カワイハルナ 個展『海を見る』を見に行く。

カワイハルナ 個展「海を見る」



 

海が見たい。

 

カワイハルナさんと本個展を知ったのはいしいひろゆきさんのツイッターのタイムライン。

 

DMに描かれていた海が見える風景の一部に惹かれました。

 

この日は内林武史さんの展示とハシゴだったのですが、偶然にもお二人のテーマの一環が「記憶」で、感慨深くなりそうななにかを予感。

 

PARK GALLERY(末広町)
PARK GALLERY(末広町)

 

会場である秋葉原のパークギャラリーへ行くのは初めて。公園横にある素敵な佇まい。

 

いざ。

 

カワイハルナ 個展「海を見る」

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

 

こじんまりとした空間に、存在感がある8点の風景が並ぶ。

 

作品:風が通る場所
作品:風が通る場所

 

夏っぽい青空の中、壁にタオルが掛けられ、関係性が感じられない物が点々と存在する意味不明な風景。不思議と穏やかな風を感じながらここで寝っ転がりたくなる。

 

作品:風が通る場所
作品:風が通る場所

 

なんか奥行きを感じると思ったら、背面に画用紙、手前に透明アクリル板の2レイヤー構造。中央のオブジェに自然の影がついている。

 

作品:海のあれこれ
作品:海のあれこれ

 

「海はどこ?」とよく見たら丸い穴の向こうが海になっていました。

 

作品:三角が横たわる部屋
作品:三角が横たわる部屋

 

不思議なインテリアはキューブリックの映画「時計じかけのオレンジ」の一幕を思い出す。

 

作品上:なかに海を 作品下:夢の中
作品上:なかに海を 作品下:夢の中

 

カワイハルナさんが創造する世界はとても心地よさを感じる。作中によく登場するカーテンやタオルみたいな布で、清潔感と風を表現されているからだと思う。

 

作品:曲面のなか
作品:曲面のなか
作品:円と板
作品:円と板
作品:部屋を横切る丸太
作品:部屋を横切る丸太

 

力学や物理学が好きな方なのだろうか。整合性をとりたくなり考えこみながら見入ってしまう。

 

ポップでシュルレアなランドスケープ。

 

戦利品

カワイハルナDMといしいひろゆきのZINE

 

カワイハルナさんの物販はなく今回の個展のDMと、いしいひろゆきさんのZINEを購入。

 

ですが、会期中に発注すると、受注生産で今回の個展で展示されている原画のポスター(原画実寸)を3,000円で購入できるそうです。

 

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

 

そういえば、本個展に行くきっかけとなったDMに描かれていた絵はどこだ?

 

と思ったら、いちばん最初に観た「風が通る場所」の作品に似ている。しかし、雲やタオルの形が若干変わっているし、無いはずのオブジェクトが「風が通る場所」にはある。

 

最初は「きっと未完成の状態でDMに使用したのだろう」と思ったけど、そうではない。どちらも同じ記憶であり、同じ風景。どちらも完成品。と、解釈しました。

 

これからもますますカワイハルナさんの展示に足を運びたいと思いました。

 

カワイハルナ個展「海を見る」
http://park-tokyo.com/post/165279496681/kawaiharuna
PARK GALLERY
東京都千代田区外神田3-5-20
会期:2017/10/11(水)~2017/10/22(日)
時間:13:00~20:00
休館:月曜日・火曜日




内林武史 展 Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]

内林武史 展 Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]



 

先月の小林健二さんの展示会に続き、10月18日にギャラリー椿へ内林武史さんの展示会に行ってきました。

 

内林武史さんの展示は、同じくギャラリー椿GT2で2年前の2015年に開催された「Another Planet*」以来。

 

その「Another Planet*」では、初めてご本人とお会いし、不思議なオブジェ(装置)を丁寧に紹介してくださって、オブジェ(装置)のスイッチが切り替えるたびに現実から夢の世界へと切り替わる体験をさせていただきました。

 

残念ながら今回はご本人にお会いすることができず。

 

しかし、今回も普段の生活では味わえない世界が用意されていました。

 

Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]

ギャラリー椿GT2の一部屋目
ギャラリー椿GT2の一部屋目

 

GT2の一部屋目。さっそく所々に何かが発光しているのが目に飛び込み、外の京橋の喧騒を一瞬で忘れる。

 

『alu』は「在る」、「或る」などの”ある”
光、音、色、匂い…脳裏に刻み込まれた記憶。
初めてみる光景に懐かしさを憶える、
そんな感覚で楽しみ頂けたらと思います。
-内林武史さんの説明文より引用-

