展覧会「インド・タラブックスの挑戦」@板橋区立美術館

世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦



 

インドの出版社タラブックスの展覧会があると知り、2017年11月26日(日)板橋区立美術館へ、「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」に行ってきました。

 

インド・タラブックスの挑戦のチケット

 

タラブックス

4年前だったか。僕が初めてタラブックスの出版物と出会ったのは、原題:The Night Life Of Treesを吉祥寺のタムラ堂さんによる日本語版仕様にした『夜の木』を手に取ったのが最初。

 

夜の木の絵本

『夜の木』

 

シルクスクリーン印刷によるなんとも美しく、そしてインクの匂いなのか、お香のようなエキセントリックな香りが漂う素敵な大判の絵本。

 

タラブックス(Tara Books)は、南インドにある、”手作り”の絵本の出版社。

 

『夜の木』が一部の人たちで話題となり、僕も当時SNS上などで”同じ穴の狢”の方々と情報交換をしていた時期がありました。

 

なにが”手作り”かというと、まず印刷の技法が、一枚一枚を人の手で刷るシルクスクリーン印刷。さらに製本もすべて手作業。

 

シルク印刷が味わいある綺麗な仕上がりとはいえ、オフセットやデジタルなど印刷技術が発展するこの時代に、手間の掛かるシルクスクリーンを採用し、なぜ世界中を魅了し、そして知れ渡ったのか。

 

世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦

板橋宿区立美術館の入り口

 

板橋区立美術館へは、2015年のイタリア・ボローニャ国際絵本原画展以来。

 

板橋区立美術館の階段

 

展示室に続く二階への階段は、板橋区立美術館ならではのわくわく感が倍増する施し。

 

タラブックスの歴史

 

タラブックスの歴史は94年まで遡ります。

 

『夜の木』の歴代の表紙

『夜の木』の歴代の表紙

 

圧倒的な『夜の木』の歴代の表紙たち。

 

『夜の木』の原画

『夜の木』の原画

 

そして『夜の木』の原画群19点。紙にペン、インク、アクリルなどで描かれています。

 

『水のいきもの』初版

 

2011年に出版された、『水のいきもの』初版。原題:Waterlife

 

『水のいきもの』の原画

 

同じく『水のいきもの』の原画6点。こちらも紙にペン、インク、アクリルで描かれています。

 

『母なる神の布』木版

 

『母なる神の布』の木版。

 

タラブックスの原画

タラブックスの原画

タラブックスの原画

タラブックスの原画

 

他にも全然知らない作品が多数展示されており、新たな発見と本展覧会の網羅性に圧巻。

 

板橋宿区立美術館の館内

板橋宿区立美術館の館内

 

『インド・タラブックスの挑戦』グッズ

『インド・タラブックスの挑戦』グッズ

 

展示室の下、一階(半地下)の物販コーナーでは、本展覧会のグッズが充実していました。

 

『夜の木』トートバッグ

『インド タラブックス』物販

『インド タラブックス』物販

 

『夜の木』のTシャツや、トートバッグは無条件でかっこいい。

ほかにタラブックスのトートバッグや、手ぬぐい、ミスプリントを素材にした缶バッジ、カード各種、シルクスクリーン印刷の展覧会ポスター、などなど、おそらく、ここでしか手に入らないタラブックスヘッズにはたまらない物ばかりでした。

 

僕の戦利品

『夜の木』カード

 

数ある濃い品揃えの中から、一番思入れ深い『夜の木』のカードのみを購入。

 

そして本展覧会のチラシを持って帰りたかったけど、館内のどこにも無い。

 

美術館の方に聞いてみたら、初日で無くなってしまったそうです(初日ってこの日の前日だぞ!)。

 

インド・タラブックスの挑戦のDM

 

しかし、見兼ねた美術館の方からDMをいただきました!

本当にありがとうございました。

 

感想

作品の素晴らしさは、タラブックスのことをすでに知っている人にとっては紛れもないことであり、また、この展覧会に足を運んでいない人に、この記事の画像などを通じて少しでもそれが伝われば幸いと思います。

 

タラブックスが十数万部級のベストセラーを生み出している理由の一つに、作家、画家、デザイナー、編集者、刷り師など一つのチーム全体が、独自の価値観と独自のやり方で仕事をしていることだと感じました。

 

たとえば子ども向けの本の場合は、男の子と同じ数だけの女の子もいるということを忘れないこと。主人公になれるのは男の子だけではありませんから。(ギータ・ウォルフ)

 

読み手のことを考えて、本を作るのは当たり前のことかもしれませんが、タラブックスはその人にとって価値がある絵本を制作するという社員全員のマインドセット、そして素晴らしい趣向をこらした作品に仕上げ、世界を魅了する手法でまい進するクリエイター集団だと認識しました。

 

初めて『夜の木』を知り、手に取り、タラブックスの世界に足を踏み入れ、熱中した一連の体験。

 

これは、僕がやっているWeb制作の仕事でも大事なことと改めて痛感しました。

 

