UXデザインセミナー『UX Bridge vol.2』に行ってきました。

『UX Bridge vol.2』に行ってきました。



 

追記:2017年11月18日
スピーカーをされた伊東氏、布目氏のスライドを追加しました。

 

追記:2017年11月1日
スピーカーをされた右田氏、宮下氏、佐伯氏のスライドを追加しました。

 

2017年も終わりに近いですが、ようやく今年初のUXデザイン系のセミナーに行けました。

 

BtoB/BtoBtoCサービスにおけるUX勉強会『UX Bridge vol.2』

 

UXデザインに対して価値観が高くない新入社員のひよっこWebデザイナーを連れて行くのが最大の目的でしたが、人気のイベントだけあって自分だけが抽選に当選。

 

最近UXデザイン系のセミナーは盛んに行われているので、日程が合えば今度こそ連れて行こう。

 

参加した動機

前線でご活躍されているデザイナー、フロントエンジニア、プロダクトマネージャーの方々の視点で、取り組みや考え方、UXデザインがビジネス上でどのような価値をもたらしているか?といったお話が聞けるとのことで興味が湧きました。

 

自分自身のためでもあるのですが、やはり自分が所属する組織・チームの各役割のメンバー達に、自分の立ち位置からUXデザインの価値を知ってもらいたかった。

 

残念ながら結果的に行けたのは僕だけでした。しかも天候も体調も最悪な2017年10月25日に。

 

サービスの転換期とUX改善

プレイド 右田氏:サービスの転換期とUX改善

右田氏は、自社サービスの大規模UX改善の失敗談と軌道修正の経験を具体的に紹介されていました。

 

(余談ですが、個人的に、失敗〜軌道修正にプロジェクトの美学を感じます)

 

機能もクライアントも多様になりUIが散見したので、UIのサマリー要素を強化したものの、「社内に改善の意図がしっかりと伝達されていなかった」「大幅な画面構成の変更」「ユーザビリティテストの未実施」などにより、改修後に混乱を招いたそうです。

 

組織・チームが行動の目標に対し共通認識を持ち、ドッグフーディング、メンバー間でズレをすり合わせ、ユーザーテストをしっかり試みて現在も改善中とのこと。

 

セルフユーザビリティテストは、自チームでも実施していますが、当初は「デザイン思考はチームみんなで仲良くやる」という個人的な印象のもと、みんなで和気あいあいと代わる代わるデバイスを操作しながら進めてザルになってしまい失敗した経験があります。

 

右田氏も提言していましたが、声が大きい人の固定観念で左右が決まってしまい、声の小さい人の貴重な意見や考えが埋もれていくことを注意喚起していました。

 

それにしても失敗談はとても価値があると改めて思いました。

 

右田氏のスライド

 

これまでとこれからの広告UX

Repro 宮下氏:これまでとこれからの広告UX

宮下氏は、YouTubeがスキップできない30秒動画広告を2018年に廃止することや、Chromeが広告ブロック機能の追加をすることを取り上げ、広告においてのUXでは、ユーザー体験を妨害されるような広告はマイナスなることを指摘。

 

また、これからの広告UXの特徴として、ネイティブ広告、広告内でゲームができるプレイアブル広告、ダイナミックリターゲティングなどを挙げていました。

 

ユーザーの目的遂行に「待った」をかける広告が排除される。
アドテクノロジーの進化に注目。

 

以前に読んだことがある「子どものUXデザイン ―遊びと学びのデジタルエクスペリエンス」という本にも、8〜10歳くらいの年齢から広告を嫌い、信用しなくなり、子どもはエクスペリエンスを見捨てる可能性があると指摘されていました。

 

子どものUXデザイン ―遊びと学びのデジタルエクスペリエンス

 

自分もスキップできない動画広告やポップアップするような強制的に足止めを食らうインタースティシャル広告が死ぬほど嫌いですが、適度に目的の邪魔にならない広告ならばいいのかなと思います。

 

結局はユーザーのその時の気分。

 

単純な行動理論では予測できない感情の起伏も考えられるので、広告のUXは難しそうなイメージが残りました。

 