 

説明文を読んでGT2のメインルームを一周。

作品:内包された機械と空気
作品:内包された機械と空気

 

裸同然で閉じ込められたシステムと空気は、この菅の中でともに永遠の存在となった。

 

作品:D.L.C model:1817 No.397
作品:D.L.C model:1817 No.397

 

やっぱ発光する鉱石を見ると落ち着く。「ここに来た」と実感する。

 

作品:月の軌道と。
作品:月の軌道と。

 

今回、僕が見入ってしまった作品の一つ。遠い記憶の断片が額装された空間の中で今でも時が流れているよう。

 

作品:機械の脳と宇宙の砂
作品:機械の脳と宇宙の砂

 

右上の丸い窓の中では鉱石が緩やかに点滅していました。

 

作品:Ishmedail
作品:Ishmedail
作品:Ishmedail
作品:Ishmedail

 

鉱石の研究にひたすら没頭できそうな空間。お気に入りの鉱石を持ち出しノクターンビュリズムを決め込みたくなる。

 

GT2奥の小部屋
GT2奥の小部屋

 

幻想っぷりがさらに増した、薄暗いGT2の奥の小部屋に移動。

 

作品:引き出しに流れる時間
作品:引き出しに流れる時間

 

「引き出しに流れる時間」なんて素敵な作品名だろうと立ち止まった。

普段、いつも目の前に見えている風景には無意識に時の流れを感じていますが、当然引き出しの中でも時間は流れている。

 

作品:対話する菌類の標本
作品:対話する菌類の標本

 

「生物の標本」と考えると薄気味悪いけど(笑)、昔出会ったキノコとこうして今も一緒に過ごせたら素敵だと思いました。

 

作品:星の棲む灯台
作品:星の棲む灯台

 

作品:alusola
作品:alusola

 

菅や額に収められていることにより、現実とは切り離されているけど過去の曖昧な記憶はこれから大切に保管されていく感じがしました。

 

作品:build-SQ 01〜02
作品:build-SQ 01〜03

 

幼少の頃、寂しさを感じる夜に窓を開けると灯りがついている建物を見て安心した気持ちになったことがあります。

 

作品:build-SQ 01〜03

 

バックに映る建物の光と影がきれいなランドスケープ。

 

作品:いちばん近い星(スイッチ)
作品:いちばん近い星(スイッチ)

 

GT2の奥の小部屋との境界線にあるスイッチ。

これを押すと・・・

 

作品:いちばん近い星

作品:いちばん近い星
作品:いちばん近い星

 

大きな星(恒星?)の鉄塔に灯りが!

 

作品:いちばん近い星
作品:いちばん近い星

 

鉄塔の脇にクレーンで吊るされている土星。

 

作品:いちばん近い星
作品:いちばん近い星

 

幻想的な現象。

 

団地やクレーンや鉄塔といった風景は、内林武史さんのアトリエがある東雲の風景にリンクしているようにも感じました。

 

 

遠い記憶をこういった形でアウトプットできるなんて素敵すぎる。

 

幼少の頃、母と行った広い原っぱのあの公園は一体どこだったのだろう?
夜中に目を覚ました時に台所にいたあの怪人はなんだったのだろう?
僕にはそういった子供の頃の曖昧な記憶がいくつもあります。

 

夢だったのか?
現実だったのか?
空想だったのか?

 

どうしても思い出せません。

 

普段、仕事で必要な知識をインプットし、忘れないように言葉に出したり、文章にしたり、議論を交わしてみたりして記憶を少しでも持続させようとしています。

 

当然それらは今仕事で必要なことばかり。

 

だけど、今回の内林武史さんの展示で思ったことは、現在の記憶も忘れたくないだけど、幼少の頃の遠い曖昧な記憶もこれ以上忘れたくない。それも今の自分には必要なのだと。

 

内林武史さんが具現化した「風景」に訪れて、僕はそう思いました。

 

内林 武史 展 DM

 

内林武史 展 Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]
http://www.gallery-tsubaki.net/2017/takeshi_uchibayashi/info.htm

2017年10月7日(土)〜10月21日(土)
11:00 AM〜6:30 PM
日・祝 休廊




異次元ポップなイラストレーター:いしいひろゆき




 

久しぶりに胸が踊る作家を見つけました。

 

イラストレーターの「いしいひろゆき」さんです。

 

