UXデザインセミナー『UX Bridge vol.2』に行ってきました。

『UX Bridge vol.2』に行ってきました。



 

追記:2017年11月18日
スピーカーをされた伊東氏、布目氏のスライドを追加しました。

 

追記:2017年11月1日
スピーカーをされた右田氏、宮下氏、佐伯氏のスライドを追加しました。

 

2017年も終わりに近いですが、ようやく今年初のUXデザイン系のセミナーに行けました。

 

BtoB/BtoBtoCサービスにおけるUX勉強会『UX Bridge vol.2』

 

UXデザインに対して価値観が高くない新入社員のひよっこWebデザイナーを連れて行くのが最大の目的でしたが、人気のイベントだけあって自分だけが抽選に当選。

 

最近UXデザイン系のセミナーは盛んに行われているので、日程が合えば今度こそ連れて行こう。

 

参加した動機

前線でご活躍されているデザイナー、フロントエンジニア、プロダクトマネージャーの方々の視点で、取り組みや考え方、UXデザインがビジネス上でどのような価値をもたらしているか?といったお話が聞けるとのことで興味が湧きました。

 

自分自身のためでもあるのですが、やはり自分が所属する組織・チームの各役割のメンバー達に、自分の立ち位置からUXデザインの価値を知ってもらいたかった。

 

残念ながら結果的に行けたのは僕だけでした。しかも天候も体調も最悪な2017年10月25日に。

 

サービスの転換期とUX改善

プレイド 右田氏:サービスの転換期とUX改善

右田氏は、自社サービスの大規模UX改善の失敗談と軌道修正の経験を具体的に紹介されていました。

 

(余談ですが、個人的に、失敗〜軌道修正にプロジェクトの美学を感じます)

 

機能もクライアントも多様になりUIが散見したので、UIのサマリー要素を強化したものの、「社内に改善の意図がしっかりと伝達されていなかった」「大幅な画面構成の変更」「ユーザビリティテストの未実施」などにより、改修後に混乱を招いたそうです。

 

組織・チームが行動の目標に対し共通認識を持ち、ドッグフーディング、メンバー間でズレをすり合わせ、ユーザーテストをしっかり試みて現在も改善中とのこと。

 

セルフユーザビリティテストは、自チームでも実施していますが、当初は「デザイン思考はチームみんなで仲良くやる」という個人的な印象のもと、みんなで和気あいあいと代わる代わるデバイスを操作しながら進めてザルになってしまい失敗した経験があります。

 

右田氏も提言していましたが、声が大きい人の固定観念で左右が決まってしまい、声の小さい人の貴重な意見や考えが埋もれていくことを注意喚起していました。

 

それにしても失敗談はとても価値があると改めて思いました。

 

右田氏のスライド

 

これまでとこれからの広告UX

Repro 宮下氏:これまでとこれからの広告UX

宮下氏は、YouTubeがスキップできない30秒動画広告を2018年に廃止することや、Chromeが広告ブロック機能の追加をすることを取り上げ、広告においてのUXでは、ユーザー体験を妨害されるような広告はマイナスなることを指摘。

 

また、これからの広告UXの特徴として、ネイティブ広告、広告内でゲームができるプレイアブル広告、ダイナミックリターゲティングなどを挙げていました。

 

ユーザーの目的遂行に「待った」をかける広告が排除される。
アドテクノロジーの進化に注目。

 

以前に読んだことがある「子どものUXデザイン ―遊びと学びのデジタルエクスペリエンス」という本にも、8〜10歳くらいの年齢から広告を嫌い、信用しなくなり、子どもはエクスペリエンスを見捨てる可能性があると指摘されていました。

 

子どものUXデザイン ―遊びと学びのデジタルエクスペリエンス

 

自分もスキップできない動画広告やポップアップするような強制的に足止めを食らうインタースティシャル広告が死ぬほど嫌いですが、適度に目的の邪魔にならない広告ならばいいのかなと思います。

 

結局はユーザーのその時の気分。

 

単純な行動理論では予測できない感情の起伏も考えられるので、広告のUXは難しそうなイメージが残りました。

 

宮下氏のスライド

 

UXとCS(カスタマーサクセス)

弁護士ドットコム 佐伯氏:UXとCS(カスタマーサクセス)

