横尾忠則 HANGA JUNGLE 展

横尾忠則 HANGA JUNGLE 展



 

15年ぶりの極彩色な非現実的世界へ。

 

2014年に行きそびれた「谷中安規展」のリベンジも兼ねて、町田市立国際版画美術館まで行ってきました。

 

横尾忠則さんの展覧会に来たのは現代美術館で行われた「森羅万象」以来だからおよそ15年ぶり。

 

久しぶりにあの非現実的な世界観を体験したかったのと、新作を含む大御所様のほぼ全ての版画作品が展示されると聞いて行くしかないと思っていました。

 

 

来てよかったー!!と、いきなり強烈な作品群。

 

 

以下、画像は順不同です。




 

 

神秘的な世界観の作品は前田常作さんを思い出す。

 

 

70年代、横尾先生は入院生活や親交関係にあった三島由紀夫氏の死によって精神的に辛い時期を過ごしたそうです。

 

その辛い世界から抜け出すために、桃源郷的な作風を数々と生み出しました。

 

 

さらに70年代といえばヒッピーカルチャー。作品からは、それらのバックグラウンドも強く感じます。

 

 

そしてTadanori  Yokooといえば……

 

 

妖しくてアングラなErooos!!!

 

横尾先生の総天然色な作品イメージからかけ離れた落ち着いた作品もありました。

 

奥様をモデルにデッサンした「Yasue」シリーズや、女性の後ろ姿シリーズの「Hair」「Head」など。

 

 

Y字路が特にそうですけど、横尾先生の多様なパターン化したシリーズものは飽きがこなく楽しめる。

 

いっけん版画とは思えない仕事、そしてまさに密林に迷い込んだような作品点数のボリューム感。

 

 

(まあ、もう出口なんか見つからなくてもいいや)

 

 

さらに横尾先生といえば予想外な展開のコラージュ作品。

 

 

昔からこの女達のシリーズ好き。

 

 

よ〜く見るとたくさんの切手。

 

 

寺山修司や唐十郎、土方巽などのアングラ感満載のポスター。今回「天井桟敷」は展示されてなかったなー。

 

 

最後にスタンプを押して帰りました。

 

 

一言で感想を言うと「サイケデリック!」若かった15年前から良くも悪くも成長していない自分。

 

シルク、木版、銅版、オフセット……あらゆるプリント手法を駆使し、横尾忠則だからこそ創造できる超版画の世界。

 

以前、色校正会社の知り合いが「横尾さんは色や刷りにとても厳しかった」と言ってたのをふと思い出した。

 

印刷業界の人がビビるくらい、今回の展覧会でその極道っぷりをもろに感じます。

 

自分がしたいことをしていれば評価などは気にならない。評価を気にしている段階ではまだ自分がしたいことが本当にできていない証拠だと思う。

 

横尾忠則さんのこの言葉は本当に好きで、今の自分の仕事にも生きている。

 

展覧会公式カタログが我らが国書刊行会から出ています!
掲載点数のボリュームはもちろん、1ページに大きく印刷された迫力あるページも多く充実した内容。

横尾忠則全版画 HANGA JUNGLE 公式カタログ

 

【横尾忠則 HANGA JUNGLE 展】
会期:2017年4月22日(土)~6月18日(日)
会場:町田市立国際版画美術館
休館日:月曜日
時間:平日 10:00~17:00 (入場は16:30まで)
土・日・祝日 10:00~17:30 (入場は17:00まで)
Webサイト

 

次の巡回先は神戸にある横尾忠則現代美術館です。
2017年9月9日(土)~12月24日(日)




 

「ロシアの装丁と装画の世界」図録

「ロシアの装丁と装画の世界」図録



 

先日行ってきた「ロシアの装丁と装画の世界」展の図録です。展示会場の「えほんやるすばんばんするかいしゃ」で購入しました。

 

「ロシアの装丁と装画の世界」展の記事

 

「今後、こんな沢山の旧ソ連時代のロシアの本を譲り受ける事はないと思うので、今回の展示に合わせ何らかの形として残しておきたかった。」

 

と、本展示会の主催者であり、本書の発行人である「えほんやるすばんばんするかいしゃ」の店主様からお話を聞きました。

 

その時、(ナイス偉業!)と僕は心の中で叫びました。

 

この図録はアートブックとして楽しめ、デザイン参考書としても有用であり、旧ソ連時代ロシアの書物の装丁画図版がこれだけまとまった数でなかなか見る事ができない、それだけ貴重な資料でもあるのです。

 

 

これだけでもかなりの点数の図版が掲載されていますが、僕は欲を出して「シリーズ化したら次も買いますよ!」と言ったら、「本は相当な数があるので、当初、表紙と見返しを別々に集約する案もありましたが、それぞれが単調な内容になる可能性があるため、今回1冊にまとめました」とおっしゃってました。

 

この図録を見終わった今さっき、(ナイスUX!)(ナイス組版!)と僕は心の中で叫びました。

 