惑星探査機カッシーニが長年の役目を終えるニュースを見たり、先日行ってきた小林健二さんの展示会などもあり、興奮が冷めずTwitterで「土星」を検索しまくっていたら、たまたま、いしいひろゆきさんの存在を知りました。

 

ご本人のTwitter上で紹介されていた、FRaUという雑誌で使用されている一枚の挿絵を見て、今後自分はこの人に注目していくだろうと直感的に思いました。

 

 

幻想的で、どこか70〜80年代を感じさせる不思議な一枚。

 

2016年から本格的に活動されてたとのことで、個展もちょくちょくやっていたらしく、もっと早く知っとけばよかったと後悔しています。

 

パステルカラーによるファンシーな作風が特徴で、ユニークなキャラクターが繰り広げるストレンジポップな世界はついついじっくりと見入ってしまいます。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/162972909476/clouds

 

FRaUという雑誌の他にも、WIREDの表紙やQUICK JAPANでも仕事をされいたようで、海外でも注目を浴びているそうです。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/157190948276/cover-and-inside-illustrations-for-wiredjp-vol27

 

追記:10月3日

Web制作者御用達のオンラインスクール、Schooのイベントでもビジュアルデザインを担当されてらした模様。

 

 

ピースフルなエッセンスを感じる異次元ポップ・ワールド。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/160694532891/raisin-sandwich-acrylic-pen-colored-pencil

 

Illustratorで描かれているようですが、手描きでも描かれているようです。

原色のような明確じゃないパステルカラーなのでとてもファンタジック。ベタ塗りのフラットな感じから、子ども向けの絵本も出して欲しいと思いました。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/146532642616/park

 

トロピカルムードなアメリカ西海岸のニューエイジ的リラックス感(なんだそりゃ)。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/138323161441/museum-at-shallow-sea-海続きの美術館

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/130876270646/sunset-さんせっと

 

杉浦茂、たむらしげる、佐々木マキ、久里洋二を初めて知った時のようなワクワク感いっぱいで、今後の展開が非常に気になります。

 

ハマりました。

 

本文中、いしいひろゆきさんの公式SNSから引用させて頂きました。

 

いしいひろゆき(Hiroyuki Ishii)

Twitter
https://twitter.com/ishii_hiroyuki_

Tumblr
http://hiroyukiishii.tumblr.com

Instagram(Works)
https://www.instagram.com/ishii_hiroyuki_/

Instagram(Illustration)
https://www.instagram.com/ishii_hiroyuki_illustration/




 

小林健二 展『Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition』

Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition



 

2017年9月9日(土)、鉱石ラジオなどで知られるアーティスト小林健二さんの展示会に行ってきました。

 

ギャラリー椿へは、2015年の内林武史さんのAnother Planet以来2年ぶり。

 

【僕と小林健二】

鴨沢祐仁 展 – KITAHARA collection –でも書きましたが、以前、僕は宮沢賢治や稲垣足穂といった幻想文学作家が好きになったと同時に、いつしや同じような世界観を持つアーティストを追いかけるようになりました。

 

小林健二さんの存在を知ったのはもっとそれ以前で、97年に筑摩書房から出版されていた「ぼくらの鉱石ラジオ」という本を中野のタコシェで購入したのがきっかけでした。

 

 

宮沢賢治、稲垣足穂、鴨沢裕仁は、文章や絵でその不思議な魅惑の世界に僕を連れてってくれましたが、小林健二はご自身の作品を発表するだけでなく、自分で育てる鉱石や、自分で組み立てる鉱石ラジオといった製品(キット)を同氏が設計・監修をする銀河通信社から発売し、「体験」も僕に与えてくれたのです。

 

(体験といえば、内林武史さんも展示会で作品に触れさせてくれたり操作をさせていただきました。)

 

そして人生初の小林健二さんの展示会へ。

 

ギャラリー椿

 

【Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition】

小林健二さんの作品は鉱石ラジオだけではなく、絵画、造形、音楽、映像、装置!?など多岐にわたり発表しており、その作風はどれも不思議で幻想的な世界です。

 

今回、ギャラリー椿のサイトで告知されていた、青く発光している土星が中に入っている装置?みたいなものが当初のお目当てでしたが、全ての作品に魅了されました。

 

展示物は新旧の作品が展示されており、アートブックのAIONやMEEMに掲載されている作品、そして初お披露目の作品もありました。

 

小林健二展示会1

小林健二展示会2

 

ギャラリーのメインスペースの長編の壁には、おそらく新作と思われる立体感ある作品がずらり。

 

小林健二作品1

小林健二作品2

小林健二作品3

小林健二作品4

 

小林健二さんの作品というと、「土星」や「鉱石」が発光するオブジェというイメージが個人的に強かったのですが、まるで高度な古代文明の遺跡で発掘されたような神々しい作品群も待ちかまえていました。

 

小林健二作品5

 

幾何学的な紋章にはどんな意味があるのでしょうか。

 

小林健二作品7

 

↑UFO?