佐伯氏は、デザイナーの立ち位置から見たUXについての心境の変化から説明されていて、UIを通した狭義的なUXにフォーカスしがちだったとのこと。うちのWebデザイナーもその傾向にありました。

 

UXの考え方について、IDEOのティム・ブラウン著:「デザイン思考が世界を変える」に記されている、ボストン→ニューヨーク→ワシントン間を走る高速列車サービスの交通改善のCX、カスタマージャーニーの重要性を例として挙げていました。

 

デザイン思考が世界を変える
著:ティム・ブラウン
(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

僭越ながら、僕もこの本で色々なことに気づかされ、かなり影響を受けました(3冊買って人に配るくらい)。

 

そのCXやカスタマージャーニーと話が繋がりますが、本題にあるCSとはカスタマーサポートではなく、カスタマーサクセスのこと。

 

カスタマーサポート

ユーザーから問い合わせが来た時に対応する受動的な「リアクティブ」

カスタマーサクセス

調査やデータ分析をして、問題が起きそうなところに能動的に働きかける「プロアクティブ」

 

上記でどちらがUXの考え方に近いかといったら後者。

 

たしかに、CS(カスタマーサクセス)は、UXと同意義に感じました。

 

CS(カスタマーサクセス)のことを詳しく知りたいという方に、馬田隆明氏のスライドを読むことを勧めておりました。

Takaaki Umada presentations | SlideShare

 

セミナーでは紹介されていませんでしたが、馬田隆明氏の著作物で、「逆説のスタートアップ思考」という本もおすすめです。

 

逆説のスタートアップ思考
著:馬田 隆明
(中公新書ラクレ 578)

 

「サービスのUXに課題を感じたらCSを思い出す!」

 

なるほど納得しました。

 

佐伯氏のスライド

 

コンセプト設計におけるUXデザイン

ProfitMakers 布目氏、伊東氏:コンセプト設計におけるUXデザイン

何年か前に、Schoo(だったか)でWebディレクターの田口真行氏もおっしゃっていたのを思い出しましたが、

 

「UX」は、バズワードになるずっと以前から、当たり前のように行われてきたこと。布目氏もこのように述べていました。

 

そして以下、業務の緊急やりとりが発生し、講義に集中できなくなる・・・。

 

さらに体調が悪化。

 

なんとかメモれたのがこれ。

 

よくあるWEB系事業の設計

模倣するサービスの調査→UX設計→UI設計

本来あるべき事業の設計

CI設計→コンセプト設計→UX設計→UI設計

 

製品自体にも、パッケージにも、什器POPにも、販路にも、コンセプトは最後まで付いてくるもの。それは、WEB系のサービスにも言えるでしょう。

 

 

感想・まとめ

登壇者の話は各々20分程度ですが、無料でここまで具体的で様々な内容を聞けてお得だなと思いました。

 

UXデザインの概念に関しては登壇者の方々は共通認識を持たれていましたが、各々のUXデザインにおける取り組み、失敗談、改善方法、専門的なフィールドに絞った知見を得ることができ、とても勉強になりました。

 

【先着枠追加】UX Bridge vol.2




 

シルバー・イノベーションはデザイナーの吉祥性が鍵




 

身近な環境を見渡すと、僕が所属している組織でも少子化の波が思いっきりかぶさっています。

 

我が家も子供は1人で今後2人目が欲しいところですが、今はいろいろな事情でなかなか授かることができません。

 

少子高齢化。

 

先日、僕が大好きなテレビ番組でシルバー・イノベーションのことが取り上げられていました。

 

経済学視点の番組オイコノミア

「オイコノミア」は、Eテレのテレビ番組で、吉本興業の又吉直樹が毎回いろいろな経済学者とともに様々なテーマを経済学的視点の角度から考察していきます。

 

行動経済学などが好物のマーケター・Webディレクター・UXデザイナー・IA(インフォメーションアーキテクト)のみならず、企業人全般にオススメの番組だったりします。

 

毎回おもしろい内容で毎週欠かさず観ているのですが、今回の「経済学で目指せ! 明るい高齢化」は特に感慨深い内容だったので、ブログに記録することにしました。

 

