その経験が自分のキャリアになる。

今後、我が国で定年が長くなるのか、定年自体がなくなるのかわかりませんが、節目として現職を離れた後も働きたい場合や、転職をする場合、豊富なキャリアがあればシングルキャリアに比べてそれは有利に働きます。

 

本書ではパラレルキャリアという観点からのキャリアについて、ダグラス・T・ホールの定義を紹介しています。

 

生涯における一連の職業と経験。
生涯における一連の役割の経験。

 

キャリアの定義は様々ですが、上記をキャリアと定義づけ、それらを果たすことにより、いつか自分の軌跡を振り返った時に大きな自信と実績になるということです。

 

まとめ

  • パラレルキャリアとは、本業と本業以外の社会活動。
  • パラレルキャリアは、身近なところから始めらる。
  • シングルキャリアのままだと自己成長の妨げになる。
  • パラレルキャリアは、本業では経験できないことが経験できる。
  • パラレルキャリアは本業や自分の人生に相乗効果をもたらす。

 

以上、この本を読んで自分なりに解釈したことですが、富士通ラーニングメディアのデザイン思考の導入の話や、週5時間〜10時間のスキマ時間を活用した話など、とにかく実例が豊富な良書だと思います。

 

日頃からプライベート学習をしている人におすすめ。

 

おまけ:僕のパラレルキャリア

僕が飛び込んだ「もう一つの世界」は、自分が住む大規模な集合住宅の理事会です。

 

【課外活動】マンモス集合住宅の活性化運動。

 

役割としては、

  • 4棟管轄の副棟委員長として、棟の問題提起、問題解決、業務執行。
  • 広報副部会長として、広報誌制作、Webサイトの運用と改善、他、広報活動全般。
  • 理事会役員として、棟と部会の活動報告や稟議、さらに全棟における問題提起、問題解決。

などなど。

 

月に10時間+α程度の時間で活動していますが、やはり理事会、棟委員会、広報部会のそれぞれのチーム内には、様々な専門分野の人、職業の人がいて、みんなこの集合住宅の資産価値を高めようという一つの目標に向かっている人たちで形成されていてとても刺激的で楽しいです。

 

飛び込んだだけじゃ成果の前借りをしているに過ぎないと思いますが、ここから少しづづキャリアを積み上げて行こうと思います。

 

いや、まずは飛び込むことが大事かな。




 

ナチュラルにアイデア創出。真鍋博『発想交差点』




 

星新一や筒井康隆ほか、多くのSF小説や推理小説の装丁デザイン、挿絵を手がけたイラストレーター真鍋博のアイデア創出エッセイ集。

 

真鍋博が表現するこの「交差点」とは、人と話している時、街角を歩いている時、電車の中など、交差点のように自分と様々な人や出来事が入り交じる、つまり、日常生活でのあらゆる接点。

 

そんな交差点で著者が着想を得た発想や解釈が、見開き2ページ単位というコンパクトな構成で108篇収録されている。

 

読み進めていくうちに、これはミーティングルームから場所を屋外に変えた、他人とのテーマ無き108のブレスト集ではないか?と読み進めていたら、著者のあとがきでもこう記されていて納得した。

 

この発想交差点は、自分の座標軸を絶えず動かすためのシュミレーション、または、セルフ・ブレインストーミングであった

 

僕の知見では、発想は既知の情報を素材に、ある刺激により、ふとひらめく。

 

例えば、数人でのブレスト中に聞こえてきた誰かのボソッとした発言、家の中でリラックスした時にたまたま目に入った物体、公共の場での不愉快な出来事など。




 

この発想交差点は77年から80年にかけて執筆されたもので、まだNTTではなく前身グループの電電公社や、JRの前身の国鉄の名前も話の中に登場する。

 

当時の風景を思い浮かべながら懐古的に読んでも楽しい。

 

40年弱の年月が経ち、時代の風景や人々の価値観がガラッと変わり、現代のテクノロジーによって効率的に解決された問題もある。

 

しかしながら、SFを熟知したイラストレーターによる夢想だにしない切り口の発想や解釈は、現代、もしくは近い将来においても通じる貴重なヒントとして得ることができた。

 

また、通常チーム内でブレストする時は、みんなブレストのルールをいちいち意識しながら行っていることが多いので、このように日常の目の前で即座に疑問に思ったこと・感じたことからナチュラルにアイデアを創出できることをあらためて認識した。


発想交差点 (中公文庫)

 

発想交差点のオリジナルは「真鍋博の発想交差点―四百字二枚半=108篇」として1981年に実業之日本社から出版されており、今回僕が購入して読んだのは1984年に文庫化の際にあとがきを追加した中公文庫が出版したもの。

 

真鍋博の書籍や図録、画集は絶版モノが多く、古本界隈ではとても高価な値段で取引されていますが、この「発想交差点」以外にも同じ中公文庫から「異文化圏遊泳」「歩行文明」、ちくま文庫から「超発明: 創造力への挑戦」「真鍋博のプラネタリウム:星新一の挿絵たち」が文庫化されており、これらは古本でも比較的安く手に入れることができます。