Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで




 

近年、ますます「UXデザイン」という言葉を見かけるようになり、僕もこの言葉を多用しているひとりです。

 

UXの定義については、人によって見解が違うことがいまだに身近でも多々見受けられ、その問題に加えてUXデザインの導入方法の難しさも課題になっていると感じます。

 

僕がこの本を手にいれた目的は以下の2つ

 

  1. Web制作者としてのUXデザインのノウハウが学べそう。
  2. Web制作者としてUXデザインの導入方法が、より現実的に学べそう。

 

UXは、日本の中小企業にはまだ浸透しきれていない分野です。クライアントの案件や、自分が所属するチームを含めた組織でいきなり「UXデザインというものをやります」と言われてもなかなか難しいと肌で感じています。

 

なにより、当然UXデザイン自体を自分が理解していないと始まりません。

 

この本では、現場のプロ(執筆陣である株式会社IMJの方々)が、これからWeb制作においてUXデザインを取り入れようとしている人に向けたコンセプトで作成された本であり、また、この本自体が、そういった人をターゲットユーザーに置いたUXデザインによって作られているのが興味深いです。

 

つまり、最近UXデザインの見解・手法・導入方法を知りたがっている、日頃Web制作の業務に従事している人物像がターゲットになっています。

 

そこが、今までに多数存在するUX関連の本にはない特徴です。

 

Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで

 

1章のUXデザインとは?から始まり、ユーザビリティ評価、プロトタイピング、ペルソナ、ユーザー調査、カスタマージャーニーマップ作成など、UXデザインを実行するうえで実践的な2章〜7章では、手法の説明・基本的な実施手順・環境や経験による難易度に合わせたやり方・推薦書籍の紹介・注意点などでまとめられており、8章ではUXデザインを組織に導入する取り組みが紹介されています。

 

さらに本書の特典として、シナリオ作成、カスタマージャーニーマップ、共感ペルソナ、ステークホルダーマップ、導入シナリオといった最初に自分で用意するには大変そうなシートがテンプレート(パワーポイントとPDFの2種類)としてダウンロードでき、いきなり本書と同じような進め方が可能ですし、ご自身で使いやすい様に改変も可能です。

 

個人的に目から鱗だったのは、8章の「UXデザインを組織に導入する」で、UXデザインを組織全体に理解してもらう道筋が書かれており、この内容の途中までは自分が実施してきたこととほぼ一致しており、ある意味今までの行動が報われたような気がしました。これでよかったのか?そしてまさにこの後どうするか?と迷っていた矢先でしたので、とても参考になりました。

 

【感想】

UXデザイン系の本はたくさんありますが、この本はWeb制作においてのUXデザインを導入するために、とても現実的に肌身で感じる内容でした。

 

初級〜中級の人向き。
初級の人にとっては、Web制作におけるUXデザインを体系的に知ることができ、実務内容も具体的に書かれているので大変オススメです。

 

中級以上の人にとっても、自社(自分)以外の手法を知ることができるので、今までのやり方に対して見直せることができます。

 

実践的な部分では、ユーザビリティ評価、ユーザー調査といった一般ユーザーを集めなければ実施できないのでは?といった心配も、まずは家族や友達、自社内の人間相手からでも始める実施法が紹介されており、今後はハードルが低く感じることと思います。

 

UXの考察自体、日頃の生活からでもできるのです。

 

UXデザインに興味を持たれている人はすでに感じていると思いますが、本書を読んだら”現状よりもいっそうWeb制作が楽しくなるのは間違いない”と自信を持って言えます。




 

何が無駄で何が大切かを考えるWebデザイン設計




 

特に難しい話ではないのですが、軽率なWebデザイナーと接触した時に説明したお話の内容です。

 

トレンドとはその名の通り移り変わっていくものであり、人間の思考もいつか変わる時が来る可能性があります。

 

そしてもう一つ、物事の存在には理由があります。

 

Web制作・運用をする際、UI実装、SEO対策などそれら一つひとつが明確な理由に基づいて適切に行えているかいないかによって、気づかないところでユーザーに不快を与えている可能性があります。

 

ユーザーは「何かを達成する」「満足を得る」までに様々なUIと接触します。

 