今回小さな子どもと一緒に二人で行って、ゆっくり観れなかったということもあり、会期中にもう一度行こうと思います。

 

そのあとまたブラッシュアップができれば。

 

タラブックスの挑戦 垂れ幕

 

世界を変える美しい本
インド・タラブックスの挑戦

会期:2017年11月25日(土)から2018年1月8日(月・祝)まで
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(1月8日は祝日のため開館)、12月29日〜1月3日
場所:板橋区立美術館
詳細ページ:http://www.itabashiartmuseum.jp/exhibition/ex171125.html
住所:東京都板橋区赤塚5-34-27
巡回開催:愛知県刈谷市美術館 2018年4月21日~6月3日

 

タラブックスのことがわかる関連書籍


世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦

 


タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる

 


夜の木

 




 

資格も取得できるUXDT:【第5回】セルフユーザビリティテスト検定講座

セルフユーザビリティテスト検定講座:UXDT

ユーザーが自身の目標を認識し、その目標を達成するまでの長いノープランの旅の途中で立ち寄る可能性があるWebサイト。

 

そのWebサイトにて、ユーザーの理解・操作をスムーズにしてあげるためのユーザビリティ。

 

2017年11月17日、UX DAYS TOKYO主催の【第5回】セルフユーザビリティテスト検定講座に行ってきました。




 

参加した動機

  • セルフユーザビリティテストの知識が学べる。
  • ワークショップでセルフユーザビリティテストを体験できる。
  • 試験が受けられ合格すると資格を取得できる。
  • 内容の割に安い(と、あとで思った)。

 

ユーザビリティテストは、ローンチする前や改修前に、対象となる被験者(ユーザー)を呼んできて、画面操作を行ってもらい課題を洗い出す重要な工程なのですが、プロジェクトによっては予算とスケジュールの関係で、実際に行えることが難しい実情があります。

 

とはいえ、どんな規模感であれ、Webサイトは人に利用してもらうプロダクトには間違いないので、最低限は自分たち(制作サイド)で、導線確認・操作テストを行い課題を見つけなければなりません。

 

自チームで行うユーザビリティの評価、それが”セルフ”ユーザビリティテスト。

 

イベントの大まかな流れ

  1. 座学(スライドを用い講師によるレクチャー)
  2. テスト(オンラインによる選択式・筆記テスト)
  3. 実践(チームでセルフユーザビリティテストの実査)
  4. 発表(実査で発見した課題の発表)
  5. 余談(講師による事例など)
  6. 懇親会(お酒、オードブル、名刺交換)

 

セルフユーザビリティテスト検定講座

座学

講師によるスライドを交えながら、ユーザビリティテストの必要性、有効性、種類、基本概念の知識を学ぶ。

 

ここでは、ユーザーを呼んできて被験者になってもらうユーザビリティテストを行えなくても、自チームでセルフユーザビリティテストを実施するだけでもWebサイトの品質に大きく差が出ることを認識しました。

 

テスト

座学のあと、Google Forms上で全10問のテストが受けられます。

  • 選択式9問
  • 筆記1問
  • 制限時間10分程度

 

基本的に座学の内容から出題されます。選択式とはいえ、引っ掛けが潜むので落ち着いて回答。

 

このテストに合格すると、UXDT公認ライセンス(民間資格)が取得できます。

 

合否発表通知は1ヶ月以内とのこと。

 

実践と発表

国内の有名な某運送会社と某酒類販売店のサイトを用い、近くにいる人と3人でチームを組み、被験者、モデレーター、記録係りに分かれてセルフユーザビリティテストの実査。

 

某運送会社では、僕は記録係りを担当しましたが、被験者とモデレーターの対面の位置に座ってしまったため、実際画面上で何が起きているのか解らず、被験者の思考発話を頼りにただの書記と化してしまいました。

 

某酒類販売店の時は、僕は被験者となり、当日の20時に冷えたビールを1ケース注文するタスクをこなすことに。いざ。

 

ユーザビリティテストのタスク

 

商品をカートに入れるところまでは進めましたが、フォーム入力でつまづく。

 

全体的に進めにくく、理解しにくい非常に非効率的なサイトの作に、同じチームのモデレーター役と記録係り役の方々と失笑。

 

そのあと、課題・問題の発表を行うのですが、それぞれのチームから様々なテスト結果が発表されました。

 

ツッコミどころ満載な両サイトだっただけに、笑いも起きながらの発表でしたが、これはプロジェクト完遂を目指す制作者側の立場だったら身も凍る結果だと思いました。

 

懇親会

イベント詳細ページには記載されていなかったけど、受講のあと懇親会が始まります。

 

ビール、焼きそば、オードブルなどを出していただき大満足。

 

今回、ディレクター、マーケターの方は10名ほど参加されており、僕はアプリエンジニア、フロントエンドエンジニア、Webデザイナー、プロデューサー、プロダクトオーナーの方々とお話ができ、ユーザビリティは様々な役割の人にとって重要視されていることを感じました。