 

小林健二作品8

小林健二作品9

 

これらの作品を見ているうちに、00年代に活躍していたイタリアの実験音楽宇宙兄弟My Cat Is An AlienのRoberto Opalio(ロベルト・オパリオ)の作風を思い出しました。

 

もしかしたら、Roberto Opalioも小林健二さんに影響を受けていたのではないでしょうか。

 

小林健二作品6

小林健二作品10

小林健二作品11

小林健二作品12

 

ページ最上部の作品とともに、つなぎ合わせた板に描いた神秘的な絵画は圧巻でした。

 

小林健二作品13

 

ギャラリーのメインスペースを超え、GT2と呼ばれるスペースへ。

 

ギャラリー椿GT2

小林健二作品14

 

メインスペースで展示されていた新作たちが進化する前の作品群。

 

小林健二作品15

小林健二作品16

 

特殊な樹脂で製作されているらしいです。進化前も良すぎる。

 

小林健二作品17

 

紫色のダイヤ型の空間をのぞくと、奥行きがある小さな一つの世界が存在しているかのように思いました。

 

小林健二作品18

 

↑巨大な作品。氏が10代の頃に製作した作品も展示されていました。

 

最後にGT2をさらに奥に進んだ部屋は、今までとは違う空間。

 

9年前?以前にギャラリー椿で行われた展示会のDMに使われていた石膏?らしき大きな作品。↓

 

小林健二作品19

 

そして、青く発光している土星が住んでいる黒い箱。

 

小林健二作品20

 

わがままを言ってギャラリーのスタッフさんに部屋を暗くしてもらい撮影。土星は水平ではなく不思議な動きで自転していました。

ホログラムによって映し出されているのかと思ったら、明らかに物体として自転しています。どうやってランダムな回転をさせているのか僕の頭脳では想像がつきませんでした。

 

小林健二作品21

 

うまく撮影できませんでしたが、この丸い大きな窓をのぞくと、ここにも青く発光する土星が自転しながら住んでいます。左下の小さな窓には鉱石が入っており、気づくと色が変化していました。

 

しかもこの大きな装置、鉱石ラジオだったのです!

 

小林健二作品22

 

【感想】

様々な技法で生み出される小林健二さんの作品は、ひとつひとつが神秘的な空想の世界に連れていってくれるのですが、どこか現実味も感じるのが魅力です。

 

自然と化学の法則、鉱石と土星の距離、現在と過去と未来の時系列など、現実で想像され、創造された独自の世界観。

 

これらの作品、この世にありえない風景や物体は、実はどこかに実在していたのではないか?と思うと楽しくて仕方がありませんでした。

 

ギャラリー椿のスタッフさんがとても親切に作品や小林健二さんのことを説明してくれるので、最近小林健二さんに興味を持った方にもオススメの展示会です。

 

9月16日(土)PM5:00からは、小林健二さんのイブニングトークがあるそうです。行けたら行きたい。

 

Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition

 

Kenji KOBAYASHI Solo Exhibition
会期
2017年9月9日[土] – 9月30日[土]
9 September – 30 September 2017
11:00 AM – 6:30 PM
日・祝 休廊
*初日、作家在廊(PM5:00~)
http://www.gallery-tsubaki.net/tsubaki.html
http://www.gallery-tsubaki.net/2017/Kenji_Kobayashi/info.htm

 

ギャラリー椿:アクセス
http://www.gallery-tsubaki.net/access.html




 

鴨沢祐仁 展 – KITAHARA collection –

鴨沢祐仁 展 - KITAHARA collection -

鴨沢祐仁展、奥の原画

 

2017年8月4日、横浜市にあるMERRY ART GALLERYへ「鴨沢祐仁展 – KITAHARA collection -」に行ってきました。クシー君やレプス君の原画はもちろん、銀河鉄道の夜の原画や生前最後の作品、氏の愛用品などが展示されていた鴨沢祐仁の不思議な世界観を体験してきました。