シルバー・イノベーションとは

本題に戻りますが、シルバー・イノベーション(高齢者向け技術革新)とは、その名の通り、高齢者の方々をターゲットにした新たな価値を創造することで、僕は言葉としては初めてこの番組で知り、興味が湧いてきました。

 

ご存知、日本は今世界のどの国よりも高齢化が進んでいます。

 

直近2016年の世界の高齢化率(高齢者人口比率)の国別比較統計ランキングでは、日本が1位で26.86%、2位のイタリアでは22.75%、3位のギリシャでは21.60%となっており、1位の日本から下は22位まで全てヨーロッパ諸国です。

出典:GLOBAL NOTE 世界の高齢化率(高齢者人口比率) 国際比較統計・推移
https://www.globalnote.jp/post-3770.html

 

【世界の高齢者人口】

  • 2015年 約6億人
  • 2035年 約10億人

 

世界の高齢者人口は、35年には約10億人に膨れ上がるらしいです。

 

さらにアジアの高齢者向け市場だけでも2035年には、約500兆円に昇るという試算が出ていることがわかりました。

 

今の日本はシニア向けのイノベーションが生まれやすい

深刻な状況に変わりないのですが、逆にこれを日本のGDPを向上させるチャンスとして捉える考え方が、番組で紹介されていました。

 

これからはヨーロッパ諸国を中心に、他の国が日本に遅れて高齢化が進んでいきます。

 

決定的打開策はないと言われている今、日本が直面している高齢者の医療や介護、雇用などの多くの高齢化問題に対し、革新的なアイデアを生み出す動向に深い関心を示す人たちが1人でも多く増えれば、日本人によるシルバー・イノベーションが生まれやすくなるはずなのです。

 

日本は今、どの国よりも先立って、今後世界で増加傾向の高齢化問題に取り組むモデルとしてだけでなく、多くのメソッドが生み出せる機会に恵まれていることがいえます。

 




 

革新的なデザイナーが必要な時代

今、少子化によって日本の人口が少なくなっていますが、人口が少ないからといってGDPが減るわけではないそうです。

 

大切なのはイノベーティブな考えを持った人たちが多いか少ないかの問題で、今までとは違うことを考えようとする人たちが必要になってくるとのことです。

 

つまり、イノベーティブなことを考える人の比率を増やしていかないと人口が減ってった時にイノベーションが起こりにくくなるのです。

 

イノベーションが起こらないとGDPは下がる一方。では、どんな人が適任なのか。

 

僕はデザイナーだと考えています。

 

文頭でオイコノミアがマーケター・Webディレクター・UXデザイナー・IA(インフォメーションアーキテクト)の人たちにオススメと書いてしまったのは、こういったデザイナー的資質を持った人たちこそ、イノベーションを起こしやすいのでは?と感じたからだと思いました(一概には言えませんが)。

 

デザインという観点は、ビジネスの諸問題をまったく新しいかたちへと変化させる。右脳から出てくる発想は、ビジネスの大きな課題を解決するうえでより重要になりつつある。デザイナーはその本質として、消費者の行動、思考、感情を深く理解し、そのニーズに感情移入する傾向がある。彼らは、ごく小さな洞察であっても掘り出すことができ、それが、左脳で考える人間には思いもつかないような、あっと驚く技術革新につながっていく。

引用:WIRED
https://wired.jp/innovationinsights/post/social/w/design-inspires-future/

 

人々のニーズを探り出し、飛躍的発想で生活を豊かにする―それが「デザイン思考」だ。物事の機能的な性能だけでなく、感情的な価値をも考慮に入れる。それを通じて、人々の隠れた(潜在的な)ニーズを把握し、機会へと置き換えるのだ。デザイン思考家の人間中心のアプローチを利用することで、新しい製品やサービスを人々の既存の行動に結び付け、受け入れられる可能性を高めることができる。

引用:デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) ティム・ブラウン(著), 千葉 敏生 (翻訳)

 

デザイナーの重要性というより、吉祥性を浸透させる。

最後にオイコノミアでは、第一に、(変わり者)(今までと違うことを考える人)など、イノベーティブな人を評価するような価値観を、まずみんなが持つことが大事。と紹介していました。

 

番組中に、経済学者の大竹文雄さんが、(変わり者)(今までと違うことを考える人)という表現をしていましたので、特に”デザイナーでなくてはならない”というわけではありません。