 

感想

参加前から人気のイベントだと感じていましたが、セルフユーザビリティテストの実施体験や知識を得ることができ、試験を受けて合格すれば資格も取得できる充実した内容。

 

懇親会費、資格の受講費込みの参加費3,000円でかなりお得な時間が過ごせました。

 

UX DAYS TOKYOは、UX関連のイベントを開催しているので、UXデザインのお話も交えつつ、セルフユーザビリティテストの正しい心持ちとスキル、配慮すべきノウハウを学べます。




 

子どものUXデザイン 遊びと学びのデジタルエクスペリエンス




 

調査や行動観察・分析などを行い、利用者のことを先回りして理解し、製品やサービスとユーザーの接点に良い体験をしてもらう。

 

その貴重な時間を有効的に体験してもらうのは何も大人だけでなく、子どもに向けた製品・サービスにもいえます。

 

日々、テクノロジーとともに年々進化しているデジタルネイティブな将来の宝たちのためにも。

 

こんな人たちにオススメの本

  • とにかくUXデザインに興味がある人
  • 教育関係者
  • 0〜12歳までのお子さんを持つ親
  • 玩具メーカーのプロダクトデザイナー
  • 子ども向けテレビ制作チームの人

 

「UX」「エクスペリエンスデザイン」というワードに敏感に反応してしまう人は、この本のタイトルを見ただけでも興味が湧くと思います。

 

本来、子ども向けのアプリやWebサイト制作に携わる人たちに特化した本ではありますが、子どものためのUXの知見は、玩具や子ども向けテレビ番組制作などにも大いに役立つのではないかと思いました。

 

また、僕の場合ですが、Web制作者という立場とともに、いつの間にか親の気持ちになって本書を読み進めており、我が子への考え方、教育・子育てについても感慨深い気持ちになりました。

 

子どもというユーザー層の正体

実際に子ども達にWebサイトやアプリを開発するとしたら、自分だったらどうデザインするのか?

 

子どもをターゲットにしたデザインをするには、大人向けと比べたら「恐らくこう違うだろう」といった漠然とした注意点が予測できると思います。

 

例えば、

  • とにかくカラフルにすればいい。
  • 単純な構造にすればいい。
  • マウスオーバーなどフォードバックを大げさにすればいい。

 

以上のように、相手が子どもだからといって見下した姿勢で大人版よりも手を抜く感覚で臨むと、痛い目に逢うことが読み進めていくうちに分かってきました。

 

第3章では心理学者のジャン・ピアジェの認知発達理論という学術をもとに、子どもの発達の段階構造が記されています。

 

子どもは大人よりも知的能力が”低い”のではなく、年齢ごとに”もの事の捉え方が違う”そういう段階なのだそうです。

 

これを理解・認識せず、大人版よりも”楽”に考えてデザインをするとうまくいかないどころか、堂々巡りの泥沼化に陥る可能性が高いと思いました。

 

子ども向けに限らないUXデザインの考え

数あるUX本の中でも子ども向けに特化した本なのですが、大人と共通のデザイン思想も紹介されています。

 

ゴール(目的)に不釣り合いだったり的外れなデザインではなく、デザインパターンに一貫性を保つ。

 

支払い処理後に、類似商品を表示させるのではなく確認画面に遷移させるといった、操作をしていくうえで期待に添えた動きをさせる。

 

このように、UIに接している時の「安心感」を大事にすることは、子どもにも大人にも共通といえるそうです。

 

また、観察・分析なども共通の実施項目といえますが、子どものUXデザインは大人向け以上に力を注技、注意を払うフェーズだと思いました。

 

子どものUXデザイン ―遊びと学びのデジタルエクスペリエンス

読み終えた感想とまとめ

注目すべきは、全12章中、5章分が、2歳おきに子ども向けのデザインパターン、原則、性質、技法、サイトやアプリの実例、リサーチ及びテストの効果的な実施方法で構成されており、各年齢ごとに考慮しなければならないUXデザインの重要な点を知ることができます。

 

全体的にはデザイン面だけでなく、子どもにつきもである親への対応、子どもに降りかかるネット上の脅威といった注意点も含め、子ども向けのアプリやWebサイトを作るうえで知っておいた方が良い知見が網羅されています。

 

しかし、著者はアメリカ人で、欧米の子どもを基準とした内容となっているため、全ての注意点が日本で通じるとは限りません。例えば、デザイナーの法的義務のことも、あくまでアメリカの場合だったりします。

 

また、大人と共通の知見も得られますが、タイトルの通り子ども向けのアプリやWebサイトのUXデザインに特化した本なので、UXデザインをもっとワイドレンジに学習したい人向けだと思いました。

 

とはいえ、自分にとって「子ども」という今まで未知だったユーザー層と、その対応の仕方を理解できたので、読んでよかったと思います。

 

Webサイトやアプリを利用するユーザー(人間)は、何も大人だけではない時代ですので。