近年、簡単にカッコよく実装できてしまう便利なJSライブラリやCSSフレームワークが多く存在します。

 

もうどれも見慣れていると思いますが、スライドショー、モーダルウィンドウ、スクロールスパイなど、どれもユーザーがWebサイト内で「おっ?」と感じるアクションが特徴。

 

これらを発想・開発した人たちには、当然それを作るにあたり理由があったと思います。

 

その理由は、Webサイトを利用するユーザーの利便性や満足度のため。

 

Webサイトは、グラフィック・デザインの要素を兼ね備えたプロダクト・デザインであり、「人間が閲覧する・人間が操作する・人間が感じる」といった、ユーザーの動向・意識・思考を対象にした設計を施し、「人間が目的を達成する」ための道筋となります。

 

その適切な判断をし、実装するのがWebサイトの設計者、デザイナーの役目なのですが、単に「流行っているから」「カッコいい」「今風」というのは、この業界ではあまり的確な理由にはなりません。

 

そもそもこれでは自分のデザインに対し、明快な説明にもなりません。

 

Webサイトは目標達成のために最も有力な仮説を立てて、オープン後も試行錯誤し変化し続けるものです。「カッコいい」「今風」「無難」という理由で実装してしまうと、改善しなければならない時に、何が問題だったのかが解りづらくなり、困ることになるでしょう。

 

さらに、Webサイトは人間が利用し、判断するものなので、UIという段階を一つひとつ踏んで目的を達成するまでに過剰な演出が邪魔になることがあります。

 

何が無駄で何が大切か?

 

論理的理由に基づくWebデザイン設計は、Web制作・運用をやっていく人間が最低限持つべき思考です。




 

鴨沢祐仁 展 – KITAHARA collection –

鴨沢祐仁 展 - KITAHARA collection -

鴨沢祐仁展、奥の原画

 

2017年8月4日、横浜市にあるMERRY ART GALLERYへ「鴨沢祐仁展 – KITAHARA collection -」に行ってきました。クシー君やレプス君の原画はもちろん、銀河鉄道の夜の原画や生前最後の作品、氏の愛用品などが展示されていた鴨沢祐仁の不思議な世界観を体験してきました。

【僕にとっての鴨沢祐仁】

鴨沢祐仁の展示会が開催されると知って、まず最初に「やっとこの日が来たか」と思いました。

 

鴨沢祐仁さんは、漫画家/イラストレーター/グラフィックデザイナーとして活躍された方で、70年代の漫画雑誌ガロで漫画家としてデビュー。その後、様々なメーカーの広告などのデザイン、CDジャケットのイラストなどを手掛け、多くの人にそのファンタジックな世界観が広まったのだと思います。

 

僕はいつしか宮沢賢治、稲垣足穂の世界観が本格的に好きになり、同じ世界観を持つ小林健二、たむらしげる、内林武史といった現在もご活躍されている作家を追いかけるようになりました。その中の一人として、鴨沢祐仁さんも必然的に好きになったのです。

 

当時の僕はWebデザイナーとして働いていましたが、職場環境が最悪な時期で、いわゆるデスマーチという納期はあるけど作業の終わりが見えないような残業まみれの日々を送っていました。心が病みかけたちょうどその時期、鴨沢祐仁さんの漫画やイラストと出会って、救われた気がしたのです。

 

クシー君の漫画

 

タバコをくわえた少年と兎、ロボット、頭が土星の紳士、寂しさを感じさせない夜の風景、どこかファンタジックな街角の風景。

 

それは、現実と非現実のはざまのような世界。まさに「夢の中」のような世界。平和で暖かさを感じる世界。僕は熱中しました。

 

現実逃避だったのかも知れません。ですが、確かに救われた気がしたのです。

 

そして、僕が鴨沢祐仁さんのファンになったのは2008年の他界後。ネットで調べると他界後も氏のイベントは何度か行われており、いつか鴨沢祐仁のイベントが開催されたら絶対に行こうと思っていたのです。

 

【素敵なMERRY ART GALLERY】

横浜市にあるMERRY ART GALLERYへは初めて行きました。

 

みなとみらい線の元町・中華街駅6番出口から地上に出た瞬間、いきなり視界に広がるアメリカ山公園の庭園風景にビックリしました。

 