宮下氏のスライド

 

UXとCS(カスタマーサクセス)

弁護士ドットコム 佐伯氏:UXとCS(カスタマーサクセス)

佐伯氏は、デザイナーの立ち位置から見たUXについての心境の変化から説明されていて、UIを通した狭義的なUXにフォーカスしがちだったとのこと。うちのWebデザイナーもその傾向にありました。

 

UXの考え方について、IDEOのティム・ブラウン著:「デザイン思考が世界を変える」に記されている、ボストン→ニューヨーク→ワシントン間を走る高速列車サービスの交通改善のCX、カスタマージャーニーの重要性を例として挙げていました。

 

デザイン思考が世界を変える
著:ティム・ブラウン
(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

僭越ながら、僕もこの本で色々なことに気づかされ、かなり影響を受けました(3冊買って人に配るくらい)。

 

そのCXやカスタマージャーニーと話が繋がりますが、本題にあるCSとはカスタマーサポートではなく、カスタマーサクセスのこと。

 

カスタマーサポート

ユーザーから問い合わせが来た時に対応する受動的な「リアクティブ」

カスタマーサクセス

調査やデータ分析をして、問題が起きそうなところに能動的に働きかける「プロアクティブ」

 

上記でどちらがUXの考え方に近いかといったら後者。

 

たしかに、CS(カスタマーサクセス)は、UXと同意義に感じました。

 

CS(カスタマーサクセス)のことを詳しく知りたいという方に、馬田隆明氏のスライドを読むことを勧めておりました。

Takaaki Umada presentations | SlideShare

 

セミナーでは紹介されていませんでしたが、馬田隆明氏の著作物で、「逆説のスタートアップ思考」という本もおすすめです。

 

逆説のスタートアップ思考
著:馬田 隆明
(中公新書ラクレ 578)

 

「サービスのUXに課題を感じたらCSを思い出す!」

 

なるほど納得しました。

 

佐伯氏のスライド

 

コンセプト設計におけるUXデザイン

ProfitMakers 布目氏、伊東氏:コンセプト設計におけるUXデザイン

何年か前に、Schoo(だったか)でWebディレクターの田口真行氏もおっしゃっていたのを思い出しましたが、

 

「UX」は、バズワードになるずっと以前から、当たり前のように行われてきたこと。布目氏もこのように述べていました。

 

そして以下、業務の緊急やりとりが発生し、講義に集中できなくなる・・・。

 

さらに体調が悪化。

 

なんとかメモれたのがこれ。

 

よくあるWEB系事業の設計

模倣するサービスの調査→UX設計→UI設計

本来あるべき事業の設計

CI設計→コンセプト設計→UX設計→UI設計

 

製品自体にも、パッケージにも、什器POPにも、販路にも、コンセプトは最後まで付いてくるもの。それは、WEB系のサービスにも言えるでしょう。

 

 

感想・まとめ

登壇者の話は各々20分程度ですが、無料でここまで具体的で様々な内容を聞けてお得だなと思いました。

 

UXデザインの概念に関しては登壇者の方々は共通認識を持たれていましたが、各々のUXデザインにおける取り組み、失敗談、改善方法、専門的なフィールドに絞った知見を得ることができ、とても勉強になりました。

 

【先着枠追加】UX Bridge vol.2




 

カワイハルナ 個展『海を見る』を見に行く。

カワイハルナ 個展「海を見る」



 

海が見たい。

 

カワイハルナさんと本個展を知ったのはいしいひろゆきさんのツイッターのタイムライン。

 

DMに描かれていた海が見える風景の一部に惹かれました。

 

この日は内林武史さんの展示とハシゴだったのですが、偶然にもお二人のテーマの一環が「記憶」で、感慨深くなりそうななにかを予感。

 

PARK GALLERY(末広町)
PARK GALLERY(末広町)

 

会場である秋葉原のパークギャラリーへ行くのは初めて。公園横にある素敵な佇まい。

 

いざ。

 

カワイハルナ 個展「海を見る」

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

 