【僕にとっての鴨沢祐仁】

鴨沢祐仁の展示会が開催されると知って、まず最初に「やっとこの日が来たか」と思いました。

 

鴨沢祐仁さんは、漫画家/イラストレーター/グラフィックデザイナーとして活躍された方で、70年代の漫画雑誌ガロで漫画家としてデビュー。その後、様々なメーカーの広告などのデザイン、CDジャケットのイラストなどを手掛け、多くの人にそのファンタジックな世界観が広まったのだと思います。

 

僕はいつしか宮沢賢治、稲垣足穂の世界観が本格的に好きになり、同じ世界観を持つ小林健二、たむらしげる、内林武史といった現在もご活躍されている作家を追いかけるようになりました。その中の一人として、鴨沢祐仁さんも必然的に好きになったのです。

 

当時の僕はWebデザイナーとして働いていましたが、職場環境が最悪な時期で、いわゆるデスマーチという納期はあるけど作業の終わりが見えないような残業まみれの日々を送っていました。心が病みかけたちょうどその時期、鴨沢祐仁さんの漫画やイラストと出会って、救われた気がしたのです。

 

クシー君の漫画

 

タバコをくわえた少年と兎、ロボット、頭が土星の紳士、寂しさを感じさせない夜の風景、どこかファンタジックな街角の風景。

 

それは、現実と非現実のはざまのような世界。まさに「夢の中」のような世界。平和で暖かさを感じる世界。僕は熱中しました。

 

現実逃避だったのかも知れません。ですが、確かに救われた気がしたのです。

 

そして、僕が鴨沢祐仁さんのファンになったのは2008年の他界後。ネットで調べると他界後も氏のイベントは何度か行われており、いつか鴨沢祐仁のイベントが開催されたら絶対に行こうと思っていたのです。

 

【素敵なMERRY ART GALLERY】

横浜市にあるMERRY ART GALLERYへは初めて行きました。

 

みなとみらい線の元町・中華街駅6番出口から地上に出た瞬間、いきなり視界に広がるアメリカ山公園の庭園風景にビックリしました。

 

アメリカ山公園

 

アメリカ山公園を抜けて、右手に外人墓地を眺めながら山手のハイソな街なみを歩き、MERRY ART GALLERYに到着。

 

横浜MERRY ART GALLERY

 

東京の場末に住んでて、毎日都心で仕事をしている僕にとって、MERRY ART GALLERYに到着するまでの普段とは違う風景は、これから体感する不思議な鴨沢ワールドと現実世界の境のように思えました。

 

ギャラリーの中に入ってすぐに受付があり、そこで入場料500円を払い、靴を脱いでいざ。

 

平日の早い時間だったので、独占状態。そして、畳一畳分幅の奥に長いギャラリースペースに息を飲みました。もうまるで銀河鉄道の車中。

 

MERRY ART GALLERYの内観

 

この空間演出はヤヴァい…。

 

「千と千尋の神隠し」のような気分というか…、とにかく現実から完全に遮断されたことを確信しました。

 

【そして鴨沢ワールドへ】

左側から奥へと進み、往復しながら展示物を見てまわりました。

 

ガラスのショーケースを覗くと、氏が愛用していた品々や、写真がありました。奥さんの写真?かと思ったら、若き日の長髪時代の鴨沢祐仁さんでした。実は美男子だったのです。

 

鴨沢祐仁展ショーケース

 

鴨沢祐仁さんの作品にはたまにロボットが登場しますが、ショーケース内に展示されていたASIMOのフィギュアを見て、現代盛んなロボット開発にも注目していたのかなと思いました。他界してからもうすぐ10年になりますが、現在のAI技術の発達を知ったら、きっと興奮されるのではないでしょうか。

 

僕の大好きなビックリ水族館の原画もありました。
(下の写真左)

 

ビックリ水族館の原画

 

銀河鉄道の夜も、もちろんありました。

 

銀河鉄道の夜

 

北原照久氏の事務所で描いた、生前最後の作品であり、本展示会で一番サイズが大きい作品。このシンメトリーの不思議な技法で描かれた絵で一番足を止めました。

 

鴨沢祐仁生前最後の作品。

 

折り返すと、購入可能なジークレーがずらっと並んでいます。

 

鴨沢祐仁ジークレー

 

展示名にもなっていますが、これらの展示物は全て北原照久氏のコレクション。今回の展示会が開催されたことに感謝いたします。

 

【鴨沢祐仁展の戦利品】

残念ながら、図録やグッズの販売はありませんでした。

 