アメリカ山公園

 

アメリカ山公園を抜けて、右手に外人墓地を眺めながら山手のハイソな街なみを歩き、MERRY ART GALLERYに到着。

 

横浜MERRY ART GALLERY

 

東京の場末に住んでて、毎日都心で仕事をしている僕にとって、MERRY ART GALLERYに到着するまでの普段とは違う風景は、これから体感する不思議な鴨沢ワールドと現実世界の境のように思えました。

 

ギャラリーの中に入ってすぐに受付があり、そこで入場料500円を払い、靴を脱いでいざ。

 

平日の早い時間だったので、独占状態。そして、畳一畳分幅の奥に長いギャラリースペースに息を飲みました。もうまるで銀河鉄道の車中。

 

MERRY ART GALLERYの内観

 

この空間演出はヤヴァい…。

 

「千と千尋の神隠し」のような気分というか…、とにかく現実から完全に遮断されたことを確信しました。

 

【そして鴨沢ワールドへ】

左側から奥へと進み、往復しながら展示物を見てまわりました。

 

ガラスのショーケースを覗くと、氏が愛用していた品々や、写真がありました。奥さんの写真?かと思ったら、若き日の長髪時代の鴨沢祐仁さんでした。実は美男子だったのです。

 

鴨沢祐仁展ショーケース

 

鴨沢祐仁さんの作品にはたまにロボットが登場しますが、ショーケース内に展示されていたASIMOのフィギュアを見て、現代盛んなロボット開発にも注目していたのかなと思いました。他界してからもうすぐ10年になりますが、現在のAI技術の発達を知ったら、きっと興奮されるのではないでしょうか。

 

僕の大好きなビックリ水族館の原画もありました。
(下の写真左)

 

ビックリ水族館の原画

 

銀河鉄道の夜も、もちろんありました。

 

銀河鉄道の夜

 

北原照久氏の事務所で描いた、生前最後の作品であり、本展示会で一番サイズが大きい作品。このシンメトリーの不思議な技法で描かれた絵で一番足を止めました。

 

鴨沢祐仁生前最後の作品。

 

折り返すと、購入可能なジークレーがずらっと並んでいます。

 

鴨沢祐仁ジークレー

 

展示名にもなっていますが、これらの展示物は全て北原照久氏のコレクション。今回の展示会が開催されたことに感謝いたします。

 

【鴨沢祐仁展の戦利品】

残念ながら、図録やグッズの販売はありませんでした。

 

唯一の販売物はジークレーのみで、僕にとっては高価だったため手に入れることはできず、DMを記念に持って帰りました。

 

鴨沢祐仁 展 - KITAHARA collection - DM

 

スタッフさんにグッズのことを尋ねたら、「ここから近くにある「ブリキのおもちゃ博物館」の物販コーナーに鴨沢さんのポストカードがあるかも」という情報をいただき、早速足を運びました。

 

ブリキのおもちゃ博物館

 

館内は旅行客でごった返し。北原照久さんがいらしたので、握手したかったのですが、お忙しそうだったので断念。

 

鴨沢祐仁さんのポストカードありました!しかも108円!5〜6種類ありましたが、あえてこの1枚にしました。何故かと言うと、

 

鴨沢祐仁ポストカード

 

久しぶりに訪れた今日の横浜山手は、時おり雨がパラついたり晴れ間が現れたりの曇り空。不安定な天気、横浜山手の街並み、そしてウキウキした気持ちにフィットしたのがまさにこの絵だったので。

 

鴨沢祐仁 展 – KITAHARA collection –
http://merry-art.jp/category/now/

MERRY ART GALLERY本館
2017年7月22日(土)~8月27日(日)
※会期中 月曜日 休館日 11:00~19:00

アクセス
http://merry-art.jp/access/

 

【追記:2018.4.5】

没後10年を追悼して、鴨沢祐仁さん初イラスト集『Xie’s Club Book 〜鴨沢祐仁イラスト集〜』が、2018年5月23日にP-VINE ブックスから発売するようです。


XIE’S CLUB BOOK ~鴨沢祐二イラスト集~

楽しみすぎますね。