こじんまりとした空間に、存在感がある8点の風景が並ぶ。

 

作品:風が通る場所
作品:風が通る場所

 

夏っぽい青空の中、壁にタオルが掛けられ、関係性が感じられない物が点々と存在する意味不明な風景。不思議と穏やかな風を感じながらここで寝っ転がりたくなる。

 

作品:風が通る場所
作品:風が通る場所

 

なんか奥行きを感じると思ったら、背面に画用紙、手前に透明アクリル板の2レイヤー構造。中央のオブジェに自然の影がついている。

 

作品:海のあれこれ
作品:海のあれこれ

 

「海はどこ?」とよく見たら丸い穴の向こうが海になっていました。

 

作品:三角が横たわる部屋
作品:三角が横たわる部屋

 

不思議なインテリアはキューブリックの映画「時計じかけのオレンジ」の一幕を思い出す。

 

作品上:なかに海を 作品下:夢の中
作品上:なかに海を 作品下:夢の中

 

カワイハルナさんが創造する世界はとても心地よさを感じる。作中によく登場するカーテンやタオルみたいな布で、清潔感と風を表現されているからだと思う。

 

作品:曲面のなか
作品:曲面のなか
作品:円と板
作品:円と板
作品:部屋を横切る丸太
作品:部屋を横切る丸太

 

力学や物理学が好きな方なのだろうか。整合性をとりたくなり考えこみながら見入ってしまう。

 

ポップでシュルレアなランドスケープ。

 

戦利品

カワイハルナDMといしいひろゆきのZINE

 

カワイハルナさんの物販はなく今回の個展のDMと、いしいひろゆきさんのZINEを購入。

 

ですが、会期中に発注すると、受注生産で今回の個展で展示されている原画のポスター(原画実寸)を3,000円で購入できるそうです。

 

カワイハルナ 個展「海を見る」@PARK GALLERY

 

そういえば、本個展に行くきっかけとなったDMに描かれていた絵はどこだ?

 

と思ったら、いちばん最初に観た「風が通る場所」の作品に似ている。しかし、雲やタオルの形が若干変わっているし、無いはずのオブジェクトが「風が通る場所」にはある。

 

最初は「きっと未完成の状態でDMに使用したのだろう」と思ったけど、そうではない。どちらも同じ記憶であり、同じ風景。どちらも完成品。と、解釈しました。

 

これからもますますカワイハルナさんの展示に足を運びたいと思いました。

 

カワイハルナ個展「海を見る」
http://park-tokyo.com/post/165279496681/kawaiharuna
PARK GALLERY
東京都千代田区外神田3-5-20
会期:2017/10/11(水)~2017/10/22(日)
時間:13:00~20:00
休館:月曜日・火曜日




内林武史 展 Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]

内林武史 展 Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]



 

先月の小林健二さんの展示会に続き、10月18日にギャラリー椿へ内林武史さんの展示会に行ってきました。

 

内林武史さんの展示は、同じくギャラリー椿GT2で2年前の2015年に開催された「Another Planet*」以来。

 

その「Another Planet*」では、初めてご本人とお会いし、不思議なオブジェ(装置)を丁寧に紹介してくださって、オブジェ(装置)のスイッチが切り替えるたびに現実から夢の世界へと切り替わる体験をさせていただきました。

 

残念ながら今回はご本人にお会いすることができず。

 

しかし、今回も普段の生活では味わえない世界が用意されていました。

 

Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]

ギャラリー椿GT2の一部屋目
ギャラリー椿GT2の一部屋目

 

GT2の一部屋目。さっそく所々に何かが発光しているのが目に飛び込み、外の京橋の喧騒を一瞬で忘れる。

 

『alu』は「在る」、「或る」などの”ある”
光、音、色、匂い…脳裏に刻み込まれた記憶。
初めてみる光景に懐かしさを憶える、
そんな感覚で楽しみ頂けたらと思います。
-内林武史さんの説明文より引用-

 

説明文を読んでGT2のメインルームを一周。

作品:内包された機械と空気
作品:内包された機械と空気

 