唯一の販売物はジークレーのみで、僕にとっては高価だったため手に入れることはできず、DMを記念に持って帰りました。

 

鴨沢祐仁 展 - KITAHARA collection - DM

 

スタッフさんにグッズのことを尋ねたら、「ここから近くにある「ブリキのおもちゃ博物館」の物販コーナーに鴨沢さんのポストカードがあるかも」という情報をいただき、早速足を運びました。

 

ブリキのおもちゃ博物館

 

館内は旅行客でごった返し。北原照久さんがいらしたので、握手したかったのですが、お忙しそうだったので断念。

 

鴨沢祐仁さんのポストカードありました!しかも108円!5〜6種類ありましたが、あえてこの1枚にしました。何故かと言うと、

 

鴨沢祐仁ポストカード

 

久しぶりに訪れた今日の横浜山手は、時おり雨がパラついたり晴れ間が現れたりの曇り空。不安定な天気、横浜山手の街並み、そしてウキウキした気持ちにフィットしたのがまさにこの絵だったので。

 

鴨沢祐仁 展 – KITAHARA collection –
http://merry-art.jp/category/now/

MERRY ART GALLERY本館
2017年7月22日(土)~8月27日(日)
※会期中 月曜日 休館日 11:00~19:00

アクセス
http://merry-art.jp/access/

 

【追記:2018.4.5】

没後10年を追悼して、鴨沢祐仁さん初イラスト集『Xie’s Club Book 〜鴨沢祐仁イラスト集〜』が、2018年5月23日にP-VINE ブックスから発売するようです。


XIE’S CLUB BOOK ~鴨沢祐二イラスト集~

楽しみすぎますね。




 

映画『めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー』

ザ・レジデンツのドキュメンタリー映画「めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー」原題:Theory of Obscurity: a film about The Residentsを観に、渋谷はシアター・イメージフォーラムへ7月8日(土)へ行ってきました。

 

シアター・イメージフォーラムへは2001年の『殺し屋1』実写版を観に行った以来でじつに15、16年ぶり。

 

レジデンツ初のドキュメンタリー映画ということで、この情報を知った時は興奮しました。

 

 

ザ・レジデンツとは

レジデンツのことを簡単に説明しますと、アメリカ西海岸を拠点に70年代から今も活動しているバンドです。

 

ここまではよくあるプロフィールですが、奇妙奇天烈な音楽、目玉のマスクにタキシードという格好をしてメンバー全員の素性が明かされていない、まさしく「正体不明」というのが他のバンドと違うといったところですかね。

 

日本だと、デビュー当時の宇多田ヒカルのプロモーション戦略を思い出しますが、レジデンツはそれを40年間も貫いていて、現在進行形なのです。

 

彼らの匿名性理論、曖昧理論(ファジー理論とは関係ない)は、人を惹きつける力があり、未だ多くの熱狂的なファンを抱えています。とはいえ、誰もが知るようなメジャーな存在ではないので、どのくらいのファンがいるかは解りませんが。

 

今年の3月にBLUE NOTE TOKYOでの再来日は都合がつかなく断念。それから本ドキュメンタリー映画の情報を耳にし、必ず行こうと思っていました。

 

今回の映画では、謎のサポートメンバーのギタリスト「スネークフィンガー」の映像が観れるのでは?レジデンツの正体が誰なのか?その手がかりを期待していました。




スネークフィンガーの貴重な映像は?

「スネークフィンガー」のフィリップ・リスマンは、チリ・ウィリ&レッド・ホット・ペパーズというパブロックバンドで活動する傍、スネークフィンガー名義でソロ活動。さらにレジデンツのサポートメンバーでもありました。

 

(そういえば、レジデンツが好きな電気グルーヴの曲でスネークフィンガーというのがありましたね)

 

クラフトワークのMODELのカバーと、レジデンツ名義でのローリングストーンズのサティスファクションのカバーでの、あのアイシーなギターソロは最高に好きです。

 

そのアヴァンなギタープレイが観れるかも?と期待してましたが、残念ながら拝めず。

 

登場したのは、レジデンツのボーカルがライブ時に着ていたTシャツの、スネークフィンガーのChewing Hides The Soundのジャケのプリントくらい。

 

でも、レジデンツのメンバーのスネークフィンガーに対する想いが伝わり、感動を覚えました。

 

レジデンツの正体が誰なのか?