 

表紙画と見返し画はページ毎にランダムに掲載されており、その変化のお陰で飽きないどころか、ページをめくる度にワクワク感もあります。

 

表紙の図版にはドロップシャドウが掛けられていて作品が際立っています。

 

スズキコージさんっぽい雰囲気と力強さを感じる見返し。

 

SF系の本?ストレンジサイケポップっぽいアートワーク。

 

一瞬、真鍋博さんのイラストかと思った。

 

撮影と掲載のお許しをいただいたので、気づいたら30枚くらい撮っていました。載せたい図版が沢山あるのですが、キリがないのでここまで。あとは買ってからのお楽しみです。



本文中に文字は奥付手前のあとがきのみで、オールカラーの図版のみ。各図版には、その本のタイトルやクレジットといった情報は一切ありません。

 

「ロシアの装丁と装画の世界」展の記事でも個人的な意見として書きましたが、この展示の魅力は、中身の内容(情報)ではなく、自分が気になった魅力的な表紙や見返しから感じとる個人の「自由な想像」にあると思います。したがって、この図録もそういった情報が不要だと思うのです。

 

以下「えほんやるすばんばんするかいしゃ」より引用:

■タイトル: ロシアの装丁と装画の世界
■発行年: 2017年 5月20日発行
■発行 / 編集: えほんやるすばんばんするかいしゃ
■サイズ: 14.8cm×21.0cm
■ページ数: 128ページ
■無線綴じ(ソフトカバー)/カバー付き
■カバー / 本文: オフセット印刷
■掲載内容

展覧会「ロシアの装丁と装画の世界」の
図録として製作した冊子です。
表紙と見返しの図版のみで構成されています。
本のタイトル、著者名、画家名、発行年などの
文字情報の記載は一切ありませんのでご注意ください。

■図版掲載数:278点

< 内訳 >
・表紙(裏表紙、背表紙含む):200点
・見返し:78点

 

展示場で販売してますが「えほんやるすばんばんするかいしゃ」のECからでも購入できます。
http://rusuban.ocnk.net/product/8764

※発行部数は現時点で不明。

 

発行人の「えほんやるすばんばんするかいしゃ」店主様の試行錯誤と葛藤のお陰で図録も展示も素晴らしい体験ができました。




 

「ロシアの装丁と装画の世界」展

「ロシアの装丁と装画の世界」展



 

ここへ来るのはきくちちきさんの「ねこのそら原画展」以来約2年ぶり。

 

ロシアの素敵な装丁・装画の本達が集まった「ロシアの装丁と装画の世界」展を観に、高円寺にある絵本の古本屋さん「えほんやるすばんばんするかいしゃ」へ行ってきました。

 

えほんやるすばんばんするかいしゃ

 

一階の展示スペースに足を踏み入れた瞬間、ズラーっと目に押し寄せて来るロシア語の書物群。

 

 

50年代〜80年代までの旧ソ連時代の書物群。

 

(全く関係ないですけど、旧ソ連時代といえばブルガーコフの「犬の心臓」が好きです)

 

本の厚さもサイズもバラっバラ。そして「読んでくれ」と言わんばかりにワクワクする様々なデザインの表紙がズラリ。

 

ロシアの本

 

その統一感の無さと、圧倒的な未知の情報量が「まず何を」「どうすればいいのか」が解らなくなる程の興奮を覚えました。

 

これらは一体何の書物なのか?どの本も手に取って中身を確認したくなる衝動に駆られる。

 

いっけん、絵本?児童書?小説?アートブック?と思いきや、実はガイドブックみたいなのもありました。

 

 

中には、幻想的なイラストが描かれている本もありますが、ロシア語の文章で埋め尽くされている本もあります。

 

ロシア語を全く知らない僕には、パラパラ読んでも理解できない内容。

 

でも、この展示の魅力は、中身の内容(情報)ではなく、自分が気になった表紙から感じとる個人の「自由な想像」にあると思います。




英語ならともかく、ロシア語で書かれた予想できないタイトルだけど、素敵なフォントスタイル。

 

アート系のジン?かと思いきや中身はガイドブック?(笑)みたいな期待を裏切られる楽しみ。

 

あれは結局、何の本だったんだろうと解らないまま帰る楽しみ。

 

入り口から正面の棚は「見返しが素敵な本」という素敵なコーナー。

 

見返しが素敵な本

 

表紙よりもグッと惹かれる絵やパターンデザイン、テクスチャの見返しもありました。

 

今はWeb制作の仕事をしているけど、以前は印刷・製本の仕事をやっていた事があるので、”くるみ方”まで気になってしまいました。

 

そして装画コーナーの方がまた気になりだし、戻るの繰り返し。

 

因みに、展示物の本は自由に手に取る事ができ、気に入った本は購入もできちゃいます!

