「ロシアの装丁と装画の世界」展

「ロシアの装丁と装画の世界」展



 

ここへ来るのはきくちちきさんの「ねこのそら原画展」以来約2年ぶり。

 

ロシアの素敵な装丁・装画の本達が集まった「ロシアの装丁と装画の世界」展を観に、高円寺にある絵本の古本屋さん「えほんやるすばんばんするかいしゃ」へ行ってきました。

 

えほんやるすばんばんするかいしゃ

 

一階の展示スペースに足を踏み入れた瞬間、ズラーっと目に押し寄せて来るロシア語の書物群。

 

 

50年代〜80年代までの旧ソ連時代の書物群。

 

(全く関係ないですけど、旧ソ連時代といえばブルガーコフの「犬の心臓」が好きです)

 

本の厚さもサイズもバラっバラ。そして「読んでくれ」と言わんばかりにワクワクする様々なデザインの表紙がズラリ。

 

ロシアの本

 

その統一感の無さと、圧倒的な未知の情報量が「まず何を」「どうすればいいのか」が解らなくなる程の興奮を覚えました。

 

これらは一体何の書物なのか?どの本も手に取って中身を確認したくなる衝動に駆られる。

 

いっけん、絵本?児童書?小説?アートブック?と思いきや、実はガイドブックみたいなのもありました。

 

 

中には、幻想的なイラストが描かれている本もありますが、ロシア語の文章で埋め尽くされている本もあります。

 

ロシア語を全く知らない僕には、パラパラ読んでも理解できない内容。

 

でも、この展示の魅力は、中身の内容(情報)ではなく、自分が気になった表紙から感じとる個人の「自由な想像」にあると思います。




英語ならともかく、ロシア語で書かれた予想できないタイトルだけど、素敵なフォントスタイル。

 

アート系のジン?かと思いきや中身はガイドブック?(笑)みたいな期待を裏切られる楽しみ。

 

あれは結局、何の本だったんだろうと解らないまま帰る楽しみ。

 

入り口から正面の棚は「見返しが素敵な本」という素敵なコーナー。

 

見返しが素敵な本

 

表紙よりもグッと惹かれる絵やパターンデザイン、テクスチャの見返しもありました。

 

今はWeb制作の仕事をしているけど、以前は印刷・製本の仕事をやっていた事があるので、”くるみ方”まで気になってしまいました。

 

そして装画コーナーの方がまた気になりだし、戻るの繰り返し。

 

因みに、展示物の本は自由に手に取る事ができ、気に入った本は購入もできちゃいます!

 

全ての本を確認したわけではありませんが、お値段は数百円から数千円程度(一部抽選販売)。

 

店主様の話によると、今日の展示物はごく一部らしく、出番を待っている本達がまだまだあるそうです。なので、訪れるたびに別の本が並んでいる可能性がありますね。

 

さらに嬉しい事に本展示会の図録も販売されていました。
これから見るのが楽しみです。
※この図録に関してはまた別の機会に書こうと思います。

 

「ロシアの装丁と装画の世界」図録

 

撮影も自由で、気楽に楽しめる展示ではありますが、主催された店主様から色々なお話を聞いた時、この展示会に対しての熱い思いと尽力を感じました。

 

とても面白いコンセプトで貴重な展示会。

 

グラフィック系のDTPデザイナーさんは特に楽しめるはず。

 

会期中に行けたらもう一度行きたい。

 

買いそびれた本があるので。

 

あのよく解んないガイドブックみたいなヤツ。

 

「ロシアの装丁と装画の世界」
http://blog.goo.ne.jp/nabusuraynohe

  • 会場:えほんやるすばんばんするかいしゃ(東京都杉並区高円寺南3-44-18 1階)
  • 会期:2017年5月20(土)〜2017年6月11(日)
  • 営業時間:14時~20時
  • 定休日:水曜

 

【追記 2017年6月18日】

「ロシアの装丁と装画の世界」が巡回することになったそうです!
http://blog.goo.ne.jp/nabusuraynohe/e/8d60b3f7ca5014cfc94bb165831d5463

 

「ロシアの装丁と装画の世界」巡回展
会期:2017年 6月30日(金) ~ 7月19日(水)
時間:11:00~19:00
定休:木曜
場所:紙片
広島県尾道市土堂2-4-9  あなごのねどこの庭の奥
http://trokkisk.wixsite.com/teraokakeisuke/blank

 




 

「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展

「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展

1月の兵庫県立美術館から始まり、名古屋、そしてついに東京へ!
この日をどんなに待ちわびたことか。

 

ヘンリー・ダーガー以来のアウトサイダーアート界の巨匠の展覧会へ、初日である2017年4月29日に東京ステーションギャラリーへ行って参りました。

 

東京ステーションギャラリーへは、2015年の「『月映(つくはえ)』田中恭吉・藤森静雄・恩地孝四郎」ぶり。

 

開館は午前10時から。
11時から12時半くらいまで館内に居ましたが、意外と混んでなく、ゆっくりじっくりと楽しめました。




 

アドルフ・ヴェルフリ-Adolf Wölfli(1864-1930)は、スイス出身のアウトサイダーアート・アールブリュットのアーティスト。
アウトサイダーアートだけに、やはりヴェルフリも精神を患いながら、新奇で独特な素晴らしい世界を多く生み出しています。

 

ヴェルフリの作風は、一見トライバルで宗教画的な模様に見え、同じアウトサイダーアートのオーギュスタン・ルサージュのような緻密な仕事をこなしています。

 

予想外な色彩。曖昧な遠近法。規則正しいけど自由な描画。

 

不遇な人生を送ってきたアウトサイダーアートの芸術家だからこそ作り上げられる悲しみや辛さ、そして希望で構築されたパラレルワールド。

 

普段、Webデザインもやる僕ですが、あの設計思想と色彩感覚とレイヤーは、とても自分には表現できる自信がありません。

 

「残業だー」「給料少ねー」「デザイン浮かばねー」「設計が決まらねー」等と日頃ぼやいている自分が愚者だったんだと『グシャっ』とヴェルフリの世界に潰された感覚を味わいました。

 

今回、ヴェルフリの作品を初めてまじまじと見ていて新たに気づいた事が2点ありました。

 

ぎっしりと詰め込まれた描画の中に、「ぐでたま」の様な可愛いキャラクターや、「逆柱いみり」の作品に登場する憎めない軟体獣のような生き物がたまに潜んでいる事(それらはカタツムリや小鳥だと後に判明)。

 

そいつらがとにかく可愛い。ヴェルフリの生涯をある程度知っての上で閲覧に臨んでいたので、勝手に感じていた緊張感がちょっと解けて顔がほころびました。

 

もう1点は、今回一緒に同行したデザイナーがとても興味深い事に気付く。
作品の中には、たまに時計が描かれているのですが、どの作品の時計も針が「1時半過ぎ」を指しているのです。

 

これは何の意味があるのか?無意味なのか?ヴェルフリにとって、この「1時半過ぎ」とはどんな時だったのでしょうか?

 

最後に図録とポストカードを一枚購入。

 

アドルフ・ヴェルフリ図録ポストカード

 

アートやグラフィックデザインが好きな方は絶対に行っておいた方がいいです。
滅多に拝めるものではありませんので。

 

あと、自分の今の環境に不満があるクリエイターにもおすすめ。

 

『アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国』
東京ステーションギャラリー
会期:2017年4月29日(土)―6月18日(日)
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201704_adolfwolfli.html