以前、僕の音楽仲間の間でも、そのことを議論した思い出があります。

 

プライマスのレス・クレイプール?いやいや、全員、クロマニヨン(ニューヨークのフリージャズレーベルESPから1969年にデビューしたグループ)が前身なのでは?先ほど、手がかりが掴めればと書きましたが、この映画を観終わってからは、そんなことはどうでもよくなりました。

 

仮に、レジデンツの正体が誰なのか?もうありえないけどジョージ・ハリスンなのか?無名の人なのか?それを知った時点で、レジデンツではなくなると思ったからです。

 

その謎に満ちた状態だからこそ、数倍の魅力が発揮される。

 

だからもうレジデンツの正体には興味がなくなり、引き続き彼らの表現全体を楽しむことにしました。

 

最後に、そもそも質(レジデンツの場合、高い音楽性と芸術性とパフォーマンスなど)に魅力がないと、ブランディングというのは成功しないものなのだな再認識しました。

 

これが目玉論てやつか。

 

お土産に、公式パンフを購入し、レジデンツのガチャポンもやってみました。

 

レジデンツのガチャガチャ

 

当たったのは目玉のスーパーボールと、ステッカー。
連れはトートバッグが当たりました。

 

レジデンツめだまろん公式パンフ

 

パンフは読み応えがあるインタビューや、ジャケ原画やアセテート盤の写真が多く掲載されててマニアよだれものの内容。

 

映画「めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー」オフィシャルサイト

 

以下劇場情報

【東京】シアター・イメージフォーラム 公開日:7月1日(土)〜
【愛知】名古屋シネマテーク 公開日:7月22日(土)〜
【大阪】シネ・リーブル梅田 公開日:7月8日(土)〜
【兵庫】元町映画館 公開日:9月2日(土)〜




 

横尾忠則 HANGA JUNGLE 展

横尾忠則 HANGA JUNGLE 展



 

15年ぶりの極彩色な非現実的世界へ。

 

2014年に行きそびれた「谷中安規展」のリベンジも兼ねて、町田市立国際版画美術館まで行ってきました。

 

横尾忠則さんの展覧会に来たのは現代美術館で行われた「森羅万象」以来だからおよそ15年ぶり。

 

久しぶりにあの非現実的な世界観を体験したかったのと、新作を含む大御所様のほぼ全ての版画作品が展示されると聞いて行くしかないと思っていました。

 

 

来てよかったー!!と、いきなり強烈な作品群。

 

 

以下、画像は順不同です。




 

 

神秘的な世界観の作品は前田常作さんを思い出す。

 

 

70年代、横尾先生は入院生活や親交関係にあった三島由紀夫氏の死によって精神的に辛い時期を過ごしたそうです。

 

その辛い世界から抜け出すために、桃源郷的な作風を数々と生み出しました。

 

 

さらに70年代といえばヒッピーカルチャー。作品からは、それらのバックグラウンドも強く感じます。

 

 

そしてTadanori  Yokooといえば……

 

 

妖しくてアングラなErooos!!!

 

横尾先生の総天然色な作品イメージからかけ離れた落ち着いた作品もありました。

 

奥様をモデルにデッサンした「Yasue」シリーズや、女性の後ろ姿シリーズの「Hair」「Head」など。

 

 

Y字路が特にそうですけど、横尾先生の多様なパターン化したシリーズものは飽きがこなく楽しめる。

 

いっけん版画とは思えない仕事、そしてまさに密林に迷い込んだような作品点数のボリューム感。

 

 

(まあ、もう出口なんか見つからなくてもいいや)

 

 

さらに横尾先生といえば予想外な展開のコラージュ作品。

 

 

昔からこの女達のシリーズ好き。

 

 

よ〜く見るとたくさんの切手。

 

 

寺山修司や唐十郎、土方巽などのアングラ感満載のポスター。今回「天井桟敷」は展示されてなかったなー。

 

 

最後にスタンプを押して帰りました。

 

 

一言で感想を言うと「サイケデリック!」若かった15年前から良くも悪くも成長していない自分。

 

シルク、木版、銅版、オフセット……あらゆるプリント手法を駆使し、横尾忠則だからこそ創造できる超版画の世界。

 

以前、色校正会社の知り合いが「横尾さんは色や刷りにとても厳しかった」と言ってたのをふと思い出した。

 

印刷業界の人がビビるくらい、今回の展覧会でその極道っぷりをもろに感じます。

 

自分がしたいことをしていれば評価などは気にならない。評価を気にしている段階ではまだ自分がしたいことが本当にできていない証拠だと思う。

 