 

しかし、革新を意識しながらも、ビジネスを理解し、問題解決を生業にしているデザイナーこそ、一番期待できるのはないでしょうか。

 

最近では国内でも大手企業がデザイナーの重要性に気づき、そして、デザイン思考な制作会社や、そういった意識を持っているデザイナー個人も少しづつ増えてきていると思います。

 

ですが現実的には、未だ中小企業までは浸透しきれていないのが現状です。

 

重要性というよりも、もはや吉祥性。これからのデザイナー達はシルバー・イノベーションを起こす前に、まず、そういった意識を中小企業を含む日本全体に持たせる”デザイン”をするべきなのかなと思いました。

 

僕の場合、まずは自身が所属する組織からだ。




 

異次元ポップなイラストレーター:いしいひろゆき




 

久しぶりに胸が踊る作家を見つけました。

 

イラストレーターの「いしいひろゆき」さんです。

 

惑星探査機カッシーニが長年の役目を終えるニュースを見たり、先日行ってきた小林健二さんの展示会などもあり、興奮が冷めずTwitterで「土星」を検索しまくっていたら、たまたま、いしいひろゆきさんの存在を知りました。

 

ご本人のTwitter上で紹介されていた、FRaUという雑誌で使用されている一枚の挿絵を見て、今後自分はこの人に注目していくだろうと直感的に思いました。

 

 

幻想的で、どこか70〜80年代を感じさせる不思議な一枚。

 

2016年から本格的に活動されてたとのことで、個展もちょくちょくやっていたらしく、もっと早く知っとけばよかったと後悔しています。

 

パステルカラーによるファンシーな作風が特徴で、ユニークなキャラクターが繰り広げるストレンジポップな世界はついついじっくりと見入ってしまいます。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/162972909476/clouds

 

FRaUという雑誌の他にも、WIREDの表紙やQUICK JAPANでも仕事をされいたようで、海外でも注目を浴びているそうです。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/157190948276/cover-and-inside-illustrations-for-wiredjp-vol27

 

追記:10月3日

Web制作者御用達のオンラインスクール、Schooのイベントでもビジュアルデザインを担当されてらした模様。

 

 

ピースフルなエッセンスを感じる異次元ポップ・ワールド。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/160694532891/raisin-sandwich-acrylic-pen-colored-pencil

 

Illustratorで描かれているようですが、手描きでも描かれているようです。

原色のような明確じゃないパステルカラーなのでとてもファンタジック。ベタ塗りのフラットな感じから、子ども向けの絵本も出して欲しいと思いました。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/146532642616/park

 

トロピカルムードなアメリカ西海岸のニューエイジ的リラックス感(なんだそりゃ)。

 

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/138323161441/museum-at-shallow-sea-海続きの美術館

http://hiroyukiishii.tumblr.com/post/130876270646/sunset-さんせっと

 

杉浦茂、たむらしげる、佐々木マキ、久里洋二を初めて知った時のようなワクワク感いっぱいで、今後の展開が非常に気になります。

 

ハマりました。

 

本文中、いしいひろゆきさんの公式SNSから引用させて頂きました。

 

いしいひろゆき(Hiroyuki Ishii)

Twitter
https://twitter.com/ishii_hiroyuki_

Tumblr
http://hiroyukiishii.tumblr.com

Instagram(Works)
https://www.instagram.com/ishii_hiroyuki_/

Instagram(Illustration)
https://www.instagram.com/ishii_hiroyuki_illustration/




 

インフォグラフィックで見る138億年の歴史:宇宙の始まりから現代世界まで




本屋で人類学のコーナーを物色していたら発見。これだから読書はやめられない。

 

インフォグラフィックとは、情報を視覚的に表したもので、今やグラフィックデザインには欠かせない表現方法の一つです。グラフなどがわかりやすい例ではないでしょうか。

 

当然Webデザインでも多く活用されており、データに動きをつけて可視化するD3.jsのようなJavaScriptライブラリも存在します。

 

この書物は、ビックバンから現代までに起きた出来事をインフォグラフィック化したもので、様々な分野の専門家の協力を経て、ほぼ一人のデザイナーが90点以上に及ぶインフォグラフィックをデザイン。

 