裸同然で閉じ込められたシステムと空気は、この菅の中でともに永遠の存在となった。

 

作品:D.L.C model:1817 No.397
作品:D.L.C model:1817 No.397

 

やっぱ発光する鉱石を見ると落ち着く。「ここに来た」と実感する。

 

作品:月の軌道と。
作品:月の軌道と。

 

今回、僕が見入ってしまった作品の一つ。遠い記憶の断片が額装された空間の中で今でも時が流れているよう。

 

作品:機械の脳と宇宙の砂
作品:機械の脳と宇宙の砂

 

右上の丸い窓の中では鉱石が緩やかに点滅していました。

 

作品:Ishmedail
作品:Ishmedail
作品:Ishmedail
作品:Ishmedail

 

鉱石の研究にひたすら没頭できそうな空間。お気に入りの鉱石を持ち出しノクターンビュリズムを決め込みたくなる。

 

GT2奥の小部屋
GT2奥の小部屋

 

幻想っぷりがさらに増した、薄暗いGT2の奥の小部屋に移動。

 

作品:引き出しに流れる時間
作品:引き出しに流れる時間

 

「引き出しに流れる時間」なんて素敵な作品名だろうと立ち止まった。

普段、いつも目の前に見えている風景には無意識に時の流れを感じていますが、当然引き出しの中でも時間は流れている。

 

作品:対話する菌類の標本
作品:対話する菌類の標本

 

「生物の標本」と考えると薄気味悪いけど(笑)、昔出会ったキノコとこうして今も一緒に過ごせたら素敵だと思いました。

 

作品:星の棲む灯台
作品:星の棲む灯台

 

作品:alusola
作品:alusola

 

菅や額に収められていることにより、現実とは切り離されているけど過去の曖昧な記憶はこれから大切に保管されていく感じがしました。

 

作品:build-SQ 01〜02
作品:build-SQ 01〜03

 

幼少の頃、寂しさを感じる夜に窓を開けると灯りがついている建物を見て安心した気持ちになったことがあります。

 

作品:build-SQ 01〜03

 

バックに映る建物の光と影がきれいなランドスケープ。

 

作品:いちばん近い星(スイッチ)
作品:いちばん近い星(スイッチ)

 

GT2の奥の小部屋との境界線にあるスイッチ。

これを押すと・・・

 

作品:いちばん近い星

作品:いちばん近い星
作品:いちばん近い星

 

大きな星(恒星?)の鉄塔に灯りが!

 

作品:いちばん近い星
作品:いちばん近い星

 

鉄塔の脇にクレーンで吊るされている土星。

 

作品:いちばん近い星
作品:いちばん近い星

 

幻想的な現象。

 

団地やクレーンや鉄塔といった風景は、内林武史さんのアトリエがある東雲の風景にリンクしているようにも感じました。

 

 

遠い記憶をこういった形でアウトプットできるなんて素敵すぎる。

 

幼少の頃、母と行った広い原っぱのあの公園は一体どこだったのだろう?
夜中に目を覚ました時に台所にいたあの怪人はなんだったのだろう?
僕にはそういった子供の頃の曖昧な記憶がいくつもあります。

 

夢だったのか?
現実だったのか?
空想だったのか?

 

どうしても思い出せません。

 

普段、仕事で必要な知識をインプットし、忘れないように言葉に出したり、文章にしたり、議論を交わしてみたりして記憶を少しでも持続させようとしています。

 

当然それらは今仕事で必要なことばかり。

 

だけど、今回の内林武史さんの展示で思ったことは、現在の記憶も忘れたくないだけど、幼少の頃の遠い曖昧な記憶もこれ以上忘れたくない。それも今の自分には必要なのだと。

 

内林武史さんが具現化した「風景」に訪れて、僕はそう思いました。

 

内林 武史 展 DM

 

内林武史 展 Takeshi UCHIBAYASHI exhibition [alu]
http://www.gallery-tsubaki.net/2017/takeshi_uchibayashi/info.htm

2017年10月7日(土)〜10月21日(土)
11:00 AM〜6:30 PM
日・祝 休廊