企業と顧客の暗黙知の前提を導き出すギャップファインディング




 

UXにおいてバイアスを払い、コンテキストを理解し、ユーザーのインサイトを知ることは主眼点となっています。

 

ユーザーの真の欲求を検出し、問題を解決するために活用するカスタマージャーニーマップ。それにくわえて、ギャップファインディングという手法がとても効果的なのだと先日参加したワークで実感しました。

 

B2Bブランディングセミナー 活用できるカスタマージャーニーの作り方~ギャップファインディングというアプローチ~

主催:株式会社 大伸社コミュニケーションデザイン

 

ギャップファインディングとは

異なった分野と比較し、アイデアを得る。

 

このセミナーでわかりやすく例に出されていたのは、救急医療のシーンとF1のピットインのシーン。

救急医療

F1のピットイン

 

目的と対象が違うまったく別の分野でも、こうやって見ると、どこか相似していることに気づきます。

 

問題に直面している事柄と、共通・相似したすでに成功をおさめている事柄とを照らし合わせることにより、ピタリと前者に後者の成功法が当てはまる可能性があるのでは。

 

ギャップとは

ギャップファインディングを実施するうえで、「ギャップ」=「暗黙知の前提」を理解する。

 

企業も顧客も、商品やサービスの既存の「仕組み」「形状」「存在価値」が当たり前の現状だと思い込んでいることが多い。よって、その商品やサービスを利用しているユーザーの潜在的な不満や課題・期待がカモフラージュされてしまう。

 

その企業と顧客が持つ強力なバイアスこそが「ギャップ」=「暗黙知の前提」であり、そのギャップをカスタマージャーニマップや、先述の異なったカテゴリーとの比較から導き出すのがギャップファインディング。




セミナーの内容

レクチャー

ここではブランディングや、カスタマージャーニーマップ作成のコツ、ギャップファインディングについてのレクチャーを聞く。

本記事では、ブランディングや、カスタマージャーニーマップの説明は割愛します。

 

ミッション

ここから実際にワークショップに入ります。

ペルソナであるうつ病の患者さん(40代男性)自身が期待すらできなかったギャップを埋める問題を抽出し、うつ病患者さんが笑顔になれるアイデアを考える。

 

ペルソナの読み込み〜カスタマージャーニーマップ作成

5〜6人でチームを組み、すでに用意されているペルソナのストーリーを各メンバーが頭に入れ、各プロセス毎にペルソナの感情、ゴールを書き記した付箋やカードを時系列に並べ、カスタマージャーニーマップを完成させていく。

 

ギャップファインディングの実施

ジャーニーマップから汲み取れる感情や行動の情報から、ペルソナが本当は何を求めていたのかを分析。

 

さらに別カテゴリー(分野)のイノベーションサービスが集約されたアイデア集が各チームに一時配布され、それらを参考に比較し、アイデアのヒントをみつける。

 

分析結果

ペルソナが何を求めているか?

このペルソナは、症状が出はじめた初期の段階から自分がうつ病であることをひた隠す感情を持ち、それに伴った行動を各プロセスでとっていたせいで、全てが裏目に出る泥沼の行進を歩むことになっていた。

 

そこに着目し、うつ病の予防や治療といった病気自体の対策よりも、それらをも包括した、うつ病を肯定するある種の世界観が思い浮かんできました。

 

そもそも、世間のうつ病自体に対する印象がいけないのでは?

 

「風邪を引いたので今日は会社を休みます・・」
「昨日から風邪を引いちゃってさ、まいったよ・・」
「風邪引きそうな気がする・・」

 

同じ病気なのに誰もがここまで気軽に人に主張できる病気「風邪」。

 

うつ病も、風邪のように気軽に人に打ち明けられるようにならないものか?

 

別カテゴリー(分野)との比較

主催の大伸社さんが用意してくださった膨大なアイデア集を眺めてても、限られた時間内でマッチするものが見つけられなかった。むしろ、自分の知らないイノベーションがこんなにもあるのだなと、職業柄、感心してしまっていた。

 

前段で汲み取れたように、うつ病は人々に受け入れがたい分野なのかもしれない。

 

人々に受け入れがたい分野・・・。
その分野が人々に受け入れらた過去の実例・・・。

 

僕は「オタク」が思い浮かんだ。

 

80年代、タレントの宅八郎のキャラクター性や、当時実際に起った悪質で悲しい事件により、オタクは「気持ち悪いやつ」「危ないやつ」というレッテルが貼られていた。

 

00年代に入り、2ちゃんねるや、電車男というテレビドラマや映画を中心に、オタクと呼ばれる人たちに明るいスポットが当てられ、聖地となった秋葉原を中心に様々なカルチャーが生まれる。

 

オタクは「気持ち悪いやつ」から「キモカワイイ」存在となり、やがて市民権を得て、今や先端性すら感じるようになった。

 

アイデアの創出

うつ病に対する世間のネガティブな印象を、ポジティブな世界へと変遷させることに着想してからは、オタク文化への成り立ちに照らし合わせることに限らず、様々な奇抜なアイデアがチーム内から産声を上げた。

 

ここからのスピード感はすごかったし、一番盛り上がりました。

 

その中でも僕はやっぱり、オタク文化への変遷がマッチした。さらに前述の通り、今さら語るまでもない効果の威力を兼ね備えた映画やドラマの放映という、新鮮味に欠ける施策も有りだと思いはじめました。

 

「新鮮味に欠ける」ということはある意味「確立されている」ということ。

 

プロジェクトとして進行する際、未知のプロダクトやサービスは、プロトタイピング、素早いリリース、そして評価などを繰り返す試行錯誤の開発期間がかかる。

 

プロジェクトの予算の問題は置いといての話ですが、

 

その点、映画やドラマはありきたりとも言えるけど、幾年も大衆に親しまれている媒体であるがゆえ、今さらユーザーの学習理解度(ユーザービリティテスト)の心配はないし、PRのノウハウ、制作の専門家も充実しているので、時間という資源の消費の節約ができるという見解に至った。

 

このセミナーで得たこと

ギャップファインディングのレクチャーを受けているとき、経済学者で日本大学准教授の安藤至大氏の言葉を思い出した。

 

世の中のいろいろな現象を突き詰めて考えると、一見するとまったく別のことなのに背景にあるメカニズムがよく似ている現象が見つかることなんです。

 

別の畑を覗くことが有効なのはどこかで学んだつもりではいたけど、今回のワークを通して、ギャップファインディングという確立されたフレームとして学べたのは収穫でした。

 

そしてギャップファインディングを行うには精度の高いペルソナやカスタマージャーニーマップが必要だということも(本ワークショップでのカスタマージャーニーマップ作成方法は割愛します)。

 

最後の一つは、
テクノロジーを駆使したイノベーションを起こすことにこだわる自分を取り払うことができたこと。

 

画期的なイノベーションを起こすことが目的ではなく、あくまで問題を解決することが目的なのだと。

 

今所属している組織のWebサイト上で、「手段はなんでもいい」なんてカッコつけた自分のコメントは、ただ”騙っていただけ”だったと気づき、恥ずかしい気持ちにもなってきました・・・。

 

大伸社コミュニケーションデザインさんは、多くのエクスペリエンスデザイナー、エスノグラファー、ストラテジストを擁する会社で、今回のような有用なセミナーを惜しみなく開催されています。

 

僕がクライアントだったら依頼してみたい魅力的な会社だと思いました。