テーマは「人類誕生以前」「文明以前」「1900年くらいまで」「現代」と大きく4段階に分かれています。

 

時代が進むにつれ、ページ内で使われている色数が多くなり、デザインも今風に変化していくコンセプトが、読み進めるにあたりとても面白いと思いました。

 

「宇宙はいつ誕生したのか?」

 

に始まり、

 

「人類はどのように世界に広まったのか?」

「技術革命はいつ起きた?」

「古代文明は何を発明したのか?」

「どんなふうに音楽を買っている?」

「経済恐慌で失業するのは誰?」

「インターネットの地図」

「人類の未来」

 

といった興味深く学ぶべきところがあるデータ。

 

そして、ロンドンのデザイナー、ヴァレンチナ・デフィリッポによるテーマに沿った美しいデザインとアイデアも参考になりました。

 

インフォグラフィックで見る138億年の歴史:宇宙の始まりから現代世界まで

 

Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで




 

近年、ますます「UXデザイン」という言葉を見かけるようになり、僕もこの言葉を多用しているひとりです。

 

UXの定義については、人によって見解が違うことがいまだに身近でも多々見受けられ、その問題に加えてUXデザインの導入方法の難しさも課題になっていると感じます。

 

僕がこの本を手にいれた目的は以下の2つ

 

  1. Web制作者としてのUXデザインのノウハウが学べそう。
  2. Web制作者としてUXデザインの導入方法が、より現実的に学べそう。

 

UXは、日本の中小企業にはまだ浸透しきれていない分野です。クライアントの案件や、自分が所属するチームを含めた組織でいきなり「UXデザインというものをやります」と言われてもなかなか難しいと肌で感じています。

 

なにより、当然UXデザイン自体を自分が理解していないと始まりません。

 

この本では、現場のプロ(執筆陣である株式会社IMJの方々)が、これからWeb制作においてUXデザインを取り入れようとしている人に向けたコンセプトで作成された本であり、また、この本自体が、そういった人をターゲットユーザーに置いたUXデザインによって作られているのが興味深いです。

 

つまり、最近UXデザインの見解・手法・導入方法を知りたがっている、日頃Web制作の業務に従事している人物像がターゲットになっています。

 

そこが、今までに多数存在するUX関連の本にはない特徴です。

 

Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで

 

1章のUXデザインとは?から始まり、ユーザビリティ評価、プロトタイピング、ペルソナ、ユーザー調査、カスタマージャーニーマップ作成など、UXデザインを実行するうえで実践的な2章〜7章では、手法の説明・基本的な実施手順・環境や経験による難易度に合わせたやり方・推薦書籍の紹介・注意点などでまとめられており、8章ではUXデザインを組織に導入する取り組みが紹介されています。

 

さらに本書の特典として、シナリオ作成、カスタマージャーニーマップ、共感ペルソナ、ステークホルダーマップ、導入シナリオといった最初に自分で用意するには大変そうなシートがテンプレート(パワーポイントとPDFの2種類)としてダウンロードでき、いきなり本書と同じような進め方が可能ですし、ご自身で使いやすい様に改変も可能です。

 

個人的に目から鱗だったのは、8章の「UXデザインを組織に導入する」で、UXデザインを組織全体に理解してもらう道筋が書かれており、この内容の途中までは自分が実施してきたこととほぼ一致しており、ある意味今までの行動が報われたような気がしました。これでよかったのか?そしてまさにこの後どうするか?と迷っていた矢先でしたので、とても参考になりました。

 

【感想】

UXデザイン系の本はたくさんありますが、この本はWeb制作においてのUXデザインを導入するために、とても現実的に肌身で感じる内容でした。

 

初級〜中級の人向き。
初級の人にとっては、Web制作におけるUXデザインを体系的に知ることができ、実務内容も具体的に書かれているので大変オススメです。

 

中級以上の人にとっても、自社(自分)以外の手法を知ることができるので、今までのやり方に対して見直せることができます。

 

実践的な部分では、ユーザビリティ評価、ユーザー調査といった一般ユーザーを集めなければ実施できないのでは?といった心配も、まずは家族や友達、自社内の人間相手からでも始める実施法が紹介されており、今後はハードルが低く感じることと思います。

 

UXの考察自体、日頃の生活からでもできるのです。

 