横尾忠則さんのこの言葉は本当に好きで、今の自分の仕事にも生きている。

 

展覧会公式カタログが我らが国書刊行会から出ています!
掲載点数のボリュームはもちろん、1ページに大きく印刷された迫力あるページも多く充実した内容。

横尾忠則全版画 HANGA JUNGLE 公式カタログ

 

【横尾忠則 HANGA JUNGLE 展】
会期:2017年4月22日(土)~6月18日(日)
会場:町田市立国際版画美術館
休館日:月曜日
時間:平日 10:00~17:00 (入場は16:30まで)
土・日・祝日 10:00~17:30 (入場は17:00まで)
Webサイト

 

次の巡回先は神戸にある横尾忠則現代美術館です。
2017年9月9日(土)~12月24日(日)




 

「ロシアの装丁と装画の世界」図録

「ロシアの装丁と装画の世界」図録



 

先日行ってきた「ロシアの装丁と装画の世界」展の図録です。展示会場の「えほんやるすばんばんするかいしゃ」で購入しました。

 

「ロシアの装丁と装画の世界」展の記事

 

「今後、こんな沢山の旧ソ連時代のロシアの本を譲り受ける事はないと思うので、今回の展示に合わせ何らかの形として残しておきたかった。」

 

と、本展示会の主催者であり、本書の発行人である「えほんやるすばんばんするかいしゃ」の店主様からお話を聞きました。

 

その時、(ナイス偉業!)と僕は心の中で叫びました。

 

この図録はアートブックとして楽しめ、デザイン参考書としても有用であり、旧ソ連時代ロシアの書物の装丁画図版がこれだけまとまった数でなかなか見る事ができない、それだけ貴重な資料でもあるのです。

 

 

これだけでもかなりの点数の図版が掲載されていますが、僕は欲を出して「シリーズ化したら次も買いますよ!」と言ったら、「本は相当な数があるので、当初、表紙と見返しを別々に集約する案もありましたが、それぞれが単調な内容になる可能性があるため、今回1冊にまとめました」とおっしゃってました。

 

この図録を見終わった今さっき、(ナイスUX!)(ナイス組版!)と僕は心の中で叫びました。

 

 

表紙画と見返し画はページ毎にランダムに掲載されており、その変化のお陰で飽きないどころか、ページをめくる度にワクワク感もあります。

 

表紙の図版にはドロップシャドウが掛けられていて作品が際立っています。

 

スズキコージさんっぽい雰囲気と力強さを感じる見返し。

 

SF系の本?ストレンジサイケポップっぽいアートワーク。

 

一瞬、真鍋博さんのイラストかと思った。

 

撮影と掲載のお許しをいただいたので、気づいたら30枚くらい撮っていました。載せたい図版が沢山あるのですが、キリがないのでここまで。あとは買ってからのお楽しみです。



本文中に文字は奥付手前のあとがきのみで、オールカラーの図版のみ。各図版には、その本のタイトルやクレジットといった情報は一切ありません。

 

「ロシアの装丁と装画の世界」展の記事でも個人的な意見として書きましたが、この展示の魅力は、中身の内容(情報)ではなく、自分が気になった魅力的な表紙や見返しから感じとる個人の「自由な想像」にあると思います。したがって、この図録もそういった情報が不要だと思うのです。

 

以下「えほんやるすばんばんするかいしゃ」より引用:

■タイトル: ロシアの装丁と装画の世界
■発行年: 2017年 5月20日発行
■発行 / 編集: えほんやるすばんばんするかいしゃ
■サイズ: 14.8cm×21.0cm
■ページ数: 128ページ
■無線綴じ(ソフトカバー)/カバー付き
■カバー / 本文: オフセット印刷
■掲載内容

展覧会「ロシアの装丁と装画の世界」の
図録として製作した冊子です。
表紙と見返しの図版のみで構成されています。
本のタイトル、著者名、画家名、発行年などの
文字情報の記載は一切ありませんのでご注意ください。

■図版掲載数:278点

< 内訳 >
・表紙(裏表紙、背表紙含む):200点
・見返し:78点

 

展示場で販売してますが「えほんやるすばんばんするかいしゃ」のECからでも購入できます。
http://rusuban.ocnk.net/product/8764

※発行部数は現時点で不明。

 

発行人の「えほんやるすばんばんするかいしゃ」店主様の試行錯誤と葛藤のお陰で図録も展示も素晴らしい体験ができました。