 

全ての本を確認したわけではありませんが、お値段は数百円から数千円程度(一部抽選販売)。

 

店主様の話によると、今日の展示物はごく一部らしく、出番を待っている本達がまだまだあるそうです。なので、訪れるたびに別の本が並んでいる可能性がありますね。

 

さらに嬉しい事に本展示会の図録も販売されていました。
これから見るのが楽しみです。
※この図録に関してはまた別の機会に書こうと思います。

 

「ロシアの装丁と装画の世界」図録

 

撮影も自由で、気楽に楽しめる展示ではありますが、主催された店主様から色々なお話を聞いた時、この展示会に対しての熱い思いと尽力を感じました。

 

とても面白いコンセプトで貴重な展示会。

 

グラフィック系のDTPデザイナーさんは特に楽しめるはず。

 

会期中に行けたらもう一度行きたい。

 

買いそびれた本があるので。

 

あのよく解んないガイドブックみたいなヤツ。

 

「ロシアの装丁と装画の世界」
http://blog.goo.ne.jp/nabusuraynohe

  • 会場:えほんやるすばんばんするかいしゃ(東京都杉並区高円寺南3-44-18 1階)
  • 会期:2017年5月20(土)〜2017年6月11(日)
  • 営業時間:14時~20時
  • 定休日:水曜

 

【追記 2017年6月18日】

「ロシアの装丁と装画の世界」が巡回することになったそうです!
http://blog.goo.ne.jp/nabusuraynohe/e/8d60b3f7ca5014cfc94bb165831d5463

 

「ロシアの装丁と装画の世界」巡回展
会期:2017年 6月30日(金) ~ 7月19日(水)
時間:11:00~19:00
定休:木曜
場所:紙片
広島県尾道市土堂2-4-9  あなごのねどこの庭の奥
http://trokkisk.wixsite.com/teraokakeisuke/blank

 




 

「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展

「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展

1月の兵庫県立美術館から始まり、名古屋、そしてついに東京へ!
この日をどんなに待ちわびたことか。

 

ヘンリー・ダーガー以来のアウトサイダーアート界の巨匠の展覧会へ、初日である2017年4月29日に東京ステーションギャラリーへ行って参りました。

 

東京ステーションギャラリーへは、2015年の「『月映(つくはえ)』田中恭吉・藤森静雄・恩地孝四郎」ぶり。

 

開館は午前10時から。
11時から12時半くらいまで館内に居ましたが、意外と混んでなく、ゆっくりじっくりと楽しめました。




 

アドルフ・ヴェルフリ-Adolf Wölfli(1864-1930)は、スイス出身のアウトサイダーアート・アールブリュットのアーティスト。
アウトサイダーアートだけに、やはりヴェルフリも精神を患いながら、新奇で独特な素晴らしい世界を多く生み出しています。

 

ヴェルフリの作風は、一見トライバルで宗教画的な模様に見え、同じアウトサイダーアートのオーギュスタン・ルサージュのような緻密な仕事をこなしています。

 

予想外な色彩。曖昧な遠近法。規則正しいけど自由な描画。

 

不遇な人生を送ってきたアウトサイダーアートの芸術家だからこそ作り上げられる悲しみや辛さ、そして希望で構築されたパラレルワールド。

 

普段、Webデザインもやる僕ですが、あの設計思想と色彩感覚とレイヤーは、とても自分には表現できる自信がありません。

 

「残業だー」「給料少ねー」「デザイン浮かばねー」「設計が決まらねー」等と日頃ぼやいている自分が愚者だったんだと『グシャっ』とヴェルフリの世界に潰された感覚を味わいました。

 

今回、ヴェルフリの作品を初めてまじまじと見ていて新たに気づいた事が2点ありました。

 

ぎっしりと詰め込まれた描画の中に、「ぐでたま」の様な可愛いキャラクターや、「逆柱いみり」の作品に登場する憎めない軟体獣のような生き物がたまに潜んでいる事(それらはカタツムリや小鳥だと後に判明)。

 

そいつらがとにかく可愛い。ヴェルフリの生涯をある程度知っての上で閲覧に臨んでいたので、勝手に感じていた緊張感がちょっと解けて顔がほころびました。

 

もう1点は、今回一緒に同行したデザイナーがとても興味深い事に気付く。
作品の中には、たまに時計が描かれているのですが、どの作品の時計も針が「1時半過ぎ」を指しているのです。

 

これは何の意味があるのか?無意味なのか?ヴェルフリにとって、この「1時半過ぎ」とはどんな時だったのでしょうか?

 

最後に図録とポストカードを一枚購入。

 

アドルフ・ヴェルフリ図録ポストカード

 

アートやグラフィックデザインが好きな方は絶対に行っておいた方がいいです。
滅多に拝めるものではありませんので。

 

あと、自分の今の環境に不満があるクリエイターにもおすすめ。

 

『アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国』
東京ステーションギャラリー
会期:2017年4月29日(土)―6月18日(日)
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201704_adolfwolfli.html