UXデザインに興味を持たれている人はすでに感じていると思いますが、本書を読んだら”現状よりもいっそうWeb制作が楽しくなるのは間違いない”と自信を持って言えます。




 

何が無駄で何が大切かを考えるWebデザイン設計




 

特に難しい話ではないのですが、軽率なWebデザイナーと接触した時に説明したお話の内容です。

 

トレンドとはその名の通り移り変わっていくものであり、人間の思考もいつか変わる時が来る可能性があります。

 

そしてもう一つ、物事の存在には理由があります。

 

Web制作・運用をする際、UI実装、SEO対策などそれら一つひとつが明確な理由に基づいて適切に行えているかいないかによって、気づかないところでユーザーに不快を与えている可能性があります。

 

ユーザーは「何かを達成する」「満足を得る」までに様々なUIと接触します。

 

近年、簡単にカッコよく実装できてしまう便利なJSライブラリやCSSフレームワークが多く存在します。

 

もうどれも見慣れていると思いますが、スライドショー、モーダルウィンドウ、スクロールスパイなど、どれもユーザーがWebサイト内で「おっ?」と感じるアクションが特徴。

 

これらを発想・開発した人たちには、当然それを作るにあたり理由があったと思います。

 

その理由は、Webサイトを利用するユーザーの利便性や満足度のため。

 

Webサイトは、グラフィック・デザインの要素を兼ね備えたプロダクト・デザインであり、「人間が閲覧する・人間が操作する・人間が感じる」といった、ユーザーの動向・意識・思考を対象にした設計を施し、「人間が目的を達成する」ための道筋となります。

 

その適切な判断をし、実装するのがWebサイトの設計者、デザイナーの役目なのですが、単に「流行っているから」「カッコいい」「今風」というのは、この業界ではあまり的確な理由にはなりません。

 

そもそもこれでは自分のデザインに対し、明快な説明にもなりません。

 

Webサイトは目標達成のために最も有力な仮説を立てて、オープン後も試行錯誤し変化し続けるものです。「カッコいい」「今風」「無難」という理由で実装してしまうと、改善しなければならない時に、何が問題だったのかが解りづらくなり、困ることになるでしょう。

 

さらに、Webサイトは人間が利用し、判断するものなので、UIという段階を一つひとつ踏んで目的を達成するまでに過剰な演出が邪魔になることがあります。

 

何が無駄で何が大切か?

 

論理的理由に基づくWebデザイン設計は、Web制作・運用をやっていく人間が最低限持つべき思考です。




 

鴨沢祐仁 展 – KITAHARA collection –

鴨沢祐仁 展 - KITAHARA collection -

鴨沢祐仁展、奥の原画

 

2017年8月4日、横浜市にあるMERRY ART GALLERYへ「鴨沢祐仁展 – KITAHARA collection -」に行ってきました。クシー君やレプス君の原画はもちろん、銀河鉄道の夜の原画や生前最後の作品、氏の愛用品などが展示されていた鴨沢祐仁の不思議な世界観を体験してきました。

【僕にとっての鴨沢祐仁】

鴨沢祐仁の展示会が開催されると知って、まず最初に「やっとこの日が来たか」と思いました。

 

鴨沢祐仁さんは、漫画家/イラストレーター/グラフィックデザイナーとして活躍された方で、70年代の漫画雑誌ガロで漫画家としてデビュー。その後、様々なメーカーの広告などのデザイン、CDジャケットのイラストなどを手掛け、多くの人にそのファンタジックな世界観が広まったのだと思います。

 

僕はいつしか宮沢賢治、稲垣足穂の世界観が本格的に好きになり、同じ世界観を持つ小林健二、たむらしげる、内林武史といった現在もご活躍されている作家を追いかけるようになりました。その中の一人として、鴨沢祐仁さんも必然的に好きになったのです。

 

当時の僕はWebデザイナーとして働いていましたが、職場環境が最悪な時期で、いわゆるデスマーチという納期はあるけど作業の終わりが見えないような残業まみれの日々を送っていました。心が病みかけたちょうどその時期、鴨沢祐仁さんの漫画やイラストと出会って、救われた気がしたのです。

 

クシー君の漫画

 

タバコをくわえた少年と兎、ロボット、頭が土星の紳士、寂しさを感じさせない夜の風景、どこかファンタジックな街角の風景。

 

それは、現実と非現実のはざまのような世界。まさに「夢の中」のような世界。平和で暖かさを感じる世界。僕は熱中しました。

 

現実逃避だったのかも知れません。ですが、確かに救われた気がしたのです。

 

そして、僕が鴨沢祐仁さんのファンになったのは2008年の他界後。ネットで調べると他界後も氏のイベントは何度か行われており、いつか鴨沢祐仁のイベントが開催されたら絶対に行こうと思っていたのです。

 

【素敵なMERRY ART GALLERY】

横浜市にあるMERRY ART GALLERYへは初めて行きました。

 

みなとみらい線の元町・中華街駅6番出口から地上に出た瞬間、いきなり視界に広がるアメリカ山公園の庭園風景にビックリしました。

 

アメリカ山公園

 

アメリカ山公園を抜けて、右手に外人墓地を眺めながら山手のハイソな街なみを歩き、MERRY ART GALLERYに到着。

 

横浜MERRY ART GALLERY

 

東京の場末に住んでて、毎日都心で仕事をしている僕にとって、MERRY ART GALLERYに到着するまでの普段とは違う風景は、これから体感する不思議な鴨沢ワールドと現実世界の境のように思えました。

 

ギャラリーの中に入ってすぐに受付があり、そこで入場料500円を払い、靴を脱いでいざ。

 

平日の早い時間だったので、独占状態。そして、畳一畳分幅の奥に長いギャラリースペースに息を飲みました。もうまるで銀河鉄道の車中。

 

MERRY ART GALLERYの内観

 

この空間演出はヤヴァい…。

 

「千と千尋の神隠し」のような気分というか…、とにかく現実から完全に遮断されたことを確信しました。

 

【そして鴨沢ワールドへ】

左側から奥へと進み、往復しながら展示物を見てまわりました。

 

ガラスのショーケースを覗くと、氏が愛用していた品々や、写真がありました。奥さんの写真?かと思ったら、若き日の長髪時代の鴨沢祐仁さんでした。実は美男子だったのです。

 

鴨沢祐仁展ショーケース

 

鴨沢祐仁さんの作品にはたまにロボットが登場しますが、ショーケース内に展示されていたASIMOのフィギュアを見て、現代盛んなロボット開発にも注目していたのかなと思いました。他界してからもうすぐ10年になりますが、現在のAI技術の発達を知ったら、きっと興奮されるのではないでしょうか。

 

僕の大好きなビックリ水族館の原画もありました。
(下の写真左)

 

ビックリ水族館の原画

 

銀河鉄道の夜も、もちろんありました。

 

銀河鉄道の夜

 

北原照久氏の事務所で描いた、生前最後の作品であり、本展示会で一番サイズが大きい作品。このシンメトリーの不思議な技法で描かれた絵で一番足を止めました。

 

鴨沢祐仁生前最後の作品。

 

折り返すと、購入可能なジークレーがずらっと並んでいます。

 

鴨沢祐仁ジークレー

 

展示名にもなっていますが、これらの展示物は全て北原照久氏のコレクション。今回の展示会が開催されたことに感謝いたします。

 

【鴨沢祐仁展の戦利品】

残念ながら、図録やグッズの販売はありませんでした。

 

唯一の販売物はジークレーのみで、僕にとっては高価だったため手に入れることはできず、DMを記念に持って帰りました。

 

鴨沢祐仁 展 - KITAHARA collection - DM

 

スタッフさんにグッズのことを尋ねたら、「ここから近くにある「ブリキのおもちゃ博物館」の物販コーナーに鴨沢さんのポストカードがあるかも」という情報をいただき、早速足を運びました。

 

ブリキのおもちゃ博物館

 

館内は旅行客でごった返し。北原照久さんがいらしたので、握手したかったのですが、お忙しそうだったので断念。

 

鴨沢祐仁さんのポストカードありました!しかも108円!5〜6種類ありましたが、あえてこの1枚にしました。何故かと言うと、

 

鴨沢祐仁ポストカード

 

久しぶりに訪れた今日の横浜山手は、時おり雨がパラついたり晴れ間が現れたりの曇り空。不安定な天気、横浜山手の街並み、そしてウキウキした気持ちにフィットしたのがまさにこの絵だったので。

 

鴨沢祐仁 展 – KITAHARA collection –
http://merry-art.jp/category/now/

MERRY ART GALLERY本館
2017年7月22日(土)~8月27日(日)
※会期中 月曜日 休館日 11:00~19:00

アクセス
http://merry-art.jp/access/

 

【追記:2018.4.5】

没後10年を追悼して、鴨沢祐仁さん初イラスト集『Xie’s Club Book 〜鴨沢祐仁イラスト集〜』が、2018年5月23日にP-VINE ブックスから発売するようです。


XIE’S CLUB BOOK ~鴨沢祐二イラスト集~

楽しみすぎますね。




 

横尾忠則 HANGA JUNGLE 展

横尾忠則 HANGA JUNGLE 展



 

15年ぶりの極彩色な非現実的世界へ。

 

2014年に行きそびれた「谷中安規展」のリベンジも兼ねて、町田市立国際版画美術館まで行ってきました。

 

横尾忠則さんの展覧会に来たのは現代美術館で行われた「森羅万象」以来だからおよそ15年ぶり。

 

久しぶりにあの非現実的な世界観を体験したかったのと、新作を含む大御所様のほぼ全ての版画作品が展示されると聞いて行くしかないと思っていました。

 

 

来てよかったー!!と、いきなり強烈な作品群。

 

 

以下、画像は順不同です。




 

 

神秘的な世界観の作品は前田常作さんを思い出す。

 

 

70年代、横尾先生は入院生活や親交関係にあった三島由紀夫氏の死によって精神的に辛い時期を過ごしたそうです。

 

その辛い世界から抜け出すために、桃源郷的な作風を数々と生み出しました。

 

 

さらに70年代といえばヒッピーカルチャー。作品からは、それらのバックグラウンドも強く感じます。

 

 

そしてTadanori  Yokooといえば……

 

 

妖しくてアングラなErooos!!!

 

横尾先生の総天然色な作品イメージからかけ離れた落ち着いた作品もありました。

 

奥様をモデルにデッサンした「Yasue」シリーズや、女性の後ろ姿シリーズの「Hair」「Head」など。

 

 

Y字路が特にそうですけど、横尾先生の多様なパターン化したシリーズものは飽きがこなく楽しめる。

 

いっけん版画とは思えない仕事、そしてまさに密林に迷い込んだような作品点数のボリューム感。

 

 

(まあ、もう出口なんか見つからなくてもいいや)

 

 

さらに横尾先生といえば予想外な展開のコラージュ作品。

 

 

昔からこの女達のシリーズ好き。

 

 

よ〜く見るとたくさんの切手。

 

 

寺山修司や唐十郎、土方巽などのアングラ感満載のポスター。今回「天井桟敷」は展示されてなかったなー。

 

 

最後にスタンプを押して帰りました。

 

 

一言で感想を言うと「サイケデリック!」若かった15年前から良くも悪くも成長していない自分。

 

シルク、木版、銅版、オフセット……あらゆるプリント手法を駆使し、横尾忠則だからこそ創造できる超版画の世界。

 

以前、色校正会社の知り合いが「横尾さんは色や刷りにとても厳しかった」と言ってたのをふと思い出した。

 

印刷業界の人がビビるくらい、今回の展覧会でその極道っぷりをもろに感じます。

 

自分がしたいことをしていれば評価などは気にならない。評価を気にしている段階ではまだ自分がしたいことが本当にできていない証拠だと思う。

 

横尾忠則さんのこの言葉は本当に好きで、今の自分の仕事にも生きている。

 

展覧会公式カタログが我らが国書刊行会から出ています!
掲載点数のボリュームはもちろん、1ページに大きく印刷された迫力あるページも多く充実した内容。

横尾忠則全版画 HANGA JUNGLE 公式カタログ

 

【横尾忠則 HANGA JUNGLE 展】
会期:2017年4月22日(土)~6月18日(日)
会場:町田市立国際版画美術館
休館日:月曜日
時間:平日 10:00~17:00 (入場は16:30まで)
土・日・祝日 10:00~17:30 (入場は17:00まで)
Webサイト

 

次の巡回先は神戸にある横尾忠則現代美術館です。
2017年9月9日(土)~12月24日(日)